2012 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化および大動脈瘤形成におけるインフラマソームの役割の解明
Project/Area Number |
24790775
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
臼井 文武 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (50585560)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自然炎症 / マクロファージ |
Research Abstract |
脂質異常や肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の病態基盤における慢性炎症反応の関与が注目されている。しかし、これらの病態では感染の関与はほとんどなく、その無菌性の炎症反応がどのようにして惹起されるのかは全くわかっていない。最近、新規の自然炎症経路であるインフラマソームと呼ばれるシグナル分子複合体が、痛風やアスベスト肺における無菌性の炎症を引き起こしていることが明らかとされた。本研究では、無菌的な慢性炎症である動脈硬化および大動脈瘤の形成におけるインフラマソームの役割、およびその治療標的としての有効性を明らかにし、インフラマソーム制御による新規の治療戦略の構築を目的として行なった。 当該年度は疾患動物モデルにおけるインフラマソームの解明を行なった。まず動脈硬化モデルはApoe-KOマウスに通常食、Western Diet (Research Diets社)、Paigen Diet (Research Diets社)を3ヶ月給餌し作成した。動脈硬化を誘導したマウスから大動脈を採取し動脈硬化病変の評価を行った所、インフラマソームの構成分子の一つであるCaspase-1を欠損したマウスで動脈硬化の誘導が有意に抑制されることが判明した。 また腹部大動脈瘤モデルはApoe-KOマウスに昇圧作用を持つ生理活性物質であるアンジオテンシンIIをALZETミニポンプで持続投与(1000ng/kg/min、4週間)して作成した。こちらについてもインフラマソームの構成分子を欠損したマウスで大動脈瘤の形成が有意に抑制されていた。これらのことから、動脈硬化および大動脈瘤形成においてインフラマソームが重要な役割を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在動物モデルの作製および解析はほぼ終えている。また解析の結果、動脈硬化モデルではインフラマソームの構成分子を欠損すると病変形成の抑制と共にマクロファージの浸潤が抑制されること、IL-1βやIL-6、MCP-1といった炎症サイトカインが抑制されることを見いだしている。大動脈瘤モデルではインフラマソームの構成分子を欠損すると大動脈瘤の形成が抑制されること、その際に外膜側に浸潤するマクロファージが病変形成に重要な役割を持つことを見いだしている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度では動物モデルを中心に解析を行い、すでに一定の結果を得ている。次年度は当初の予定通り培養細胞におけるインフラマソーム活性化機構の解析を行う予定である。具体的には野生型と各インフラマソーム構成分子を欠損したマウスの骨髄由来の血管平滑筋の初代培養細胞およびマウスのマクロファージ株化細胞であるJ774細胞にASCやcaspase-1のsiRNAによるノックダウンを行い、炎症性因子(ICAM-1、VCAM-1など)、サイトカイン(IL-1β、IL-18、IL-6、MCP-1など)の発現・産生やASC、Caspase-1の活性化を検討する。インフラマソーム活性化の刺激としては酸化LDL、アンジオテンシンII、炎症刺激(LPS、炎症性サイトカイン)を使用する。さらに、インフラマソーム活性化を阻害する薬剤、因子のスクリーニングを行い、疾患モデルにおける効果の検証の予備実験とする。またここで得られた知見をもとにインフラマソーム制御による動脈硬化および大動脈瘤形成に対する治療効果の検証を行なう。これにより動脈硬化および大動脈瘤形成におけるインフラマソームの役割の解明とその活性制御による新規治療法の開発が可能になることが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究はまず培養細胞における解析で使用する消耗品(培養液、培養皿、阻害剤等)に使用する。また引き続き動物モデルの作製も行なう為、マウスの維持管理費や疾患モデル作製に使用する特殊飼料(Western Diet:Research Diets社、Paigen Diet :Research Diets社)や試薬等(アンジオテンシンII、ALZETミニポンプ)に使用する。
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