2012 Fiscal Year Research-status Report
若年者の自傷行為に対する援助態度の構造と関連要因の検討
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24790632
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
勝又 陽太郎 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺予防総合対策センター, 研究員 (30624936)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 学校精神保健 / 臨床心理学 / 自傷・自殺予防 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自傷行為を行っている者への援助に対して若年者がどのように考えているのか、すなわち「若年者の自傷行為に対する援助態度」の構造を明らかにするとともに、この「自傷行為に対する援助態度」に関連する要因を明らかにすることである。 平成24年度研究では、まず、「自傷行為に対する援助態度」の構造に関する定性的データを収集する目的で、31名の大学生の協力を得て、質問紙調査を実施した。この質問紙調査では、「自傷行為に対する援助態度」を「援助の必要性の認識」、「援助動機」、「自らの援助可能性(声かけをするかどうか、援助行動を生起させる自信)」の3つの領域に便宜的に分類し、それぞれの領域における態度について自由記述形式で回答してもらった。調査で得られたデータをもとに、若年者の自傷行為に対する援助態度尺度を作成するための定性的分析を行った。 また、平成24年度研究では、若年者が友人の自傷行為に遭遇した際の援助行動(ピア・サポート)の実態および主観的感情体験との関連性を検討することを目的として、首都圏の公立高校の生徒280名の協力を得て、質問紙調査を実施した。その結果、自傷をめぐる高校生のピア・サポートの現状は、「気づく・かかわる・つなぐ」という援助スキルが一連の流れ(繋がり)をもって行われていない可能性が示唆され、その背景には自傷という現象の理解不足に基づく不安感情や援助行動に関する知識不足が影響している可能性が明らかとなった。また、自傷の現象理解には性差があり、特に男子で否定的感情反応が顕著であることも示唆された。これらの結果は、欧米で開発された既存の自傷予防プログラムを日本に導入する際の適用範囲および改善点の検討に寄与する知見であり、若年者の自傷・自殺予防対策の発展に貢献するものであると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、すでに別の調査で収集済みであったデータを本研究の予備調査として利用し、自傷行為に対する援助態度尺度の作成を行う予定であったが、データ収集を行った大学の倫理審査委員会において本研究へのデータの二次利用が認められなかったため、改めて新規のデータ収集を行った。そのため、平成24年度研究として計画していた自傷行為に対する援助態度尺度の作成作業が遅れてしまった。しかしながら、当初平成25年度研究で実施する予定であった自傷に対する援助態度と関連する要因の検討については、平成24年度中に前倒しで文献レビューを進め、高校生を対象とした質問紙調査によって自傷に対する援助行動と主観的感情体験との関連性について探索的検討を行うことができた。したがって、2年間の研究計画全体を通して考えた場合、現在までのところおおむね順調に研究が進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
自傷行為に対する援助態度尺度の作成に関しては、信頼性・妥当性を確認するために十分なサンプルサイズを確保する必要があることから、これまでの研究フィールドに加え、調査地点を増やすべくいくつかの大学の研究者に調査協力を依頼する予定である。また、尺度の適用範囲を大学生だけでなく、より若年の世代にまで広げることを目標とし、中高生からも可能な限り情報収集を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の後半に所属先が変更となることが決まり、研究環境の整備等で十分な研究時間が確保できなかったため、次年度に使用する研究費が生じた。この研究費は、翌年度の研究費と合わせ、新しい研究フィールド開拓のための情報収集や学会発表などの研究成果の公表に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)