2012 Fiscal Year Research-status Report
新規心臓特異的リン酸化酵素の活性調節に基づく心不全・心筋症治療薬の開発
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24790792
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
瀬口 理 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (60570869)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 心不全 / 心筋症 / cardiac-MLCK |
Research Abstract |
【研究の目的】 本研究において、申請者はcardiac-MLCKと心不全病態とのかかわりを明らかにし、最終的にリン酸化酵素であるcardiac-MLCKのリン酸化活性調節を介した心筋サルコメア構造調節薬や強心薬(心不全薬)の創薬に結びつけていくことをその研究の目的としている。 【研究実施計画に照らした現在までの研究の具体的内容と実績】 申請書内に具体的な研究目的として挙げた3点①cardiac-MLCKの活性調節機構の解明、②cardiac-MLCKの活性を修飾する薬剤のスクリーニングとその同定、③正常心および病的心(不全心)におけるcardiac-MLCK/基質ミオシン軽鎖(MLC)リン酸化解析、についての研究成果を以下に記す。 ①③として特に不全心筋でのcardiac-MLCKの遺伝子およびタンパク発現を明らかにするため移植時に摘出されたレシピエント心をサンプルとした網羅的遺伝子およびタンパク発現解析を遂行中である(研究I)。平成25年度内に一定の解析結果が得られる予定である。②として、cardiac-MLCKの活性阻害物質のスクリーニングのためのアッセイ系の構築、開発を行った。具体的には平成24年度にMLCを基質としたIMAP測定系の構築を試みたが、アッセイ系の構築が可能な程度のリン酸化シグナルが得られなかった。市販のいくつかのMLC基質ペプチド、cardiac-MLCKの合成方法(大腸菌、哺乳類細胞)などを変更し、原因究明、アッセイ系の改善を進めるも、リン酸化シグナルが弱いとの結論に至り、IMAPを用いた化合物スクリーニング系構築は断念した。その後ペプチドライブラリーをもとに薬剤標的に対するペプチドの単離、創薬を行っている他研究室との共同研究のなかでcardiac-MLCKの活性調節ペプチドの同定を試みており、同計画を遂行中である(研究II)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究目的の達成度】 上記研究実績の概要にも記載した通り、現在、研究I: 心臓移植レシピエント摘出心の網羅的遺伝子およびタンパク発現解析により①cardiac-MLCKの活性調節機構の解明、正常心および病的心(不全心)におけるcardiac-MLCK/基質ミオシン軽鎖(MLC)リン酸化解析を行い、研究II:cardiac-MLCKを薬剤標的とするペプチドスクリーニングにより、②cardiac-MLCKの活性を修飾する薬剤のスクリーニングとその同定、を行っている。 研究Iについては遺伝子およびタンパク発現解析から不全心筋内のcardiac-MLCK動態を解析するもので、今後臨床情報との相関を含め、平成25年度には一定の結果が出るように現在解析を進めている。 研究IIについてはペプチドライブラリーのスクリーニングに使用するcardiac-MLCKタンパクをすでに大量に合成し、それらを用いてペプチドスクリーニングを開始している。 【自己点検による評価】 研究Iについては平成25年度内に一定の解析結果が得られる予定であり、おおむね順調に進行していると考えている。一方で研究IIについては当初計画していた薬剤スクリーニング系に必要なIMAPリン酸化アッセイ系の構築を断念したこともあり、その点で当初の計画からは遅れている。しかしながら先の計画断念後、迅速に代替案のペプチドスクリーニング系を検討し、現在は実際にペプチドスクリーニング系に用いるcardiac-MLCKタンパクをすでに大量合成し、本研究計画を進めており、平成25年度内にはスクリーニング結果は得られるものと期待しており、こちらについてもおおむね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究課題の推進方策】 研究Iについては前述したように現在遺伝子・タンパク発現解析行っているが、これら発現解析結果に臨床的意義を持たせる目的で現在さらに対象症例の臨床情報収集を実施中である。今後は単なる不全心筋の遺伝子・タンパク発現解析データとしてのみならず、収集臨床情報データと遺伝子・タンパク発現解析データの相関などからより詳細かつ実臨床に即したデータ解析を行う予定としている。 研究IIについてはcardiac-MLCKを薬剤標的としたペプチドスクリーニングにより得られた候補ペプチドを用い、それら候補ペプチドがもたらすcardiac-MLCKリン酸化活性の変化を検討していく予定としている。cardiac-MLCKのリン酸化活性変化を認識する方法として、我々はすでに放射性同位元素32Pを用いたin vitroのリン酸化アッセイ法を構築しており、その再現性、実用性についてはこれまでの検討から確認済みである。 【研究を遂行する上での課題】 前述の放射性同位元素32Pを用いたin vitroのリン酸化アッセイ法による候補ペプチドの評価方法については実際のペプチドを加えたアッセイ系について、加えるペプチドの量、リン酸化反応時間、基質の量などを改めて検討する必要があり、その構築については一定時間を必要が必要となると考えており、実際の詳細なプロトコールの確立も含め、今後の研究の推進方策としている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【平成24年度研究費の使用状況】 研究IIにおけるIMAP測定系の構築に断念したことで、当初IMAP測定系の構築後に予定していた実験に要する試薬、機材購入を中止した。これにより平成24年度研究費の残金が生じることとなった。 【平成25年度研究費の使用計画】 研究Iについては主に得られた遺伝子、タンパク発現データ解析、臨床情報の収集とそれらデータの解析になるため、それに必要な文具などの消耗品を中心に研究費を使用する予定である。 研究IIについては上記研究の推進方策に記すように、平成25年度はスクリーニングにより得られた候補ペプチドがcardiac-MLCKのリン酸化活性に与える変化を確認することが中心となってくる。そのリン酸化アッセイに基づいた評価系の確立に必要となる試薬(一般試薬:Buffer、金属イオン、放射性同位元素、cardiac-MLCKペプチド基質、その他ペプチド:カルモジュリン等)、消耗品(ゲル、泳動キット、その他)の購入に使用する予定としている。
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