2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病患者予備群への低侵襲早期診断マーカーの探索と検討
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24790832
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 恵美子 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20466543)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 尿毒症物質 / 慢性腎臓病 / グアニジノ化合物 / インドキシル硫酸 / カルボニル物質 / バイオマーカー |
Research Abstract |
本研究は、増加する透析導入患者に歯止めをかけるため、早期に腎障害を発見することができるバイオマーカーを探索することを目的としている。具体的には、現在腎臓の状態を反映するマーカーとしてクレアチニンが用いられているが、その代替となるマーカーを探索する。24年度は慢性腎臓病患者と健常人の血漿成分と尿中成分のメタボローム解析を行い、マーカー候補成分を選出する計画であった。しかし近年、腎障害に関与する尿毒症物質が数多く報告されている事から、マーカーとして有用と考えられる尿毒症物質(グアニジノ化合物、インドキシル硫酸等のタンパク結合尿毒症物質、カルボニル物質等)に焦点を当てた。そこで、グアニジノ化合物:21物質、タンパク結合尿毒症物質:6物質、カルボニル物質:3物質についてLC-MS/MS条件の検討を行った。グアニジノ化合物とタンパク結合尿毒症物質に関しては既報の測定法を基に、より良い測定条件となる様に検討を行い、カルボニル物質に関しては新たな測定法を検討し、LC-MS/MS測定条件を確立した。次に、健常人の血漿と尿を用いてそれぞれの目的とする物質を抽出する前処理法を検討した。グアニジノ化合物に関しては有機溶媒による徐タンパク法、タンパク結合尿毒症物質に関しては超遠心法、カルボニル物質に関しては誘導体化法を用いた前処理法を検討した。グアニジノ化合物、タンパク結合尿毒症物質に関してはまだ前処理法の検討途中であるが、カルボニル物質に関しては前処理法を確立した。カルボニル物質は既報の前処理法があるが、本研究で少量のサンプルで多検体を一度に前処理し、測定をすることが可能となった。また今年度、透析治療を受けている患者約30名分の血漿、尿、透析廃液を回収しており、今後本研究で確立した前処理と測定法で目的とする尿毒症物質の動態を解析し、腎障害を早期に発見するバイオマーカーを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的では慢性腎臓病患者と健常人の血漿と尿を用いてメタボローム解析を行い、マーカー候補成分を選出する予定であったが、近年、数多くの尿毒症物質が報告されている。未知物質の場合、物質の同定や標準物質の合成を行わなくてならないため時間をかなり要する。また、LC-MS/MS測定の場合、標準物質と同様に内部標準物質が必須となる。これも標準物質を基に合成を行う。既報の尿毒症物質の場合、多くの物質で標準物質が存在するため、同定や合成の時間を短縮することができる。そのため既報の尿毒症物質の解析を行うことで当初の目的通り、ターゲットとする物質の測定条件の検討を行うことができた。カルボニル物質測定では、標準物質等がすぐに入手できたため、測定条件と前処理の検討を行い、慢性腎臓病患者の検体も測定することができた。しかし、グアニジノ化合物やタンパク結合尿毒症物質測定では、標準物質や内部標準物質を入手するのに数か月かかったため、条件検討は行うことができたが前処理の検討を十分に行えていないため、患者検体の測定を行っていない。以上のことから、一部の物質では予定通り進んでいるが、その一方で予定通り進んでいないためおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
カルボニル物質測定では、測定条件と前処理検討が終わり、患者検体を測定している。現在患者検体は回収を続けているため、引き続き測定を行っていく。また、グアニジノ化合物とタンパク結合尿毒症物質測定に関しては、一部入手が遅れた標準物質があるため、その物質の測定条件の検討を行う。またグアニジノ化合物に関しては、徐タンパク法を利用した前処理法の検討を行い、タンパク結合尿毒症物質に関しては、超遠心法に加え限外ろ過法を用いた方法でタンパクに結合している物や遊離して存在している物を分けて測定できる前処理を検討する。前処理法を検討後、保存している患者検体の測定を順次行っていく。さらに、カルボニル物質測定に関してもタンパク質と結合しているカルボニル物質や遊離して存在しているカルボニル物質のどちらが病態に関与しているかが問題となっているため、カルボニル物質に関してもタンパク質結合している物と遊離物を分けて測定できる前処理法も検討する。患者検体中の各種物質を測定した後、患者の病態と投与薬剤との関連について検討を行い、マーカーとしてどのように評価することが可能かについて検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
カルボニル物質、グアニジノ化合物、タンパク結合尿毒症物質の測定を行うため、ターゲットとする物質の標準物質を購入する。また同時にLC-MS/MS測定では内部標準物質が必要であるため、こちらも購入する。さらに、前処理では固相抽出カラムや限外ろ過カラム、チップを必要とする。LC-MS/MS測定では、物質を分離するためのカラムは必須であり、物質の特性によりカラムを変える必要がある。現在、慢性腎臓病患者の検体を回収しているが、健常人の検体を回収する際には謝金を支払っている。最先端の研究を行うため、国内外の腎臓病やMS測定に関する最新の情報を収集するため学会へ参加する。また本研究で得られた研究結果は、国内外の雑誌に投稿し研究成果を発信する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Role of renin-angiotensin system, oxidative stress and inflammation to the blood pressure control in young subjects.2012
Author(s)
Emiko Sato, Takefumi Mori, Yoshimi Nakamichi, Mustuko Fujiwara, Ikuko Oba, Mizuho Tanno, Susumu Ogawa, Yoshitaka Kinouchi, Hiroshi Sato, Wataru Hida, Sadayoshi Ito
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Journal Title
XVI International Congress on Nutrition and Metabolism in Renal Disease ICRNM Honolulu
Volume: June 26-30
Pages: 53-60
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