2012 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎に対する新規治療薬の探索研究-大建中湯の作用機序解明
Project/Area Number |
24790657
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
林 周作 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (10548217)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 腸管粘膜免疫 / マクロファージ |
Research Abstract |
潰瘍性大腸炎 (UC) は難治性疾患であり、その病態解明ならびに新規で有用な治療薬の創出が求められている。これまでに報告者は、漢方薬である大建中湯が、マウスにおけるデキストラン硫酸ナトリウム (DSS) 誘起大腸炎を改善することを見出している。そこで本研究は、DSS誘起大腸炎モデルマウスを用い、大建中湯によるUC病態改善機序について腸管粘膜免疫系、特に腸管マクロファージに対する作用を中心に研究を行った。 大建中湯はDSS誘起大腸炎モデルマウスの大腸において上昇したTNF-α、IL-6およびIFN-γのmRNA発現を有意に抑制した。IFN-γは炎症性マクロファージの活性化に関与、TNF-αおよびIL-6は炎症性マクロファージが高産生するサイトカインであり、大建中湯は炎症性マクロファージの活性化の阻害を介し大腸炎を改善する可能性が考えられる。また、大腸粘膜におけるマクロファージの発現分布について免疫組織学的検討を行ったところ、大腸炎マウスのF4/80 (マクロファージのマーカー) 陽性細胞は、正常マウスと比較し著明に増大しており、大建中湯の投与により減少していた。さらに大腸粘膜固有層におけるマクロファージの割合について解析を行い、大建中湯は、大腸炎マウスにおいて増大した腸管マクロファージの割合を有意に減少すさせることを見出した。以上のことから、大建中湯によるUC病態改善効果にはマクロファージの抑制が関与することが示唆される。 UCの病態形成における腸管マクロファージの役割およびそれに対する大建中湯の影響について詳細な検討を行うため、腸管粘膜固有層よりF/80陽性細胞を選択分取し、サイトカイン産生、貪食能などの腸管マクロファージの機能を評価する実験系の確立を行った。 本研究より大腸炎の病態形成における腸管マクロファージの役割および大建中湯の作用の一端を解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
報告者はUC病態における腸管マクロファージの役割およびそれに対する大建中湯の影響について検討を行い、大建中湯によるUCの病態改善作用には炎症性マクロファージの抑制が関与することを示唆する知見を得た。さらに、腸管マクロファージの機能(サイトカイン産生、貪食および遊走など)を評価するための実験系を確立し、今後大腸炎の病態形成における腸管マクロファージの役割ならびに大建中湯の影響について詳細な解析を行うことが可能となった。 一方、大建中湯の標的として着目している上皮細胞および腸管上皮内リンパ球のγδIELに関するデータの収集は達成しておらず、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
UC病態における上皮細胞およびγδIELの役割について検討を行うため、マウス大腸粘膜から腸管上皮内リンパ球を採取し、その表現型ならびに機能を評価する方法を確立する。確立した手法を用い、正常マウス、UCマウスおよび大建中湯マウスにおけるγδIELの表現型について解析する。また、UCマウス由来γδIELのIFN-γ産生に対する大建中湯の効果について検討する。さらに、UC病態における上皮細胞、γδIELおよびマクロファージのクロストークについて共培養実験を行い、検討を行う。 今後報告者は、大建中湯がγδIELの活性を抑制し、最終的にγδIEL/マクロファージ経路の阻害を介し大腸炎を改善するというこれまでにない新規メカニズムを持つ治療薬として提示できるかについて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)