2012 Fiscal Year Research-status Report
アミノ酸L-リジンによるuremic memory解除の試み
Project/Area Number |
24790844
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松井 功 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60456986)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 尿素 / カルバミル化 / Uremic memory / リジン / 血管石灰化 / 骨粗鬆症 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1) 蛋白質リジン残基εアミノ基に対して、尿素がカルバミル化修飾を引き起こし、本修飾がuremic memory として作用すること、および2)アミノ酸L-リジン投与によりuremic memoryが解除できること、の2点を証明することにある。 本年度の研究では先ず、血中の尿素が著明に上昇し血管石灰化・骨粗鬆症を生じる腎不全動物モデル(アデニン腎症ラット)を作成した。雄性Sprague-Dawleyラットを1)正常コントロール (Cont)群、2)アデニン誘導性腎不全(Ade)群、3)アデニン腎不全+グリシン投与(Gly)群、4)アデニン腎不全+L-リジン投与(Lys)群の4群に無作為に分け、実験を行った。なお、グリシンは最も単純な構造のアミノ酸であることから、本実験ではアミノ酸コントロールとして用いた。 Cont群に比べAde群・Gly群・Lys群では同程度に血清尿素窒素が上昇していた。また血清クレアチニン濃度もAde群・Gly群・Lys群間で同程度であり、グリシンやL-リジンは腎機能を改善しないことが明らかになった。しかし、リジンのカルバミル化修飾体であるホモシトルリンの血漿濃度を測定したところ、Cont群に比べAde群・Gly群で上昇し、Lys群で抑制される傾向にあることが明らかになった。つまり、L-リジン投与によりカルバミル化修飾(uremic memory)が抑制されうることを明らかにした。また、Ade群・Gly群で認められていた著明な血管石灰化病変は、Lys群でほぼ完全に抑制された。さらに、Ade群・Gly群で認められた著明な骨粗しょう症様の骨病変も、L-Lys投与によりほぼ完全に抑制された。これらの結果から、L-Lys投与によりuremic memoryが解除され、骨・血管病変が改善される可能性があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ酸 L-リジンの経口投与だけで、腎不全モデル動物の血管石灰化・骨粗鬆症病変をほぼ完全に抑制できることを明らかにした点は、非常に大きな進展であると考えられる。なぜなら、腎不全患者における骨・血管病変の進展は、同患者における心血管疾患発症・進展の危険因子であると考えられており、単純なアミノ酸投与でそれらの病変を抑制できるなら、これまでの治療戦略を大きく変える可能性があるからである。 当初の予想通り、L-リジン経口投与によりリジンのカルバミル化修飾(ホモシトルリン)が抑制されることも明らかにした。L-リジンによるカルバミル化修飾抑制は腎機能の改善(つまり尿素の低下)には依存しておらず、L-リジン投与による蛋白代謝促進、あるいはカルバミル化decoyとしての遊離アミノ酸L-リジンの作用に依存していることが示唆された。カルバミル化エリスロポエチンは造血能を失い、カルバミル化低密度リポタンパク質が動脈硬化を促進することなどから、カルバミル化は蛋白質の機能不全を起こす修飾であると考えられている。我々の実験結果は、L-リジン経口投与により、カルバミル化修飾による蛋白機能不全を抑制できる可能性があることを示しており、非常に有用な知見であると考えられる。 また上記内容は、International Society of NephrologyのNEXUSシンポジウムにて発表し、best abstract賞を受賞し、国際的に高い評価を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) L-リジンによるuremic memory解除機序の詳細な検討・・・アデニンラットではL-リジン投与にて血漿ホモシトルリン濃度が低下することを確認したが、生体を構成する蛋白質のリジン残基εアミノ基に対するカルバミル化を抑制するか否かについては、未検討である。エピジェネティクスの本体であるヒストンのリジン残基修飾はカルバミル化と同じεアミノ基に生じるため、ヒストン蛋白質の修飾に着目しつつ、L-リジンによるuremic memory解除の分子メカニズムの解明を試みる。 (2) 培養細胞を用いた、カルバミル化がヒストン修飾に与える影響の検討・・・我々は計46種類の抗ヒストン修飾特異的モノクローナル抗体を保有しており、一連の抗体を用いて、尿素によるカルバミル化がヒストン修飾にどのような影響を与えるのか、培養細胞系を用いて評価する。また、各修飾変化と遺伝子発現変化の関係を明らかにするため、抗ヒストン修飾特異的モノクローナル抗体を用いてChIP-sequenceおよびiTRAQ標識質量分析を行う。 (3) 尿素負荷モデルにおける、L-リジンによるuremic memory解除の試み・・・アデニンラットモデルは血清尿素窒素が著明に上昇するモデルであるが、体内の尿素だけが上昇しているモデルではないため、本年度の結果のみで「L-リジンが尿素によるuremic memoryを解除した」と断言することはできない。このため、J Am Soc Nephrol. 2010;21(11):1852 -1857の方法に従い、片腎摘ラットに2%尿素水を飲水させることで血清尿素濃度上昇モデルを作成し、L-リジン投与によって、本当にuremic memoryが解除できるか否か、また腎・心血管病変の進行を抑制出来るか否か、組織学的・生化学的手法を用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記実験を遂行するために必要な動物購入費・動物維持管理費・試薬購入費・プラスチックおよびガラス器具類購入費として使用する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] L-lysine ameliorates vascular calcification in adenine-induced uremic rats2012
Author(s)
Akihiro Shimomura, Isao Matsui, Takayuki Hamano, Kazunori Inoue, Yoshitsugu Obi, Chikako Nakano, Yasuo Kusunoki, Yoshiharu Tsubakihara, Hiromi Rakugi, Yoshitaka Isaka
Organizer
Kidney Week 2012, American Society of Nephrology
Place of Presentation
San Diego, USA
Year and Date
20121030-20121104
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[Presentation] L-lysine ameliorates vascular calcification in adenine-induced uremic rats2012
Author(s)
Isao Matsui, Akihiro Shimomura, Takayuki Hamano, Kazunori Inoue, Yasuo Kusunoki, Chikako Nakano, Yoshitsugu Obi, Yoshitaka Isaka, Hiromi Rakugi
Organizer
ISN Nexus: Bone and the Kidney 2012, International Society of Nephrology
Place of Presentation
Copenhagen, Denmark
Year and Date
20120920-20120923
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