2012 Fiscal Year Research-status Report
消化器がんにおけるTET1の機能解析~治療標的の可能性の探求~
Project/Area Number |
24790682
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 洋太郎 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (90608358)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | ヒドロキシメチル化シトシン |
Research Abstract |
能動的DNA脱メチル化反応がTET familyタンパクにより触媒されるメチル化シトシン(mC)からヒドロキシメチル化シトシン(hmC)への変換反応から始まることが報告されたが(Tahiliani M. Science 2009, Ito S. Nature 2010)、消化器がんを含む固形がんにおけるTETおよびhmCの意義については報告がなかったため、我々はまず固形がんにおけるhmCの存在プロファイルを明らかにすることから着手した。 免疫組織化学的検討により、肝腫瘍自然発生モデルである肝特異的Pik3ca強制発現マウス(Kudo Y. J Hepatol 2011)の腫瘍部において背景肝組織と比較してhmCが低下していた。ヒトの様々な臓器由来の固形腫瘍組織でも同様に、肝、脳、肺、腎、大腸、筋の腫瘍においてhmCが低下していた。ドットブロット法によるゲノムDNA中hmCの定量的評価法を確立し、大腸がんと胃がんで検討をおこなったところ、各々73%, 75%の症例でhmCががん部で背景組織よりも低下しており、大腸がんでは約半数でTET1遺伝子の発現も低下していた。さらに培養細胞の検討では、がん遺伝子による細胞の悪性形質転換に伴うhmC低下を見出した。悪性形質転換におけるhmCの低下が臨床検体から培養細胞まで幅広くみられる普遍的現象であることが明らかとなり、以上の研究内容の報告(Kudo Y. Cancer Sci 2012)は、ほぼ同時期の数グループの報告と並んで、ヒト固形がんにおけるhmC低下を示した先駆け的な位置づけとして引用されることが多い。これまでの成果は、ゲノム上の脱メチル化状態の変化と腫瘍発生の関連を示唆する結果となり、脱メチル化機構の解明が発がん機序の解明およびがん治療の端緒となる可能性を強く示す点で意義がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がんでヒドロキシメチル化シトシンが減少するという、複数の臓器由来腫瘍に共通して見られる減少を見出して報告することができたが、その知見が腫瘍においてどのような生物学的意義をもつのかという点については現在解析中であるため。 また、TETタンパクががんの治療標的となりうるかどうかの検討については、培養細胞レベルではTET1ノックダウンにより増殖抑制効果が見られることから、一定の期待がもてる結果が得られたと言えるが、正常細胞への影響やin vivoモデルでの検証がこれからであるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
がん細胞株におけるTET1遺伝子ノックダウンによる遺伝子発現プロファイルの変化を探索するために、発現マイクロアレイおよび、それらをDNAメチル化状態の変化と併せて検討するために、(h)MeDIP-seq解析をおこなう。in vivoモデルをもちいたTET1機能阻害による抗腫瘍効果の解析もおこなう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生化学実験試薬、細胞培養試薬・器具、実験動物関連のほか、研究成果発表ならびに論文作成関連に使用予定。
|