2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病の発症進展におけるエピジェネティック制御機構の関与と新治療戦略
Project/Area Number |
24790850
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小畑 陽子 長崎大学, 大学病院, 助教 (30404289)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 食塩感受性 / 高血圧性腎障害 / ヒストンアセチル化 |
Research Abstract |
Dahl食塩感受性ラットに8%塩分含有食投与を8週間行い、高血圧ならびに高血圧性腎障害を発症させ、腎硬化症モデルラットを作成した。高塩分食負荷8週後に採取した腎組織を用いて、マッソントリクローム染色を行ったところ、高塩分食負荷群では、糸球体硬化ならびに間質の線維化が惹起されていることを確認した。また、Type IVコラーゲン、線維芽細胞のマーカーであるfibroblast specific protein-1(FSP-1)、コラーゲン産生細胞である筋線維芽細胞のマーカーであるalpha-smooth muscle actin (alpha-SMA)の発現を免疫組織学的手法を用いて検討した。その結果、高塩分食負荷群では、通常塩分食投与群に比べて、有意に腎障害の進行とともにType IVコラーゲン陽性面積は増大し、FSP-1ならびにalpha-SMA陽性細胞数は増加していた。また、ヒストンH3のアセチル化及びメチル化動態の解析に関して、ヒストンH3K9のアセチル化並びにK27トリメチル化を検出する特異抗体を用いて免疫組織化学で検討したところ、高塩分食負荷8週後の腎組織では、通常塩分食投与群に比べて、有意にH3K9アセチル化細胞、H3K27トリメチル化細胞が増加していた。また、DNAのメチル化を5メチルシトシンに対する特異的抗体を用いて免疫組織学的に検討したところ、通常塩分食投与群と高塩分食投与群間では、その陽性細胞に有意差は認めなかった。以上より、Dahl食塩感受性ラットにおける高塩分食負荷が惹起する腎障害の進展過程にヒストンアセチル化ならびにメチル化の関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Dahl食塩感受性ラットに8%塩分含有食投与を8週間行い、腎硬化症モデルラットを作成し、これまでの報告と同様、腎障害ならびに線維芽細胞が線維化進展に関与していることを確認した。また、ヒストンのアセチル化ならびにメチル化動態についても腎障害進展とともにヒストンのアセチル化ならびにメチル化が増強していることが明らかとなり、Dahl食塩感受性ラットにおける高塩分食負荷が惹起する腎障害の進展過程にヒストンアセチル化ならびにメチル化の関与が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究結果から、Dahl食塩感受性ラットにおいて高塩分食負荷が惹起する腎障害の進展家庭にヒストンアセチル化ならびにメチル化の関与が示唆された。 今後の推進方策として、上記ラット腎硬化症モデルに薬剤によりヒストンアセチル化並びにメチル化を修飾することによって腎障害進展に与える影響を検討する。具体的にはヒストンアセチル化を抑制するクルクミンを投与し、腎障害の程度を検討する。薬剤投与によるエピジェネティック因子の変化については、ヒストン修飾動態は特異抗体を用いて免疫組織化学で、比較検討する。更に、アセチル化と線維化をつなぐ機序についても免疫組織学的手法やウエスタンブロットなどにて検討予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、引き続きヒストンアセチル化ならびにメチル化と線維化進展関連因子に注目し、引き続き免疫組織化学的手法を主体に研究を推進する。さらに定量化を行うためウエスタンブロットやreal-time RT-PCRなどの手法も交えた検証を行う。したがって前年度同様、各特異的抗体の購入や必要物品の購入が研究費の主な使用用途になると考えている。また、前年度に得られた研究結果については、国内外での学会発表や論文化も予定しており、出張旅費や論文校正費にも充てる予定である。
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