2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病の発症進展におけるエピジェネティック制御機構の関与と新治療戦略
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24790850
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小畑 陽子 長崎大学, 大学病院, 助教 (30404289)
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Keywords | エピジェネティクス / 腎硬化症 / ヒストンアセチル化 / IL-6 |
Research Abstract |
腎硬化症の発症進展には、動脈硬化とともに慢性炎症の関与も示唆されている。一方、ヒストン修飾等のエピジェネティクスは様々な疾患との関連が報告されているが、腎硬化症では明らかでない。そこで、今回我々は、腎硬化症モデルのDahl salt-sensitive rat(DS rat)を用いて、腎硬化症とエピジェネティクスの関連を検討したところ、高塩分食負荷8週後の腎組織では、通常塩分食投与群に比べて、有意にH3K9アセチル化細胞、H3K27トリメチル化細胞が増加していたことから、Dahl食塩感受性ラットにおける高塩分食負荷が惹起する腎障害の進展過程にヒストンアセチル化ならびにメチル化の関与が示唆された。その中でもヒストンアセチル化に着目し、6週齢のDS ratを(i) 正常食(NS)群、(ii) 高塩分食(HS)群、(iii) HS+ヒストンアセチル化酵素阻害剤のクルクミン(C)群の3群に分けて塩分負荷開始6週後に腎組織を採取し、形態学的変化、浸潤マクロファージ数、ヒストン修飾等を評価した。NS群と比べてHS群とHS+C群は投与開始2週後より収縮期血圧が上昇した。HS群は6週後に血清Cr値が有意に上昇したが、HS+C群は上昇が抑制された。HS群は糸球体硬化と間質線維化、マクロファージ数の増加を認め、ヒストンアセチル化も亢進したが、HS+C群では、ヒストンアセチル化が抑制され、線維化やマクロファージの浸潤も軽減した。HS群では、ヒストンアセチル化によりIL-6の遺伝子発現が増強しており、尿中IL-6の発現も増加していた。 DS ratの腎硬化症発症進展には、ヒストンアセチル化に伴うIL-6の発現増加が関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Dahl食塩感受性ラットにおける高塩分食負荷が惹起する腎障害の進展過程にヒストンアセチル化ならびにメチル化の関与が示唆された。さらに、ヒストンアセチル化により、その発現に影響を受ける因子としてIL-6が同定され、慢性炎症との関連が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究結果から、Dahl食塩感受性ラットにおいて高塩分食負荷が惹起する腎障害の進展家庭にヒストンアセチル化の関与が示唆された。DS ratの腎硬化症発症進展には、ヒストンアセチル化に伴うIL-6の発現増加が関与する可能性が示唆された。今後の推進方策として、更に、アセチル化と慢性炎症、線維化をつなぐ機序についても免疫組織学的手法やウエスタンブロットなどにて検討予定である。 次年度は、引き続きヒストンアセチル化と線維化進展関連因子に注目し、引き続き免疫組織化学的手法を主体に研究を推進する。さらに定量化を行うためウエスタンブロットやreal-time RT-PCRなどの手法も交えた検証を行う。したがって前年度同様、各特異的抗体の購入や必要物品の購入が研究費の主な使用用途になると考えている。また、前年度に得られた研究結果については、国内外での学会発表や論文化も予定しており、出張旅費や論文校正費にも充てる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、研究計画は遂行したが、端数の余剰金が発生したため、引き続き次年度の研究に必要な消耗品代に充てたいと考える 次年度の研究に必要な消耗品代として使用予定である。
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