2012 Fiscal Year Research-status Report
掻破による快感が過剰掻破を引き起こす脳内メカニズム
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24790584
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
望月 秀紀 生理学研究所, 統合生理研究系, 特任助教 (40392443)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | itch / scratch / pleasure / fMRI |
Research Abstract |
痒いところを掻きむしると快感が生じる。この快感によってもっと掻きむしりたくなってしまう。このような快感に伴う過剰掻破は皮膚にダメージを与えてしまうため、特に、難治性の痒みで苦しむ患者にとっては深刻な問題となる。しかしながら、掻破による快感と過剰掻破の関係について調べた脳研究はこれまでにないため、そのメカニズムはほとんどわかっていない。そこで、本研究では脳機能イメージング技術を用いて、そのメカニズムについて調べた。本年度は、機能的MRI(fMRI)を用いて、掻破による快感が生じているときにどの脳部位が活動するのかを調べた。痒み刺激を与えた手首の近辺を掻破する条件(快感条件)と、痒み刺激を与えた場所から離れたところを掻破する条件(対照条件)において、脳活動をfMRIを用いて計測した。快感条件では被験者は掻破による快感が生じたと報告し、対照条件ではそのような快感はほとんど生じなかったと報告した。掻破中に活動した脳部位を快感条件と対照条件で比較した。その結果、快感特異的に活動した脳部位として、報酬系関連の脳部位(線条体と中脳)、第一次体性感覚野、島皮質、運動関連領野(補足運動野、運動前野や小脳)、前頭回などで認められた。この結果から、報酬系関連の脳部位、第一次体性感覚野や島皮質が掻破による快感と関係すると示唆された。報酬系は運動関連領野と解剖学・機能的に連絡を持つ。よって、運動関連領野の活動増加は報酬系の活性化に関係すると推察された。報酬系と運動関連領野が形成するネットワークの活性化が潜在的に快感に伴う過剰掻破の原因となる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、掻破による快感が過剰掻破を引き起こす脳内メカニズムを明らかにすることである。特に、本年度の目的は、それに関連する脳部位を全脳の中から絞り込むことであった。研究実績の概要にも記載したように、fMRI実験によってその候補となる脳部位を絞り込むことができた。よって、おおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
掻破による快感によって報酬系や運動関連領野が活性化することを明らかにしたので、そのメカニズムをより詳しく調べる。例えば、報酬系と運動関連領野がどういったネットワークを形成するのか、についてfMRIや脳磁図などの脳機能イメージング法を用いて検討する。また、掻破の脳活動への影響についてもイメージング技術を用いてより詳しく検討するなど多角的に掻破と快感の関係を調べる。一方、快感に伴う過剰掻破を実験的に再現する心理実験ではまだ成果が出ていないので引き続き実験を行う。快感によって過剰掻破が出やすい条件、あるいは、出やすい人を探し出して効果的に実験を進めることで心理実験で成果を出す。さらにそれを脳機能イメージング実験にも応用して、掻破による快感やその快感に伴う過剰掻破の脳内メカニズムをより深く理解する。そして、経頭蓋直流電気刺激などを用いて脳局所の神経活動を操作したときに掻破による快感や、掻破行動にどのような変化が起きるのか、そのときに脳内でどのような変化が起こっているのかを脳機能イメージング法を用いて調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究所の工事の影響で脳磁図実験を思うように進めることができなかったことや、心理実験が進んでいないことがあって当該研究費が生じた。しかしながら、工事が終了したため脳磁図実験が行える状況にある。また、心理実験では問題を克服するために、新しい手法を取り入れた実験をしたり、被験者数を増やしたりする予定である。これと並行して、次年度に予定しているfMRI、脳磁図や経頭蓋直流電気刺激を用いた実験も行う。次年度使用額と次年度請求額を使って以上の実験を実施することで研究目的を達成する。
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