2012 Fiscal Year Research-status Report
サーチュイン7の心血管病態における創傷治癒制御機構の解明
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24790768
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
泉家 康宏 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (10515414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 創傷治癒 |
Research Abstract |
1. Sirt7ノックアウトマウスを用いた検討:野生型及びSirt7ノックアウトマウスを使用し皮膚創傷治癒モデル、尿管結紮による腎臓線維化モデル、大腿動脈結紮による下肢虚血モデルを作製し、病態下でのSirt7の役割について検討を行った。いずれの実験においてもSirt7の欠如は、炎症反応と血管新生の減弱から創傷治癒の遅延を惹起することが明らかとなった。 2. 組織特異的ノックアウトマウスを用いた検討:心筋細胞、線維芽細胞、内皮細胞特異的Sirt7ノックアウトマウスの作製が完了し、病態モデルでの表現型についてコントロールマウスと比較検討を行った。心筋梗塞モデルにおいては心筋細胞・線維芽細胞特異的ノックアウトマウスは心破裂の増加などの著明な表現型を示さなかった。また内皮細胞特異的ノックアウトマウスに対しては下肢虚血モデルを施行したが、こちらも血管新生に有意な差を認めなかった。以上の結果から、Sirt7ノックアウトマウスで認められた表現型には単一の細胞のみではなく、複数の細胞が関与している可能性が示唆された。 3. 培養細胞での検討-Sirt7の標的分子の同定:a) 培養心筋細胞及び線維芽細胞での検討:ラット新生児由来の初代心筋細胞・線維芽細胞を用い、siRNAおよびアデノウイルスを用いたSirt7のgain- and loss-of functionの検討を行った。TGF-β1による線維芽細胞の分化マーカーであるα-SMAやSM22の遺伝子発現がSirt7のノックダウンにより有意に抑制され、逆に過剰発現することで分化が促進されること、さらにその機序としてSirt7がTGF-β1受容体の分解を制御している可能性が示唆された。b) 内皮細胞での検討:Sirt7のノックダウンにより内皮細胞の管腔形成、細胞増殖が有意に抑制された.内皮機能制御に関与する因子の同定は現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. Sirt7ノックアウトマウスを用いた検討:Sirt7ノックアウトマウスを使用した心血管病態モデル・創傷治癒モデルは、ほぼ表現型の解析が完了した。本年度は下記に示す組織特異的ノックアウトマウスの解析を重点的に行う。 2. 組織特異的ノックアウトマウスを用いた検討:組織特異的Sirt7ノックアウトマウスの作製が完了し、病態モデルでの表現型についてコントロールマウスと比較検討を順調に推進している。本年度は全身ノックアウトマウスで施行したすべての病態モデルを行い、いずれの細胞種におけるSirt7の欠如が病態形成に最も関与しているかを検討する。 3. 培養細胞での検討-Sirt7の標的分子の同定:a) 培養心筋細胞及び線維芽細胞での検討:Sirt7が線維芽細胞の機能維持に必須であることが昨年度の検討で明らかとなった。またその機序として、Sirt7がTGF-β1受容体の分解を制御している可能性が示唆された。本年度はその機序をさらに詳細に検討するため、ChIPアッセイとプロモーターアッセイを行う予定である。b) 内皮細胞での検討:内皮細胞においてもSirt7は細胞機能維持に必須であることが昨年の検討から明らかとなった。本年度はその機序をさらに詳細に検討するため、ChIPアッセイとプロモーターアッセイを行う予定である。 以上より、実験計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Sirt7ノックアウトマウスを用いた検討:平成24年度で病態モデルでの表現型解析はほぼ解析は終了したと考えられる。本年度は組織特異的ノックアウトマウスの解析を重点的に行う。 2. 組織特異的ノックアウトマウスを用いた検討:本年度は全身ノックアウトマウスで施行したすべての病態モデルを行い、いずれの細胞種におけるSirt7の欠如が病態形成に最も関与しているかを検討する。 3. 培養細胞での検討-Sirt7の標的分子の同定:培養心筋細胞・線維芽細胞・内皮細胞での機能アッセイは、平成24年度でほぼ終了したと考えられる。本年度はその分子機序をさらに詳細に検討するため、ChIPアッセイとプロモーターアッセイを行う予定である。また培養骨格筋細胞(C2C12 myoblastsとL6 myoblasts)の各分化段階においてSirt7をノックダウンあるいは過剰発現することで,骨格筋由来の血管新生因子や心保護因子の発現がどのように変化するかをウエスタンブロッティングとPCR法にて検討する予定である。 また核小体タンパクであるSirt7がどのようなメカニズムで培養細胞での機能制御に関与しているかを解明するために,Sirt7と結合するDNA結合タンパクの網羅的解析を行う.核タンパクを抽出後DNAビーズとインキュベートし,ビーズと結合したタンパクをSDS-PAGEにより分離し,質量分析計を用いてタンパク質の同定を行う.この解析によりSirt7の標的因子の同定を行い,Sirt7の創傷治癒機転における役割を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
病態モデルにおける組織特異的ノックアウトマウスの表現型解析のため、動物実験用の予算が昨年と同程度必要になると考えられる。 培養細胞実験に関しては、前年度に引き続きSirt7の標的分子のスクリーニングのための試薬が必要である.また標的遺伝子同定後はそれらの遺伝子改変動物の作製費用が必要になる見込みである。 本研究により得られた研究成果を発表するために、昨年同様国内は日本循環器学会の総会(東京)、海外では米国心臓病学会(AHA、ダラス)の総会に参加する予定であり旅費はそれら学会活動のために使用する.
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