2012 Fiscal Year Research-status Report
Barrett食道及び腺癌発生におけるNotchシグナルとKLF4の関連について
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24790698
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
玉川 祐司 島根大学, 医学部, 助教 (20609341)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Barrett食道 / Barrett腺癌 |
Research Abstract |
Barrett食道及び腺癌発生におけるNotchシグナルとKLF4の関連については明らかとなってない。そこで、食道扁平上皮の恒常性維持におけるNotchシグナルとKLF4の機能解析を行うと共に、Barrett食道及びBarrett食道を発生母地とした腺癌の発症機構におけるNotchシグナルとKLF4の関与の詳細を解明することを目的とし、今年度は以下の研究実績を得た。 1.食道扁平上皮におけるNotchシグナルとKLF4発現状況の解析 ヒト生検組織及び手術標本を用いて、食道扁平上皮におけるNotchシグナル関連因子(Notch1,Hes1,Math1/Hath1)とKLF4の蛋白発現を免疫組織染色法にて検討を行った。Notch1については食道扁平上皮の細胞質に発現を認めたが、KLF4については発現を認めなかった。また、Hes1については扁平上皮の核内において発現を認めたが、Math1/Hath1については発現を認めなかった。続いて、不死化ヒト食道扁平上皮株(Het-1A)におけるNotchシグナル関連因子の発現状況を蛋白レベル(Western Blot)及びmRNAレベル(定量PCR)にて検討した。この結果、免疫組織染色法による検討と同様にNotch1,Hes1は蛋白・mRNAレベルで共に検出されたが、Math1/Hath1,KLF4については検出されなかった。 2.Barrett食道・食道腺癌におけるNotchシグナルとKLF4発現状況の解析 組織学的にBarrett食道・腺癌と診断されたヒト生検組織及び手術標本を用いて、Notchシグナル関連因子(前述)とKLF4の蛋白発現を免疫組織染色法にて検討を行った。Barrett食道・腺癌におけるNotch1発現は食道扁平上皮と発現に差を認めず、腺癌組織において著明なHes1発現低下とMath1/Hath1,KLF4発現亢進を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画である“食道扁平上皮や病的状態(Barrett食道及び腺癌)でのNotchシグナルとKLF4の発現状況の解析”はおおむね順調に進展している。その解析結果よりNotchシグナルとKLF4の発現パターンの違いも把握できていることからも、その相互作用について更なる検討が必要である状況と考えられる。よって、平成25年度の研究実施計画である“NotchシグナルとKLF4の関連についての検討”に速やかに取り組めると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基にして、平成25年度の研究実施計画である“NotchシグナルとKLF4の関連についての検討”の実施を予定している。 (1)Barrett食道及びBarrett腺癌におけるNotchシグナルの発現状況とKLF4との関連:臨床検体を用いた検討で、上記に示したNotchシグナルの発現状況とKLF4の発現パターンから相互作用について検討する。予備実験の段階では、杯細胞を含めた腸上皮化生に影響を与えると考えられるKLF4が高発現している症例では、Cdx2の発現亢進を経由してHes1の発現低下及びMath1/Hath1の発現亢進を認めており、更に検討を進める。 (2)ヒトBarrett食道細胞株(CP-A)においてKLF4-siRNA and/or Cdx2-siRNAをトランスフェクションし、KLF4 and/or Cdx2を抑制した際のNotchシグナル関連因子の発現変化について検討する。更にこのシステムにおいて、胆汁酸刺激によるNotchシグナルの発現変化も確認する。 (3)食道扁平上皮細胞を用いたKLF4発現ベクター導入による検討:逆にKLF4の発現を認めないHet-1AにLipofectamineTM2000(Invitrogen)を用いてKLF4を導入し、一過性にKLF4が誘導できるシステムを構築する。KLF4のベクターへの導入は、私共の研究グループで既に作成できている。KLF4が発現した際に、仮説で示したCdx2の誘導を経由してHes1の制御及びMath1/Hath1の誘導が可能かどうかについて検討する。更に腸上皮化生への分化を示すマーカーであるMUC2の発現レベルについても検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
結果的に平成24年度から繰り越して使用する研究費として60,654円が生じた。その原因としては、新たに購入したヒトBarrett食道細胞株(CP-A)が当初の予定より安価で購入できたこととラット実験モデル(ラット胆汁酸逆流食道炎モデル)の術後生存率が手術手技の向上によって計画予定時より軒並み上昇したことが一因であると考えられる。 平成25年度の研究費使用計画としては、本研究に関する設備・備品は整っているため、実験動物や細胞株の購入費を中心として、各種抗体、Real-time PCR Kit、分子生物学的試薬などの消耗品に関する費用が主な研究経費となる。また、本年5月に米国マイアミ州オーランドで開催される国際学会Digestive Disease Week 2013(DDW2013)にて研究成果を発表する予定でもあり、それに関する研究成果発表旅費も必要である。
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