2013 Fiscal Year Annual Research Report
潰瘍性大腸炎に対する新規治療薬の探索研究-大建中湯の作用機序解明
Project/Area Number |
24790657
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
林 周作 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (10548217)
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 大腸炎関連発がん / 腸管粘膜免疫 / 腸管マクロファージ |
Research Abstract |
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患 (IBD) は難治性の慢性炎症疾患であり、その病態解明ならびに新規で有用な治療薬の創出が求められている。これまでに報告者は漢方薬である大建中湯が、マウスにおける急性大腸炎を改善することを見出しており、本研究において大建中湯の作用機序について検討を行った。 大建中湯は急性大腸炎モデルマウスの大腸において上昇したTNF-α、IL-6のmRNA発現を有意に抑制した。IBDの病態形成には腸管マクロファージが関与することが知られており、腸管マクロファージの炎症性サイトカイン産生能について検討を行った。炎症時の大腸粘膜固有層の腸管マクロファージにおけるTNF-αおよびIL-6のmRNA発現は、大建中湯を投与したマウスでは対照群と比較し有意に低下していた。近年、大建中湯は腸管上皮に作用し、抗炎症作用を有するアドレノメジュリンの産生を促す事が報告されている。そこで、大建中湯による大腸炎抑制作用にアドレノメジュリンが関与するかについて検討を行った。アドレノメジュリンの投与は急性大腸炎の発症を抑制したが、大建中湯の抑制作用に対してアドレノメジュリン受容体拮抗薬の前投与は影響を与えなかった。 慢性炎症疾患に伴う重大な合併症の一つは腫瘍形成であるが、実際IBD患者は大腸がんを発生するリスクが高く、腸管粘膜の慢性炎症を背景とした大腸炎関連発がん (CAC) の発生は、臨床において大きな問題となっている。CACモデルマウスを用い、CACに対する大建中湯の作用について検討を行った。大建中湯はCACモデルマウスにおける腫瘍形成を数および大きさともに有意に抑制した。 本研究から、大建中湯は急性大腸炎および慢性炎症を背景とした大腸発がんを抑制することが明らかとなり、その作用機序には腸管マクロファージにおける炎症性サイトカインの産生阻害が関与することが考えられる。
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