2012 Fiscal Year Research-status Report
p53ミトコンドリアを制御する平滑筋細胞増殖・肺高血圧誘導キナーゼ複合体の解明
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24790772
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
勝目 あさ子 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (70548429)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / チロシンキナーゼ / 平滑筋細胞 / 増殖 / PYK2 |
Research Abstract |
肺高血圧症は未だ原因不明で致死性の疾患である。その発症メカニズムは今田不明であるが、本来静止(G0期)状態にある中膜平滑筋細胞が血管ストレスに対し持続的な増殖応答をきたし肺動脈の狭窄をきたすと考えた。 今回の研究で肺高血圧をもたらす血管平滑筋細胞の過剰増殖は、ストレス応答性チロシンキナーゼPYK2を最上流とするPYK2/Srcファミリーチロシンキナーゼ複合体が、ミトコンドリアエネルギー代謝・細胞周期抑制蛋白質p53を介した細胞増殖の制御機構をかく乱する事にあることを解明し、その制御法を明らかにしようとした。結果、1): 血管ストレスにたいする血管平滑筋細胞に収縮応答には、多大な細胞内エネルギー(ATP)消費を伴うが、PYK2はこの細胞内ATPレベル低下により活性化を受け、ミトコンドリアを増幅、ATPレベルを回復させ収縮応答を維持することを、PYK2欠損マウスを用いた解析で見出した。この収縮型細胞では内皮由来NOによりp53レベルは上昇し増殖抑制される。2):血管ストレスが持続するとPYK2は細胞膜に移行し、チロシンキナーゼ複合体とシグナロソームを形成し増殖シグナルを活性化、一方p53分解を促進し増殖応答が継続することを明らかにした。3): 一方血管ストレスがPYK2によるATP回復レベルを超えると、ミトコンドリア機能障害が細胞内ATPレベル低下や活性酸素(ROS)の細胞内漏れ出し増加を引き起こし、結果p53レベルの上昇により細胞老化・細胞死にいたることを明らかにした。4):PYK2チロシンキナーゼ抑制薬により、低酸素暴露下での肺高血圧病変が抑制されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PYK2欠損マウスを用いた解析により、PYK2・増殖チロシンキナーゼ複合体が、低酸素暴露下において収縮型の肺動脈平滑筋細胞を増殖型に形質転換させるメカニズムを明らかにした。すなわち1)低酸素による平滑筋細胞の収縮反応の持続は細胞内ATPレベルを低下させ 2)そのATPレベルの低下刺激でPYK2は活性化し細胞膜に移行、増殖チロシンキナーゼ複合体を活性化、3)一方、PYK2は一部核に移行p53を分解し、細胞増殖を促進する事、4)またPYK2はPGC-1αを介しミトコンドリア生合成を促進し、増殖に必要なATPレベルを維持する事を証明しえた。 すなわちPYK2欠損マウスでは野生型と比較し低酸素暴露において増殖期に入るBrdU、Ki67染色陽性中膜平滑筋細胞数が減少した。そのメカニズムはキナーゼ下流増殖シグナルであるMAPKs, PI-3-K/Akt系の活性定価,細胞増殖因子Cyclin D発現量の低下、増殖抑制蛋白であるp53/p21,p27レベルの低下、さらに増殖シグナルの増幅に関わるROS定量評価(DHE,8-OHdG, Nitrotyrosine染色)の産生低下が見られた。また、低酸素刺激による細胞内ATPレベルの低下が抑制された。活性化されたPYK2が細胞膜に移行し細胞膜に存在するFAKと複合体を形成し、さらに、Src/JAK/Abl増殖キナーゼ分子複合体を形成・それらが相互に活性化された。さらにATPレベルの低下がPYK2更には、Abl, Src, JAK, FAKを活性化させた。以上の結果は、ストレス応答性チロシンキナーゼPYK2がSrcファミリーキナーゼと強調して低酸素における細胞内エネルギーレベルの変化に応答し、細胞増殖・生存を調整していることを表していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
収縮期から増殖期、増殖期~増殖停止・細胞死にいたる過程においてPYK2/増殖キナーゼシグナロソーム分子に結合する分子プロファイルの変化を網羅的解析で同定する 我々は最近マウス心筋においてリジン残基がアセチル化修飾を受けている蛋白質を同定する方法を確立した。すなわち抗アセチル化リジン抗体で免疫沈降しそれと結合する蛋白質を2次元電気泳動(2-D-PAGE)で展開し、液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)を使用して各スポットの分子の同定を行う系を確立し高効率にPYK2を免疫沈降できるポリクロ―ナルPYK2抗体の作成に成功しPYK2と結合できる分子の同定を行い、低酸素暴露により収縮型から増殖型にいたるプロセスにおいて、PYK2キナーゼ複合体構成分子に結合するたんぱく質の違いを同定しそれらの分子の形質転換における役割を見出す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ノックアウトマウス維持のためのSPF施設使用料、マウスの購入費用、さらに 蛋白測定(ELISA法、ウエスタンブロット法)、遺伝子学的検討(RT-PCRなど)、免疫組織学的検討などの実験試薬の購入などに次年度研究費を使用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)