2012 Fiscal Year Research-status Report
HMGB1の視神経脊髄炎の病態への関与の解明及び新規治療標的としての応用
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24790873
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鵜沢 顕之 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10533317)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 視神経脊髄炎 / HMGB1 / サイトカイン / モデル動物 / 多発性硬化症 / GFAP |
Research Abstract |
本研究は、炎症メディエーターとして働くHigh mobility group box 1(HMGB1)がNMO(neuromyelitis optica)の病態にどのように関与しているかを明らかにすることを目的としている。NMO 42例、多発性硬化症(MS)30例、非炎症性神経疾患(NINDs)30例の髄液中のHMGB1濃度をELISAで測定し、臨床パラメーターとの相関を検討した。髄液中HMGB1濃度はNMO(3.56±3.76 ng/ml)でMS(1.43±0.82 ng/ml)やNINDs(0.85±0.21 ng/ml)と比較して有意に上昇していた。NMOにおいてHMGB1濃度は髄液細胞数、髄液IL-6 、髄液GFAP、髄液/血清アルブミン比(QAlb)と有意な相関を認めた(P<0.01)。NMOにおいてHMGB1は中枢神経内の炎症のメディエーターとなっている可能性が考えられた。 またMSのモデル動物であるEAEを用いてHMGB1を標的とした治療が応用可能かどうかを明らかにするため、EAEマウスにHMGB1モノクローナル抗体を腹腔内投与し、EAEの血清中のサイトカイン濃度、EAEの重症度・病理所見に変化が見られるかを検討した。モノクローナル抗体投与群では重症度・病理所見が軽減し、血清IL-17の産生亢進が抑制された。抗HMGB1モノクローナル抗体はEAEの急性期において、中枢神経内のHMGB1を中和することで、炎症誘導を抑制し、重症度を軽減したと考えられた。 本年の研究により、NMOにおいて、HMGB1は炎症メディエーターとして病態に関与しており、治療標的として有用な可能性があることを明らかにした。これらの研究結果は学会・英論文での発表を行った。現在、NMOモデルマウスに対し、抗HMGB1抗体の治療効果がみられるかに関して、研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた研究は、①多症例でのNMO髄液検体によるHMGB1濃度の測定とclinical/laboratory findingsとの関連、②NMOモデルマウスを用いたHMGB1の病態への関与の病理学的検討であった。 ①は予定通り研究を進めることができ、HMGB1は炎症メディエーターとして、NMOの病態に関与している可能性があり、HMGB1はNMOの急性期の治療標的として有用な可能性があることを明らかにした。これらの結果は学会・論文発表を行った。②の前段階として、MSモデルマウスで同様の検討を行い、有効性を証明した。現在、NMOマウスでの検討を進めている。 以上より、研究は順調に経過していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的には、NMOモデルマウスへ抗HMGB1抗体を投与するなど、HMGB1を治療標的とした実験を行い、マウスの重症度や病理所見の変化を検討し、NMOの新規治療法として有用かどうか検討する。もし、抗HMGB1抗体が有効であることが証明されれば、将来的にNMOの新規治療法として応用できる可能性が示されることになる。NMOにおいてHMGB1が中枢神経内での自己免疫学的機序による炎症のtriggerになっていること、抗HMGB1抗体が治療に応用できることが判明すれば、NMO治療のみならず、多発性硬化症の治療や、さらにはSLEやリウマチなど他の自己免疫疾患の疾患の治療としても応用できる可能性があり、非常に有意義な研究であると考えている。 今のペースで研究を進めていければ十分に本研究課題の遂行が可能と考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はNMOモデルマウスにおけるHMGB1の病態への関与、NMOモデルマウス対する抗HMGB1モノクローナル抗体投与の効果を明らかにする実験を進めていく。計画ではNMOモデルマウスに使用するため、前年度に購入予定であったモノクローナル抗体、免疫染色に使用する各種試薬は本年度購入する予定である。残額は海外・国内での研究成果の発表のための交通費等に充てる予定である。
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