2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790741
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
砂河 孝行 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (40418637)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マクロファージ / 炎症終息 / NFKB |
Research Abstract |
癌、動脈硬化や糖尿病などの様々な疾患の基盤病態として慢性炎症があり、マクロファージがその中心的な役割を担っている。これまでマクロファージは炎症を惹起するものとされてきたが近年サブクラスが存在し、一部はむしろ炎症抑制・創傷治癒に機能することが示唆されている。この炎症性サブクラスをM1、抗炎症性をM2として分類されている。近年、このようなサブクラス間の量的不均衡が様々な慢性炎症疾患において関与している可能性が考えられている。本研究計画ではマクロファージ活性化におけるクロマチン変化に着目し、転写ネットワークによるマクロファージ活性制御機構を理解することで慢性炎症疾患における新規診断治療標的の探索を目的として研究を行った。 今回、LPSによりM1活性化をIL-4によりM2活性化を誘導し、抑制性ヒストン修飾であるH3K27me3および活性化型のH3K4me3についてゲノムワイドなデータ取得を行いサブクラス間の比較検討を行った。その結果、サブクラス間のヒストン修飾違いが乏しいことが明らかとなった。一方、炎症刺激後の炎症惹起と終息の制御が組織恒常性維持に重要であることが言われている。特に炎症終息期に於いてM2様の表現型を取ることが言われておりこの表現型のスイッチングが炎症制御において重要であると考えられる。そこで、炎症応答に重要な転写因子であるNFKBに着目し検討を行った。その結果、NFKBの構成タンパクであるp65/RelAは炎症応答時に最も結合が検出されたがそのコファクターであるp50やc-Relは炎症応答期にp65と共通した標的に結合する一方で炎症終息期においては特異的標的を持つことを見出した。このことは、炎症刺激後、時間依存的にNFKB構成因子のスイッチングしていることを示唆している。今後、刺激依存的なNFKB構成因子のスイッチングの生物学的意味について検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
腹腔マクロファージを用いて炎症性のM1および非炎症性のM2のゲノムワイドなヒストン修飾データの取得を行った。炎症性応答においては、LPS刺激を非炎症性応答にはIL-4により刺激し、その活性化状態におけるヒストン修飾変化について検討を行った結果、M1およびM2マクロファージ間の変化は乏しいことが明らかとなった。この事は、クロマチン構造変換よる制御というよりもむしろ刺激により活性化する転写因子の違いがそのシスエレメントを介して活性化状態を制御していることを示唆していた。一方、持続的な炎症刺激は早期においては炎症応答を示すがその後減弱し、非炎症性の表現型を示すようになることが知られている。このような時間依存的な表現型の変化の破綻が炎症の慢性化を引き起こすとするならその制御メカニズムを明らかにすることがマクロファージサブクラススイッチングのメカニズムを理解することになると考えられる。そこで、炎症応答において中心的に働く転写因子であるNFkBの主要な構成因子であるp65, p50およびc-Relのゲノムワイドな結合領域データを取得した。その結果、p50およびc-Relは炎症期だけでなく非炎症応答期に於いても重要な役割をしていることを示唆するデータが得られた。以上の事から初期の仮説とは異なり、炎症応答に重要な転写因子NFkBが刺激後の時間依存的にファミリー間の組み合わせを変えることで炎症の惹起と終息を制御していることが考えられた。 当初の仮説とは異なるがマクロファージの炎症応答制御メカニズムの解明を目的としたデータ取得は順調に進んでいる。今後、得られたデータを用いて時期特異的な標的遺伝子の機能などを解析することでマクロファージによる炎症制御機構が明らかになると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた結果からマクロファージにおける炎症惹起およびその終息メカニズムについて着目し解析する。すでに取得したNFKB構成因子の結合プロファイルに加え、ペアとなるサンプルの遺伝子発現プロファイルをRNA-Seq法により取得する。取得した各々のデータを統合することで各NFKB構成因子の標的遺伝子の同定を行う。さらに、炎症期および炎症終息期に於いてどのような遺伝子群が時期特異的に制御されているのかについて生物情報学的手法を用いて検討を行う。また、炎症期および炎症終息期に於いてNFKB構成因子のスイッチングが起こることが前年度の検討によって明らかとなっていることから、時期特異的遺伝子群の制御にはNFKBファミリーと協調して働く転写共役因子によるものと受け手側であるクロマチンの構造変化によるものが予想される。転写共役因子による制御メカニズムの検討として炎症期および炎症終息期における特異的標的遺伝子について特徴的なシスエレメントの抽出を行う。得られた候補シスエレメントに結合する候補転写因子の炎症応答への影響について検討する。また、候補シスエレメント結合転写因子について遺伝子改変マウスが手に入る際には、敗血症モデルなど個体レベルでの検討も行う。 クロマチン構造変化による転写因子の結合制御による炎症応答制御の可能性については、FAIRE-Seq法を行うことでゲノムワイドにオープンクロマチンデータの取得を行う。得られたデータより、時間特異的に誘導されるクロマチン構造変化とNFKB構成因子の結合との関連について比較検討を行うとともに特徴的な遺伝子群の有無について生物情報学的手法により検討する。また、クロマチン構造変化領域特異的シスエレメントの抽出についても行い結合候補因子の炎症応答への影響を検討する。 以上のような手法によりマクロファージの炎症応答制御の分子機序を解明することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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