2012 Fiscal Year Research-status Report
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24790586
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山崎 雅之 島根大学, 医学部, 助教 (60379683)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝 / 肥満 / 高炭水化物食 / 抗酸化物質 / 酸化ストレス関連遺伝子 / 肥満関連遺伝子 / 動物実験 / ヒト介入試験、ヒト断面調査 |
Research Abstract |
我々の研究で、炭水化物を多く摂取する日本人や韓国人では、軽度な肥満にもかかわらず高中性脂肪血症が多く、これは肝臓での脂肪新生(de novo lipogenesis)が原因で、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)発症にも関与していると考えられた(Lancet, 2004, Eur J Clin Invest, 2004)。この脂質新生の促進には、肝臓での酸化ストレスが大きな要因であると予想された(Eur J Nutr, 2011)。 非アルコール性脂肪肝を発症していない通常マウスに高炭水化物食、高脂肪食、普通食を単回投与し、食事摂取直後(0、2、6、12時間後)の遺伝子発現挙動の解析行うため、肝臓、脂肪組織等の各臓器を採取した。現在、食事摂取後の遺伝子発現の挙動を明らかにするするため、脂質合成・代謝遺伝子の発現を制御していると思われる調節遺伝子(SRBP1c、LXR、PGC1、PPARα,γ)、酸化ストレス関連遺伝子を中心に解析を行っている。また、食事誘導の非アルコール性脂肪肝モデルマウスとして、高炭水化 物食(主にコーンスターチ)、高脂肪食(低炭水化物食、バターを含む)、普通食を等カロリー投与マウスに与える。体重をモニターし、肥満ともに発症する非アルコール性脂肪肝を確認した。 ヒト介入研究、断面研究では、当教室でこれまでに行ったヒト教育介入研究(約500人)、島根大学疾病予知予防研究拠点で行っているヒト断面・コホート研究(5000人)を利用し、食事調査、血中パラメーター解析を行った。これらの血液サンプルからDNAを抽出し、これまで肥満関連遺伝子とした候補に挙がっている遺伝子の多型を解析した。この研究から、中枢神経で発現が認められており、これまで日本人では報告されていなかったCannabinoid Receptor 1 多型が肥満発症リスクと関係していることを公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、24年度は動物実験を中心に行い、①食事摂取直後の遺伝子発現挙動の解析②高炭水化物誘導の非アルコール性脂肪肝モデルマウスの飼育、③非アルコール性脂肪肝と酸化ストレスの関係の分子挙動解析、25年度に④非アルコール性脂肪肝と酸化ストレスの関係の分子挙動解析(前年度に引き続き)⑤ヒト介入研究、断面研究ヒト試験サンプルを用いた解析を行う予定であったが、ヒト試験でのサンプル解析を同時進行で行ったため、非アルコール性脂肪肝モデルマウスの飼育と解析が予定より遅れている。しかしながら、この遅れは25年度に、充分回復可能である。 また、①食事摂取直後の遺伝子発現挙動の解析、③非アルコール性脂肪肝と酸化ストレスの関係の分子挙動解析は予定どおりの達成度である。主に25年度に予定していた⑤ヒト試験サンプルを用いた解析では、当初計画以上に進んでおり、論文発表(J Atheroscler Thromb. 2012;19:779-85.Genet Test Mol Biomarkers. 2013; 17:16-20. Shimane J. Med. Sci.2012; 29:1-12)、学会発表(日本衛生学会 若手優秀演題賞)を行った。 また、本研究課題からの発展的課題として、酸化ストレス抑制と非アルコール性脂肪肝予防のための関係の分子挙動解析があるが、これに関連する抗酸化物質(フラボノイド)等の食品由来成分による肝臓での酸化ストレスの抑制と脂質代謝に及ぼす影響の解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、高炭水化物誘導の非アルコール性脂肪肝モデルマウスの飼育を島根大学総合科学研究支援センター実験動物分野で行い、高炭水化 物食(主にコーンスターチ)、高脂肪食(低炭水化物食、バターを含む)、普通食を等カロリー投与マウスに与え、体重をモニターし、肥満ともに発症する非アルコール性脂肪肝確認する。麻酔下で採血し、血漿中のブドウ糖、インスリン、中性脂肪、リン脂質、総コレステロール、HDL-コレステロール、遊離脂肪酸などの生化学的指標の測定を行い、糖・脂質代謝異常への影響を解析する。脂肪肝のマーカーであるAST、ALT、γ-GTPを測定すると同時に酸化ストレスマーカーを測定する。また、これらの臓器を用いた非アルコール性脂肪肝と酸化ストレスの関係の分子挙動解析として、脂質合成・代謝関連遺伝子、酸化ストレス関連遺伝子の発現解析をReal time PCR法により行う。SCD-1、FASをはじめとする脂質合成・代謝遺伝子、その上流に位置する調節遺伝子(SRBP1、 PPARα,γ等)の発現解析をする。長期、短期投与での遺伝子発現プロファイルの比較によって、食事内容によって慢性的に誘導されている遺伝子を明らかにする。さらにNADPHオキシダーゼ等ミトコンドリアでの代謝に関係する遺伝子を中心に酸化ストレス関連遺伝子を解析する。体重変化、血液生化学検査、臓器中の脂質成分含量、臓器の形態学的解析から得られた結果と脂質合成・代謝関連遺伝子と酸化ストレス関連遺伝子の発現プロファイル解析から得られた結果を合わせて検討し、非アルコール性脂肪肝と酸化ストレスの関係を分子メカニズムで明らかにする。 ヒト介入研究、断面研究サンプルを用いた解析では、前年度に引き続き、肥満関連遺伝子候補の多型を解析し、食事等の生活習慣、肥満関連疾患の発症頻度等との関係を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、平成24年度は動物実験(食事摂取直後の遺伝子発現挙動の解析、高炭水化物誘導の非アルコール性脂肪肝モデルマウスの飼育、非アルコール性脂肪肝と酸化ストレスの関係の分子挙動解析)を中心に行う予定であったが、先にヒト介入研究、断面研究サンプルを用いた解析を優先的に行ったため、動物実験での遺伝子発現解析や食事誘導の非アルコール性脂肪肝モデルマウスの飼育に遅れが生じた。これによって、当初予定していた動物実験用の遺伝子発現解析試薬等の購入を遅らせたため、繰越研究費が発生した。この実験に関しては、25年度に行う予定である。また、平成25年度は、非アルコール性脂肪肝と酸化ストレスの関係の分子挙動解析とヒト介入研究、断面研究サンプルを用いた解析を予定どおり行う。
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Research Products
(15 results)