2012 Fiscal Year Research-status Report
神経損傷後の視床神経回路改編と視床細胞活動の関係性―ウイルスベクターによる解析―
Project/Area Number |
24790580
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
南雲 康行 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00459661)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 体性感覚視床 / 神経損傷 / GABA / 内側毛帯線維 / 神経回路再改編 |
Research Abstract |
本研究の最終目標は、ウイルスベクターを用いた視床VPM細胞の自発活動制御が、眼窩下神経切断による求心性線維の再改編にどのような役割を果たすか検討することである。平成24年度では、神経切断後1日目からのVPM細胞におけるGABAシナプス電流の変化を経時的に観察した。 GABAシナプス電流は、in vitroホールセルパッチクランプにより、シナプス部電流(phasic電流)とシナプス外部電流(tonic電流)に分けられる。視床網様核の電気刺激によるphasic電流は、眼窩下神経切断後1-3日目のVPM細胞において、電流振幅の減弱が認められ、この現象は術後7日目まで持続していた。しかしながら、tonic電流では術後1-3日目より電流振幅の増強が認められ、この変化は術後7-9日目まで持続し、その増強は求心性内側毛体線維(グルタミン酸性)の再導入(回路再改編)を受けるVPM細胞でのみ増強していた。さらに、この細胞における抑制性と興奮性の電荷比(inhibitory/excitatory ratio)計算は、神経切断後の内側毛帯線維再改編を受けたVPM細胞で著明に増加していた。 以上のことより、眼窩神経切断下のVPM核では、興奮性の求心性内側毛帯線維の再改編に先立って、切断後早期から抑制性GABAシナプス部の電流量が減少し、同時期にシナプス外部では増加することが明らかになった。さらに、電荷比計算から、神経切断下のVPM細胞は非切断下よりも強い抑制性入力を受けている可能性が示唆される。予備試験段階ではあるが、in vivo unit recording により視床VPM核での神経細胞活動が、バースト発火状態にある可能性が観察されている。これは、先の電荷比計算の結果を支持するものであり、実際の四肢切断患者の視床核においても類似した神経発火活動が認められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時当初は、視床神経細胞の活動性をin vivo unit recordingで全てを明らかにすることとしていたが、in vivo unit recording の前段階としてin vitroスライスパッチでのGABAシナプス電流記録や電荷比計算などの解析を進展させたことにより、神経切断下での細胞活動性が減弱している可能性を推定出来るようになってきた。このデータは、最終的にin vivo unit recordingの結果を支持するデータとして取り扱うことが可能であると考えられ、データの完成度にも貢献してくれるものと考えている。また、スライスパッチのデータを進展させた結果として、tonic電流を制御するGABA-A受容体にも着目させることが出来たため、次年度以降のウイルスベクターを用いた神経細胞活動制御の予定研究で一つのターゲット分子にすることも可能である。 In vivo unit recordingに関しては初年度で一様のデータを取りまとめる予定であったが、一部次年度(25年度)に持ち越しとなる。しかしながら、その研究計画の進行度を調節する形で、申請者は、24年度内にウイルスベクターの視床領域への導入手技と実際の神経細胞感染をほぼ確立させたため、今後円滑に予定する研究を遂行出来るものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に申請時の研究計画を踏襲していく予定であるが、上述したように初年度で進展させたスライスパッチの研究結果から、tonic電流を調節するGABA-A受容体が、本研究上で新たなターゲット分子になりうる可能性を見い出せた。そのため、ウイルスベクターを用いる研究計画において、当初の予定に追加として、感染細胞でCreリコンビナーゼを発現させるレンチウイルスベクターを作製することを計画している。このウイルスベクターは、米国ジャクソン研究所から購入するGABAシナプス外部に特異的に発現するGABA-A受容体のサブユニット(alpha4)の遺伝子上にlox-P配列を組込んだトランスジェニックマウス(B6.129-Gabra4tm1.2Geh/J)へ処置することで、正常な生後発達過程を経た動物で視床特異的かつ目的に応じた時期特異的な遺伝子ノックダウンを可能とする。この動物を使用することで、眼窩下神経切断におけるGABAシナプス電流変化による細胞活動変化と求心性線維再改編の一連の関連性を研究していくことが可能となるため、これを25年度以降の研究計画に追加していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に試薬などの消耗品の購入に予算を充てる。また、米国ジャクソン研究所よりトランスジェニックマウスの購入を計画している為、予定している実験動物費用の一部をその購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)