2013 Fiscal Year Research-status Report
基底膜分子パールカン欠損による新規大動脈解離モデルマウスを用いた分子病態解明
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24790783
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
野中 里紗 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90614248)
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Keywords | 基底膜分子パールカン / 中膜弾性線維層 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
基底膜は、細胞外環境の中核を形成していると考えられている。本研究では、血管基底膜の構成分子であるパールカンを欠損したパールカンコンディショナルノックアウト(Perl CKO)マウスの解析より、パールカンの血管組織における役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、パールカン欠損大動脈および対照マウスに対し、更なる形態学的解析および分子生物学的解析を行った。24年度に行った組織染色をもとに、Perl CKOおよび対照マウスの大動脈組織の形態を透過電子顕微鏡により解析を行った。対照の大動脈組織と比較し、パールカン欠損大動脈組織の中膜層の弾性板に部分的に断裂や湾曲が観察された。大動脈組織の中膜におけるパールカンの分子の局在について免疫染色法を用いた共焦点顕微鏡での解析を行った。中膜層の弾性板への共局在を認めた。パールカン欠損大動脈観察された弾性板の形態異常や大動脈解離に対し、弾性線維形成能の低下あるいは弾性線維分解の亢進という2つの仮説を立て、弾性線維主要構成タンパク質および弾性線維分解酵素の遺伝子発現の解析を行った。Perl CKOマウスの大動脈組織における弾性線維主要構成タンパク質の遺伝子発現は、対照マウスと比較し減少傾向を示したが、統計的解析に向けて追加実験が必要と思われた。一方、弾性線維分解の遺伝子発現に違いは認められなかった。更に、Perl CKOおよび対照マウスの大動脈組織の成熟度を解析したが、有意な差は認められなかった。また、24年度に行った生理学的解析において、パールカン欠損大動脈で認められた内皮依存性弛緩作用低下が認められ、遺伝子解析より、内皮型NO合成酵素(NOS3)の発現の減少を認めていたが、タンパク質発現解析よりタンパク質レベルでの有意な減少も確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度では、引き続きパールカン欠損大動脈の電子顕微鏡を用いた形態解析、分子生物学的解析およびマウス胸部大動脈からの内皮・平滑筋初代培養細胞の樹立を予定していた。形態学的解析において、パールカン欠損大動脈組織の中膜層の弾性板に部分的に断裂や湾曲が観察した。分子生物学的解析においては、パールカンコンディショナルノックアウトマウス(Perl CKO)において弾性線維形成能の低下傾向を示し、弾性線維の分解亢進が起きていないことを示した。また大動脈組織の成熟度を比較も行った。また、前年度の生理学的解析において認められた内皮依存性弛緩作用の有意な低下に関して、遺伝子だけでなくタンパク質解析において有意な減少を示した。更に、マウス胸部大動脈からの内皮・平滑筋細胞の初代培養細胞の樹立において、両表現型マウスからの平滑筋初代培養細胞を樹立したが、予定していた両表現型マウスからの内皮初代培養細胞を樹立に至らなかった。予定していた解析の多くは行うことが出来たが、本研究で使用するPerl CKOマウスは産仔数が少ないことや、解析には健常部位を使用しており大動脈解離発症により解析に使用出来ない大動脈組織が生じる時があり、サンプル数の確保がやや困難である時が生じる為、統計的解析に向けて追加実験が必要があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成25年度までに得られた結果をもとに培養細胞を用いたメカニズム解析を中心に行う予定である。まず両表現型マウスのから摘出した大動脈組織および樹立した血管平滑筋細胞の初代培養細胞を用いた解析を行う。また購入した平滑筋細胞、内皮細胞を用いてsiRNA等の分子生物学的手法を用いての検討を行う。またパールカン分子のコアタンパク質部分とヘパラン硫酸鎖の影響を検討するため、培養細胞へヘパラン硫酸鎖分解酵素を用いて機能部位の検討を行うと共に、分子生物学的手法を処理した培養細胞へのリコンビナントパールカン添加や機能ドメインI-Vのリコンビナントタンパク質の添加を行い、関連ドメインおよび関連結合分子の解析によりメカニズム検討を行う。また、並行して平成25年度までに行った実験の統計的解析に向けて追加実験を行う。 平成25年度に計画していた初代培養内皮細胞の樹立は、マウス数の確保が困難な点、マウス大動脈組織における内皮細胞の数が少ない点から困難であった為、購入した内皮細胞へのsiRNA等の分子生物学的手法を用いた解析に変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で用いている遺伝子改変マウスは、産仔数が少ないことや大動脈解離発症により解析には健常部位を使用しており大動脈解離発症により解析に使用出来ない事があり、分子生物学的解析に必要なサンプル数の確保がやや困難であった為、関連試薬の購入が少な目であった。また、本年度で予定していた両表現型マウスからの内皮細胞の初代培養細胞の樹立が、マウス数の確保が困難な点やマウス大動脈組織における内皮細胞の数が少ない点から困難であり、樹立に至らなかった為、それに伴い細胞培養関連試薬や消耗品の購入費の残りが生じた。しかし、購入した内皮細胞への分子生物学的手法を用いた解析に変更する為、使用する細胞の購入やsiRNA等の手法に必要な試薬の購入等の支出が更に生じた為、それらの費用を次年度に繰り越した。また、次年度に海外学会での研究成果の発表が決まっていた為、本年度に計上していた参加費等の費用を次年度に繰り越した。 次年度では、培養細胞を用いた解析を中心に行う為、細胞、細胞培養に必要な細胞培養関連試薬および培養関連プラスチック製消耗品の購入を購入する。更に、siRNA等手法に必要な試薬やタンパク質機能部位解析に必要な分解酵素の購入が必要である。また、次年度も引き続き、免疫染色やウェスタン法によるタンパク質解析を行うため為、各タンパク質分子に対する多種類の一次抗体および二次抗体や、タンパク質解析用試薬および関連消耗品を購入する。基本的には飼育中の遺伝子改変マウスを使って実験を進めるが、状況に応じ純系C57BL6マウスの購入が必要である。また、学会等での研究成果発表のための参加費等への使用を計画している。次年度は、最終年度であるため研究成果の報告を行うための費用を含めている。
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Research Products
(1 results)