2014 Fiscal Year Annual Research Report
慢性腎臓病の発症進展におけるエピジェネティック制御機構の関与と新治療戦略
Project/Area Number |
24790850
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小畑 陽子 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (30404289)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | エピジェネティクス / 腎硬化症 / ヒストンアセチル化 / IL-6 / クルクミン |
Outline of Annual Research Achievements |
腎硬化症の発症進展には、動脈硬化とともに慢性炎症の関与も示唆されている。一方、ヒストン修飾等のエピジェネティクスは様々な疾患との関連が報告されているが、腎硬化症では明らかでない。そこで、今回、腎硬化症モデルのDahl salt-sensitive rat(DS rat)を用いて、腎硬化症とヒストン修飾の関連を検討した。6週齢のDS ratを(i) 正常食(NS)群、(ii) 高塩分食(HS)群、(iii) HS+ヒストンアセチル化酵素阻害剤のクルクミン(C)群の3群に分けた。塩分負荷開始6週後に腎組織を採取し、形態学的変化、浸潤マクロファージ数、ヒストン修飾等を評価した。NS群と比べてHS群とHS+C群は投与開始2週後より収縮期血圧が上昇した。HS群は6週後に血清Cr値が有意に上昇したが、HS+C群は上昇が抑制された。HS群は糸球体硬化と間質線維化、マクロファージ数の増加を認め、ヒストンアセチル化も亢進したが、HS+C群では、ヒストンアセチル化が抑制され、線維化やマクロファージの浸潤も軽減した。HS群では、ヒストンアセチル化により遺伝子発現が影響を受けるものをクロマチン免疫沈降法を用いて検討したところ、IL-6の遺伝子発現が亢進しており、尿中IL-6の発現も増加していた。HS+C群では、IL-6の遺伝子発現亢進は認めず、尿中IL-6の発現も抑制されている傾向を認めた。また、クルクミンには、酸化ストレス軽減作用も報告されていることから、尿中8OHdGを調べたところ、HS群では、尿中8OHdGは増加していたが、HS+C群では増加は認めなかった。 DS ratの腎硬化症発症進展には、ヒストンアセチル化に伴うIL-6の発現増加が関与する可能性が示唆された。さらにクルクミンは、ヒストンアセチル化抑制作用を介したIL-6発現抑制並びに抗酸化作用により腎硬化症の進展を抑制する治療薬としての可能性が期待された。
|