2012 Fiscal Year Research-status Report
基底膜分子パールカン欠損による新規大動脈解離モデルマウスを用いた分子病態解明
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24790783
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
野中 里紗 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90614248)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 基底膜分子パールカン / 細胞外マトリックス / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
細胞外マトリックスの1つである基底膜は、細胞外環境の中核を形成していると考えられており、全ての組織に存在する。血管基底膜の構成分子であるパールカンは、様々な細胞内シグナルを修飾制御する機能分子としても働く。パールカンコンディショナルノックアウトマウスの解析より、パールカン欠損大動脈の約20%で大動脈解離を観察している。本年度は、この発症要因を明らかにすることを目標とした。パールカン欠損が大動脈組織にどのような変化を与えるかを示す為、パールカン欠損大動脈および対照マウスに対し、形態学的解析および生理学的解析を行った。形態学的解析として、パールカン欠損および対照マウスの大動脈組織を用いた組織染色(HE染色、エラスチカ・ワンギーソン染色)を行い、血管組織および弾性線維の形態変化について光学顕微鏡を用いて解析を行った。パールカン欠損大動脈組織における平滑筋層の肥厚や弾性線維の形態の乱れが観察された。一方、生理学的解析として、パールカン欠損および対照マウスの大動脈を用いた大動脈リング張力試験により、パールカン欠損大動脈組織の収縮・弛緩機能を検討したところ、外因性NO様物質による内皮非依存性弛緩作用においては差が認められなかったが、アセチルコリンによる内皮依存性の一酸化窒素(NO)遊離を介した弛緩作用に有意な低下が認められた。また、遺伝子解析より、内皮型NO合成酵素(NOS)の発現の減少を認め、新たにパールカンの収縮・弛緩機能への関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では、パールカン欠損における大動脈解離の発症要因を明らかにすることを目標とし、光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いた解析による、正常大動脈組織がパールカン欠損によってどのような変化を起こしているかの形態学的解析および大動脈リング張力試験を用いた、血管収縮・弛緩機能の検討の生理学的解析を予定していた。形態学的解析において、対照マウス及びコンディショナルノックアウトマウスの胸部大動脈組織のHE組織染色、エラスチカ・ワンギーソン染色法により、パールカン欠損大動脈組織における平滑筋層の肥厚や弾性線維の形態の乱れが観察している。現在は、電子顕微鏡を用いた解析に進めている。生理学的解析において、対照マウス及びコンディショナルノックアウトマウスの胸部大動脈組織の大動脈リング張力試験により、パールカン欠損することにより、内皮依存性の一酸化窒素(NO)遊離を介した弛緩作用の有意な低下が認められ、更に、内皮型NO合成酵素(NOS)の発現減少を認め、パールカンの収縮・弛緩機能への関与を示した。現在、これらの更に検討する為、内皮・平滑筋細胞の初代培養細胞の樹立を進めている。よって、おおむね研究計画通りに進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成24年度で得られた結果をもとに、引き続き光学顕微鏡、電子顕微鏡、蛍光顕微鏡を用いた解析により、正常大動脈組織がパールカン欠損によってどのような変化を起こしているかを形態学的に解析及び組織RNAを用いて分子生物学的解析を行う。また、両表現型マウスの胸部大動脈から、内皮・平滑筋細胞の初代培養細胞を樹立する。パールカンノックアウトマウスに発症する大動脈解離に対し、弾性線維(中膜)の断裂が、1)弾性線維形成能の低下による脆弱化に起因する。2)炎症による弾性線維分解亢進による脆弱化に起因する。の2つの仮説に基づき検討を行う。両表現型マウスから摘出した大動脈組織および樹立した血管平滑筋細胞の初代培養細胞を用いて、パールカン欠損が弾性線維構成成分の発現や弾性線維の形成および分解に与える影響を検討する。一方、樹立した初代培養内皮細胞は、RNAおよびタンパク質を採取し、分子生物学的解析や、アゴニストを用いた薬理学的解析を行う。更に、購入した平滑筋細胞、内皮細胞を用いた初代培養細胞で認められた変化を、分子生物学的手法を用いての再現・検討すると共に、初代細胞へのリコンビナントパールカン添加や機能ドメインI-Vのリコンビナントタンパク質の添加で、パールカン欠損で認められた変化のレスキュー実験を行い、パールカンのリコンビナントタンパク質を用いた関連ドメインおよび関連結合分子の生化学的・分子生物学的解析により検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では、引き続き形態学的・病理学的解析を行うため、病理標本作製、電子顕微鏡試料作製に必要な試薬等および消耗品を購入する。更に、本年度は、免疫染色やウェスタン法によるタンパク質解析が中心になる為、各タンパク質分子に対する多種類の一次抗体および二次抗体や、タンパク質解析用試薬および関連消耗品が必要となり、それらを購入する。また、in vitro解析の為の初代内皮・平滑筋細胞を樹立するにあたり、細胞培養関連試薬や培養関連プラスチック製品の購入、更に、それら細胞を用いた分子生物学的解析を行うための試薬購入を行う。基本的には飼育中の遺伝子改変マウスを使って実験を進めるが、状況に応じ純系C57BL6マウスの購入が必要である。また、学会等での研究成果発表のための参加費が必要である。
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Research Products
(1 results)