2012 Fiscal Year Research-status Report
血液神経関門を標的とした免疫性末梢神経疾患の病態解明と新規治療の開発
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24790886
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
清水 文崇 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90535254)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 多国籍 |
Research Abstract |
平成24年度は多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者血清が血液神経関門(BNB)を構成する血管内皮細胞に及ぼす影響を解析した。この研究をすすめる上で病的状態における血液脳関門(BBB)破綻メカニズムを理解する必要があったため,視神経脊髄炎患者血清と糖尿病性細小血管障害の原因物質として有力視されているAGEsを我々が樹立したヒトBBB in vitroモデルに作用させ,それらのBBB破綻メカニズムを明らかとした。次に,我々が樹立したヒトBNB由来血管内皮細胞株(PnMECs)にMMN患者血清を作用させ,PnMECsのバリアー機能に及ぼす影響を解析した。MMN患者血清14例をPnMECsに作用させるとPnMECsのtight junction関連蛋白であるclaudin-5の発現が低下し,電気抵抗値(TEER)が低下した。すなわち,MMN患者血清がBNB機能を破綻させることが明らかとなった。さらに,患者血清中に含まれる液性因子の中でBNB機能を破綻させる物質の同定を試みた。MMN患者血清中にはBNB構成血管内皮に対する自己抗体が存在し,その自己抗体がPnMECsのclaudin-5の発現を低下させ,TEER値を低下させることで,BNB機能を破綻させていることが明らかとなった。一方で,MMN患者血清中に含まれるVEGFを中和抗体を用いて阻害するとPnMECsのBNB機能が増加した。MMN患者血清をPnMECsに作用させるとPnMECsが放出するVEGF量が増加することが明らかとなった。これらのことより,MMN患者血清中に含まれる液性因子が,BNB構成内皮からautocrineに放出されるVEGFを増加させることによりBNBを破綻させることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者血清がBNB破綻をきたす分子メカニズムの解明を目指した。まず,MMN患者血清がBNBを破綻させることを分子レベルで明らかとした。次に,MMN患者血清中に含まれる液性因子の中でBNB破綻に大きく関わる物質の候補として,BNB構成内皮に対する自己抗体とBNB構成内皮からautocrineに放出されるVEGFが同定された。MMN患者血清がBNB破綻をきたす分子メカニズムが解明でき,研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)患者血清が血液神経関門(BNB)を破綻させる分子メカニズムを解明する。CIDPは臨床症状や末梢神経伝導検査での脱髄病変の分布によりtypical CIDP (t-CIDP), MADSAM, DADSに大別される。このCIDPの臨床病型を規定しているのは,血液神経関門(BNB)の破綻様式の違いであるという仮説がある。本年度は,我々が樹立したヒトBNB構成内皮細胞に各病型CIDP患者の血清を作用させ,細胞生物学的見地からこの仮説を検討することを目的とする。具体的には我々が樹立したヒトBNB構成内皮細胞株(FH-BNBs)を用いて,山口大学と千葉大学で入院し,臨床症状,電気生理学的所見より診断確定したCIDP患者26例(t-CIDP13例,MADSAM10例,DADS3例)の血清と健常成人10例の血清をFH-BNBsに作用させ,バリアー機能の指標となるclaudin-5蛋白量と電気抵抗値を測定する。さらに,BNB破綻の程度とCIDPの臨床パラメーター(Hughes grade, MRC score, 罹病期間, IVIg/ステロイド反応性,髄液所見,末梢神経伝導検査所見)の相関を検討する。また,それぞれのCIDP患者でBNB破綻を生じる分子メカニズムが異なるかを細胞生物学的見地から検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養液や細胞培養用ディッシュなどの細胞培養のための消耗品,ウエスタンブロッティングや免疫細胞化学による解析のための抗体,VEGF, TNF-α,IL-6, TGF-βなどのサイトカインに対する中和抗体,患者血清中のサイトカイン濃度を測定するためのELISAキット,患者血清からIgG分画を精製するためのアフィニティーカラムを複数購入する。研究成果をいち早く臨床の現場にフィードバックするため,国内外での学会発表のための旅費と論文作成のための英文校正の費用を計上する。
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