2013 Fiscal Year Research-status Report
肝臓線維化病態における、肝星細胞のFree cholesterol代謝機構の解明
Project/Area Number |
24790719
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺谷 俊昭 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (40624408)
|
Keywords | Free cholesterol / 非アルコール性脂肪肝炎 |
Research Abstract |
食事由来のコレステロールが種々の肝臓病の進展に関与することは示唆されている。我々は、高コレステロール食が肝臓構成細胞の1つである肝星細胞にFree cholesterolを蓄積させ、TLR4シグナル増強を介してTGFβ依存的な肝臓線維化を増悪させることを明らかにした。そのため、高コレステロール血症を背景因子にもつ非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を含む肝臓病の病態進展に、肝星細胞のFree cholesterol代謝は重要な役割を担っていると考えられる。そこで、平成25年度の研究は、Free cholesterol代謝関連遺伝子であるACAT1、LIPE、NCEPを肝星細胞特異的に遺伝子改変したマウスとヒト臨床検体を用いた検討を行った。ACAT1が欠損したマウスにおいて、四塩化炭素(CCl4)投与および胆管結紮(BDL)による肝臓線維化が増悪していることを確認した。ACAT1欠損マウスにおいて、血清および肝臓の総コレステロール量は変動していなかった。肝星細胞では、野生型に比べACAT1欠損型で総コレステロール量が高く、また、Free cholesterol量が高かったが、cholesterol ester量はほぼ同じであった。さらに解析を行ったところ、野生型に比べACAT1欠損型肝星細胞において、TLR4の蛋白質量およびTGFβ偽受容体であるBambiの発現量が低下しており、TGFβに対し易感受性を示していた。我々は、肝星細胞のFree cholesterol代謝関連遺伝子であるACAT1が肝臓線維化病態機序に関与することを報告した。これらの結果は、肝星細胞のコレステロール代謝が肝臓線維化に影響を及ぼすことを示した貴重な情報である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、Free cholesterol代謝関連遺伝子であるACAT1、LIPE、NCEPを肝星細胞特異的に遺伝子改変したマウスを用い、マウスNASHモデルおよび肝臓線維化モデルを作成した。肝臓線維化病態は、マッソントリクローム染色で評価した。肝細胞障害は、血清ALTで評価した。また、肝臓炎症病態は、炎症サイトカインのであるTNFαのmRNA発現量およびマクロファージのマーカーであるF4/80の免疫染色で評価した。マウスの血清および肝臓の総コレステロール量を測定した。さらに、マウス肝臓より肝星細胞を分離し、総コレステロール量およびFree cholesterol量を測定した。また、TLR4の蛋白質量およびTGFβ偽受容体であるBambiの発現量も確認した。よって、計画は概ね達成していると評価した。 ヒト臨床検体については、DNAサンプルおよび血清よりデータの採取を行った。しかし、レーザーマイクロダイゼクションを用いて肝臓組織標本より肝星細胞の分離し、肝星細胞のFree cholesterol代謝関連遺伝子およびTGFβシグナル関連遺伝子の発現量解析については、現在、実施中により、未達成である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、マウスモデルで確認された現象が、ヒト肝星細胞においても確認できるのかを検証する。大腸癌転移肝癌転移患者の外科的切除肝臓の背景正常肝組織より初代肝星細胞を分離し、肝星細胞にFree cholesterolを蓄積させ、Free cholesterolとTGFβ感受性について、詳細な解析を行う。その、一方で、NASH、慢性肝炎、肝硬変患者の肝臓組織・血清・DNAサンプルを用いて、肝臓組織像、Free cholesterol代謝酵素SNP、血清コレステロール値との相関を明らかにする。Free cholesterol代謝酵素のSNPより、肝星細胞へFree cholesterolが蓄積しやすいと判定された患者は、肝臓線維化進展の危険度が高いものと考えられる。肝臓線維化予防という観点からコレステロール摂食量、血清コレステロール値の適正値の設定が必要となるため、その診断基準の作成を試みる。 最後に、本研究で得られた知見・成果を取りまとめ、国内外の権威ある学術雑誌に投稿し報告する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目標は、NASH、慢性肝炎、肝硬変患者より得られた血清・DNAサンプル・肝組織標本を用いた解析データを用い、Free cholesterol代謝酵素のSNPより高コレステロール状態でのヒト肝線維化進展の危険度を予測することとしている。ヒト血清・DNAサンプル・肝組織標本より得るデータにバイアスが含まれないようにするため、全ての患者サンプルを同時に解析する必要がある。血清・DNAサンプルについては、統計解析を行うのに十分なサンプル数が揃い、データの採取を行えている。一方で、肝組織標本については、統計解析を行うのに十分なサンプル数が揃えられておらず、肝組織標本を用いた検討が未施行である。そのため、一部助成金を使用することができなかった。 次年度は、今年度の研究費を用いて、継続中のヒト臨床検体を用いた解析を終了させる。本年度も継続して、NASH、慢性肝炎、肝硬変患者より得られた血清・DNAサンプル・肝組織標本を採取する。ヒト大腸癌肝転移患者の外科的切除肝の背景正常肝組織を用いて肝臓より肝星細胞を分離し、Free cholesterol代謝・蓄積、代謝酵素活性・SNP解析、TGFβ感受性、血清コレステロール値との相関を明らかとする。また、レーザーマイクロダイゼクション法を用いて、NASH、慢性肝炎、肝硬変患者の肝臓組織標本より肝星細胞を集め、mRNAを回収し、Free cholesterol代謝酵素およびTGFβシグナル関連遺伝子の発現量を定量する。肝星細胞のFree cholesterol量は、組織染色で評価する。また、TLR4発現量も免疫組織染色により評価する。
|
Research Products
(2 results)