2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト正常大腸上皮および大腸癌における幹細胞ヒエラルキーの解明
Project/Area Number |
24790718
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
股野 麻未 慶應義塾大学, 医学部, 研究員 (20439889)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 幹細胞 / LGR5 |
Research Abstract |
マウス腸管上皮幹細胞が同定され,腸管上皮幹細胞研究は飛躍的に進歩してきた.マウスではLGR5+幹細胞とBMI1+幹細胞の2つの幹細胞が報告され,腸管上皮における正確な幹細胞ヒエラルキー構造は論争中である.また,ヒト大腸癌における癌幹細胞ヒエラルキーおよびその分子メカニズムはほとんどわかっていない.本研究では,ヒト腸管上皮細胞またはヒト大腸癌細胞の遺伝子相同組換えによるLGR5+幹細胞・BMI1+幹細胞の細胞系譜解析により幹細胞ヒエラルキーを解明する. ヒト細胞はノックアウトマウスとは異なり,ゲノムの改変技術は困難であった.しかしながら,最近,ZFN, TALENなどのゲノム編集技術が進歩し,我々はヒト腸管上皮幹細胞の遺伝子改変に取り組んでいる.本技術により,幹細胞遺伝子マーカーを用いた細胞系譜解析により,腸管上皮幹細胞の同定を試みる.こうした技術開発は世界に先駆け,ヒト腸管上皮幹細胞を開発した申請者所属研究室で,国際的にみても有利に推進できる技術である.また,正常ヒト腸管上皮幹細胞研究から得られた技術と知見は,ヒト大腸がんに応用し,がん幹細胞研究の推進を図る. 本研究は,従来のマウスに依存した研究を脱却し,ヒトの細胞生物学に着目した研究である.特に,マウスにおいてヒト大腸がんの臨床像を完全に再現するモデルはなく,本研究戦略は大腸がん研究を根源的に革新する可能性がある.また,がん幹細胞を標的とした治療の創出など,臨床応用を視野に入れた研究が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な研究目的として①ヒト組織幹細胞の遺伝子相同組換によるKnock-in オルガノイドの作製②ヒト腸管上皮幹細胞のlineage tracingによる同定③論争中のLgr5陽性細胞とBmi1陽性細胞の幹細胞ヒエラルキーの解明④大腸癌幹細胞における幹細胞ヒエラルキーの存在の証明 を挙げた.このうち,ヒト細胞の遺伝子相同組換が最も困難な目的であり,本研究計画の中心となっている.また,国際的にも海外一流研究室が同様の研究をしており,非常に競争的な状況にある. 我々は,TALENを用いて,ヒト腸管上皮幹細胞の遺伝子破壊に成功した.本技術をさらに改善し,遺伝子相同組換による遺伝子ノックインの達成を試みている.
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Strategy for Future Research Activity |
TALENや最新世代のゲノム編集技術を利用して,さらに効率の高い,ヒト腸管上皮幹細胞の遺伝子改変を推進していく.本技術は,多様な遺伝子と消化器疾患に利用できるため,精力的に技術開発と特許取得を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画に従い,遺伝子改変技術推進のための消耗品,幹細胞系譜解析に必要な組織化学や異種移植実験に必要な実験動物関連費用,全ての実験の根幹となる培養実験関連消耗品に研究費を使用する予定である. また、未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定あである.
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