2012 Fiscal Year Research-status Report
バレット食道の病態・癌化に関わるエピゲノム異常の解析
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24790729
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Research Institution | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
Principal Investigator |
大坪 武史 独立行政法人国立国際医療研究センター, 消化器疾患研究部, 特任研究員 (00623034)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 上部消化管学(食道、胃、十二指腸) / エピゲノム |
Research Abstract |
バレット食道は、胃食道逆流症による傷害からの修復過程で生じる異常分化上皮であり、腺癌発症の母地となるため臨床的に重要視されている。申請者らのグループは、消化管の慢性炎症性疾患である潰瘍性大腸炎、及びそれに伴う炎症発癌過程において、正常型Sda糖鎖の合成酵素遺伝子群の発現がエピジェネティック機構により転写抑制されていることを見出し、消化管の炎症・発癌にエピゲノム変化が密接に関与していることを明らかにしてきた。本研究では、糖鎖発現変化を指標としたバレット食道の網羅的エピゲノム異常解析を行うことで、腺癌発生に至る病態の解明を目指した。 平成24年度は、バレット食道における糖鎖発現を、生検検体の免疫組織染色により検討した。正常腸で発現が認められるSda糖鎖は、正常食道扁平上皮細胞には発現していなかった。バレット食道検体の一部ではSda糖鎖の異所的発現が見られたが、ムチン発現による胃型(MUC5AC、MUC6)ないし腸型(MUC2)との関連は認められなかった。Sda糖鎖合成遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化状態をPyrosequence法により定量した結果、正常食道では低メチル化状態であったのに対し、Sda糖鎖陰性バレット食道生検およびバレット食道腺癌ではメチル化レベルは著しく高かった。以上より、バレット食道腺癌に至る過程で、DNAメチル化異常が生じること、バレット食道に異所的に発現するSda糖鎖がその指標となり得ることが明らかとなった。更に、バレット食道癌手術検体より抽出したDNA及びRNAを用い、MeDIP-seq法によるメチローム解析、serial analysis of gene expression (SAGE)-seq法によるトランスクリプトーム解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実地計画のうち、1)バレット食道検体におけるSda糖鎖発現パターン解析、2)バレット食道検体におけるメチローム解析、についてはほぼ計画通りに遂行できた。しかしながら、臨床検体を用いた研究においては研究目的に使用できる標本量に限界があり、特に生検検体という微量組織を用いて上記研究計画1)2)と、3)バレット食道上皮細胞培養系の確立を同時に行うことは量的に不可能であった。そのため、本年度はバレット生検を用いた検討では、解析対象検体の臨床病理学的分類に必要な研究計画1)を最優先させた。3)についてはバレット食道検体のかわりに、食道癌近傍部の食道扁平上皮細胞を分離し、初代培養系を確立した。今後2)のトランスクリプトーム解析結果を見ながら、食道扁平上皮細胞培養系に種々の因子を添加することより、バレット食道で見られる増殖性円柱上皮細胞の誘導を試み、その分子病態を明らかにして行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である、糖鎖発現変化を指標にしたバレット食道から腺癌発生過程におけるエピゲノム変化の網羅解析によるバレット腺癌に至る病態の解明を目指し、交付申請書に記載した研究計画に基づき研究を推進して行く予定である。具体的には、ChIP-seq法によりバレット食道検体におけるヒストン修飾変化の解析を行い、ヒストン修飾とDNAメチル化及び遺伝子発現変化との関連を明らかにする。次に、これらの解析によりエピジェネティックな遺伝子発現異常が認められた遺伝子ついて、これまでに確立した食道上皮培養系を用いた機能解析を行う。さらに、これらの解析より見出されたエピゲノム変化を、蓄積されたバレット食道及び腺癌症例において解析することで、病態との関連を明らかにし、バレット食道及び腺癌の新たな診断マーカーに成り得るかどうかを解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(3 results)