2012 Fiscal Year Research-status Report
南相馬市における小中学校区の放射能測定に避難者動向を重ねた地理情報システム解析
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24790613
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
菖蒲川 由郷 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30621198)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
南相馬市を始め放射能汚染のある地域において車載線量率測定装置を用いて通学路を主とした道路上の線量率を測定し、これをGIS(Geographic Information System: 地理情報システム)により地図化した。 新潟大学アイソトープ総合センターで開発した車載線量率測定記録装置(BISHAMON: BIo-Safety Hybrid Automatic MOnitor-Niigata)を用いて、南相馬市教育委員会の協力により市内全主要道路の空間線量率を測定し記録した。車載線量測定装置によって得られた線量率データに基づき、GISを用いた地図化(視覚化)を行った。路上の測定データを地図上に線量率の高低により色分けすることで、高い(低い)線量率の道路を視覚的にすぐにわかるように工夫した。この地図は南相馬市のホームページに掲載され、住民への情報として活用されている。さらに、Web-mapの開発により、より柔軟で自由度の高い線量率地図の公開が可能となった。Web-mapも南相馬市ホームページで公開されており、多方面での利用が期待されている。 一方で、高齢者ではインターネットの利用そのものになじみがない場合が多く、印刷版地図の需要が指摘された。このため、平成24年夏期に測定した分について「南相馬市空間線量率地図(印刷版)」として刊行し教育委員会を通じ、市内の全ての小中学生・その父兄に配布した。 今後も、市内全域の主要道路の空間線量率測定は半年毎を目処に継続的に行う予定であり、電子版地図・印刷版地図ともに更新の予定である。 さらに、学童が活動する小学校の校庭等の放射能測定についても、市内の全小中学校について敷地内を測定し、線量率地図を南相馬市ホームページで公開している。学童の屋外活動に対して不安の声が多く、線量率情報の公開は正確な情報源として市民の安心材料となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南相馬市教育委員会との連携の下に、通学路の線量率と小中学校の校庭等の放射能測定は着々と進んでいる。空間線量率は自然減衰と除染を含めた放射性物質の移動により経時的に変化する。このため、測定は経時的に行う必要がある。南相馬市の協力に基づき、通学路の線量率は約6ヶ月毎の計測を今後も継続していく計画としている。今回は、平成24年7-9月に全域を測定し、約半年後にあたる平成25年2-3月に再度計測を行った。この点で、測定作業は順調に進んでいるといえる。測定データに基づく地図化の作業も、平成24年7-9月測定分のデータについてはすでに地図を作成しホームページに公開され、印刷版の地図も刊行した。平成25年2-3月測定データについては、現在、地図作成作業を行っており、今後、順次公開していく。 小中学校の校庭等の放射能測定については、必要時に測定し、地図作成するという方法をとっており、現在までで全ての小中学校と保育園・幼稚園の校庭や園庭を測定した。測定データに基づいて地図を作成し南相馬市のホームページに公開中である。 このように、これまでのところ空間線量率の測定は順調であり、地図化して公開するステップは進行中である。さらに次のステップとして、地域毎の放射能レベルと性年齢別の人口を勘案した健康リスクについて、今後、検討していく必要がある。これについては、震災・原発事故発生後の南相馬市の人口構成は以前と大きく異なり、南相馬市からの情報提供が必要である。研究最終年度である平成25年度に、人口を勘案した放射能による健康リスクについて検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も線量計とGPSを連動させた測定システムによる通学路の空間線量率の測定と地図作成・公開を継続する。すでに測定システムは完成しており、これを利用して、6ヶ月を目処に継続的に測定する。測定データに基づき線量率地図を作成し南相馬市民にホームページを通して公開する。また、インターネット環境があれば、誰でもアクセスでき、拡大や縮小が自由にできるWeb-mapも更新する。さらに、インターネット環境がない市民に対する情報提供の手段として、印刷版の空間線量率地図を作成して市民に配布する。これらの地図では、線量率の高低を色の違いで表示し、目で見てすぐに線量率の高低が分かる工夫をする。 測定は経時的に行うため、これまでに蓄積された線量率データも含めて、経時的変化を評価する。評価には放射性物質の減衰を加味し、純粋に放射性物質(セシウムなど)が流入したか流出したかを計算により求め、地図化する。さらに、どの場所で流入しやすい(しにくい)かを検討し、今後の除染計画やモニターに役立てる。 一方で、作成した線量率地図に、現在、南相馬市に在住している市民の性年齢別人口を小地域毎に重ね、健康リスクを勘案できる地図を作成する。地図は南相馬市の健康リスクマネジメントに利用してもらうよう情報提供する。 研究は新潟大学総合アイソトープセンターと南相馬市との協力の下で行う。 研究・解析の成果は自治体への情報還元のみならず、学会発表や論文発表により行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
測定データを地図化して線量率地図を作成するが、インターネット環境がない市民のために印刷版地図を作成する。印刷版地図は約30ページのカラー冊子であり、この印刷・製本費用が必要である。次に、南相馬市民の性年齢別人口を小地域で地図化する際に、小地域の地図データが必要であり、購入予定である。さらに、測定を継続し、データを蓄積してきた結果、150万ポイント程度の線量率・位置情報データとなり、非常に膨大である。これらを収納するデータストレージと膨大なデータを解析するためのワークステーションが必要である。 研究成果を発表するために国内・国外の学会に出席するための渡航費用が必要である。6月にはフィンランドでISSC(International Society of Social Capital)会議に出席し、10月には公衆衛生学会に出席する予定である。また、研究成果を国際誌に投稿する予定であり、投稿料が必要となる。
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Research Products
(10 results)