2012 Fiscal Year Annual Research Report
高血糖による内皮機能障害が虚血性脳障害に与える影響とその機序解明および治療法開発
Project/Area Number |
24790881
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大山 直紀 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (90622895)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 血管内皮機能 / 一酸化窒素合成酵素 / 高血糖 / 脳虚血 / OGD / Akt |
Research Abstract |
内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)は内皮機能維持の中心的役割を果たし、eNOS機能低下が虚血性脳障害増悪に深く関与していることが示されている。本研究では高血糖や虚血による脳血管のeNOS機能への影響についてヒト脳毛細血管内皮細胞(HBMEC)培養系を用いて評価した。通常糖濃度および高糖濃度条件下でHBMECにおける総eNOS蛋白発現量やリン酸化蛋白発現量(Ser633 Ser1177, Thr495)、eNOS uncoupling、酸化ストレスを評価したところ、両濃度条件下でこれらの指標に有意な差は認められなかった。次に虚血病態を模したoxygen-glucose deprivation(OGD)条件下での糖濃度の違いによるeNOS機能を評価したが、両者の間で有意差はなく糖濃度差によるeNOS機能への影響はないことが示唆された。一方、OGD16時間直後のeNOS-Ser1177,eNOS-Ser633脱リン酸化やeNOS-Thr495リン酸化は顕著であり、再酸素化によりeNOS-Ser1177リン酸化、eNOS-Thr495脱リン酸化が促進された。また、これらの動きはAkt-Ser473リン酸化と平行していた。そこでOGD中の各eNOSリン酸化動態を詳細に検討したところ、OGD6時間後よりeNOS-Ser1177, eNOS-Ser633脱リン酸化、eNOS-Thr495リン酸化促進が観察された。Akt-Ser473リン酸化状態はeNOS-Ser1177,eNOS-Ser633リン酸化状態と平行して動いていた。一方、AMPK-Thr172はOGD3時間でリン酸化がピークとなりeNOSリン酸化動態と一致していなかった。一般的にeNOSリン酸化に関与するとされるAkt, AMPK, PKへ各々の阻害剤(LY294002, Compound C, H89)を使ってOGD下におけるeNOSリン酸化への影響を評価したところ、Akt阻害剤のみがeNOSリン酸化動態に対して影響を与えていた。以上から、虚血中では脳血管内皮細胞におけるeNOS機能は顕著に低下し、この動態にはAktの強い関与が示唆された。よってAkt活性を修飾するような薬剤が虚血下でのeNOS機能維持や改善に有用である可能性がある。
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