2012 Fiscal Year Research-status Report
リアルタイムPCRを用いたDNA脱メチル化部位を指標とする精液鑑定法の確立
Project/Area Number |
24790650
|
Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
渡邊 賢 科学警察研究所, 法科学第一部, 研究員 (20532047)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 物体検査 / 人体液斑の同定 / DNAメチル化 |
Research Abstract |
精液特異的脱メチル化領域として報告されていた、DACT1遺伝子の近傍領域に存在するCpGアイランドについて、各種体液試料を用いてその体液特異性を再検証した。 精液、血液、唾液、膣液由来のゲノムDNA各100ng(各5検体の混合試料)を用いて、バイサルファイトシークエンス法により各CpGサイトのメチル化様態について解析を行ったところ、精液DNAにおいて全体の約5%のCpGサイトがメチル化されていた一方で、その他の体液由来DNAでは、いずれも95%以上のCpGサイトがメチル化されており、報告通り精液特異的な脱メチル化が観察された。さらに、現場試料で想定される陳旧化した試料については、DNAメチル化を指標とした精液証明が同様に可能か、これまでの知見ではほとんど検証されていなかったことから、作製後約2年経過した精液斑及び約1.5年経過した血痕からそれぞれDNAを抽出し、各DNAについて、バイサルファイトシークエンスによりDACT1近傍領域のCpGアイランドの解析を行った。その結果、精液斑由来DNAでは多くのCpGサイトにおいて脱メチル化が観察された一方で、血痕由来DNAではほぼすべてのCpGサイトにおけるメチル化が観察され、新鮮な液体試料を用いた際の結果と同様の結果となった。これらの結果から、法科学分野で通常解析対象となる陳旧化した試料においても、メチル化を指標とした精液証明が可能であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、DACT1近傍領域についてバイサルファイトシークエンスによる各体液間でのメチル化状態の比較を行い、リアルタイムPCRに用いるプライマー及びプローブ設計のための基礎的データを得ることができた。しかしながら、もうひとつの精液特異的脱メチル化領域として報告されているUSP49遺伝子近傍については、解析が完了しておらず、次年度に引き続いて行っていく予定である。また、リアルタイムPCRによる検出系の確立にはまだ至っていないものの、次年度に検証予定であった陳旧化試料からの検出可能性についての検討を繰り上げて行うことができた。以上のように概ね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に行ったバイサルファイトシークエンスの結果をもとに、精液特異的脱メチル化領域であるDACT1遺伝子近傍領域中のCpGサイトを指標としたリアルタイムPCRによる検出系の確立を行う。さらに、USP49遺伝子近傍領域についても、バイサルファイトシークエンスによる精液特異性の再検証を進め、その後リアルタイムPCRによる検出系の確立を目指す。 また、陳旧化試料からの検出についても、斑痕形成からより時間の経過した試料を用い、他の検査法との比較とともに本検査法の有効性について検証を行う。さらに、実際の捜査試料では、斑痕の存在部位の検出のため、紫外線などの光源の照射や、さまざまな試薬が噴霧されている可能性もあることから、これらの予備検査に対するDNAメチル化状態の安定度についても検証を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に予定していたUSP遺伝子近傍領域のバイサルファイトシークエンスを行うため、24年度分の残りの研究費を25年度分に組み込み、次年度の研究計画を遂行していく予定である。また、実験以外にも、論文投稿のための英文校閲料や学会発表のための出張費等の諸費用も25年度の研究費から使用する予定となっている。
|