2014 Fiscal Year Research-status Report
制御性T細胞特異的レトロウイルス発現によるHAM免疫異常発症機構に関する研究
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24790898
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
新谷 奈津美 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80440353)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HTLV-1 / HTLV-1関連脊髄症(HAM) / Tax / IFN-γ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)は、CD4+ヘルパーT(CD4+ Th)細胞に持続感染するレトロウイルスであり、感染者の一部に脊髄の慢性炎症を特徴とするHTLV-1関連脊髄症(HAM)を引き起こす。その病態の特徴は、感染細胞に起因した過剰な免疫応答による脊髄炎症と考えられている。我々のこれまでの研究から、HTLV-1がCD4+ Th細胞中の制御性T細胞(Treg)に主に感染することを明らかにし、Treg中でHTLV-1機能遺伝子Taxを発現することが、Tregから炎症促進的な異常細胞への分化転換を誘導すると共に、Tregの機能転化が生体の免疫恒常性破綻の起因となり異常な免疫応答を引き起こすことでHAM発症の重要な引き金となると予想した。そこで本研究では、HAMにおける免疫異常発症機構の解明を目的にTreg特異的Tax発現ノックインマウスを作製し解析を行った。 樹立したマウスは、全TregにおいてTaxを発現する場合は、早期に全例致死となるが、一部のTregにおいてTaxを発現するマウスでは、耳介の皮膚炎症状と共に、尾部の皮膚潰瘍、耳介のレイノー現象や壊疽といった血管炎に見られる表現型が観察されたことから、平成26年度は、これら組織の病理学的解析を実施した。その結果、皮膚潰瘍部における活発な炎症細胞浸潤および繊維芽細胞の増生が認められると共に、神経周囲性の浮腫や線維化が観察されたが、血管炎の所見は得られなかった。また、免疫細胞における各種サイトカイン産生能の解析を実施した結果、コントロールに比べTreg特異的Tax発現マウス由来細胞ではTNF、IFN-γの炎症性サイトカインの産生上昇が確認された。よって、Treg特異的Tax発現マウスでは、炎症性サイトカイン産生能の亢進が誘導されており、そのような免疫状態が尾部の潰瘍や耳介の炎症の発生に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Treg特異的Tax発現マウスに特徴的な表現型を明らかにし、異常が観察された組織の病理学的解析を実施した。また、本マウスより単離した免疫細胞を用いたサイトカインの産生能変化の解析を行い、Treg特異的Tax発現に特徴的な炎症性サイトカインの産生亢進を明らかとした。平成24年7月~平成25年7月まで産前・産後休暇、育児休業取得により一定期間研究を中断しているが、進行状況はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに詳細な炎症サイトカイン産生細胞の同定とTax発現Treg細胞の機能変化の解析を進める。また、自己免疫疾患モデルに対する本マウスの抵抗性について検討するため、7-10週齢のTreg細胞特異的Tax発現マウスを用いて実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスを作製し、症状の進行および病理組織像を解析し、Treg細胞におけるTaxの発現とそれに伴うTreg細胞の分化転換によるEAEの発症と進行に対する影響を症状スコアおよび病理組織学的解析を行う。これらの解析結果をまとめ研究総括を行う。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] The E3 ligase synoviolin controls body weight and mitochondrial biogenesis through negative regulation of PGC-1β.2015
Author(s)
Fujita H, Yagishita N, Aratani S, Saito-Fujita T, Morota S, Yamano Y, Hansson MJ, Inazu M, Kokuba H, Sudo K, Sato E, Kawahara KI, Nakajima F, Hasegawa D, Higuchi I, Sato T, Araya N, Usui C, Nishioka K, Nakatani Y, Maruyama I, Usui M, Hara N, Uchino H, Elmer E, Nishioka K, Nakajima T.
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Journal Title
EMBO J
Volume: 34(8)
Pages: 1042-1055
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Mogamulizumab, an anti-CCR4 antibody, targets human T-lymphotropic virus type 1-infected CD8+ and CD4+ T cells to treat associated myelopathy.2015
Author(s)
Yamauchi J, Coler-Reilly A, Sato T, Araya N, Yagishita N, Ando H, Kunitomo Y, Takahashi K, Tanaka Y, Shibagaki Y, Nishioka K, Nakajima T, Hasegawa Y, Utsunomiya A, Kimura K, Yamano Y.
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Journal Title
J Infect Dis
Volume: 211(2)
Pages: 238-248
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] HLVL-1 induces a Th1-like state in CD4+CCR4+ T cells.2014
Author(s)
Araya N, Sato T, Ando H, Tomaru U, Yoshida M, Coler-Reilly A, Yagishita N, Yamauchi J, Hasegawa A, Kannagi M, Hasegawa Y, Takahashi K, Kunitomo Y, Tanaka Y, Nakajima T, Nishioka K, Utsunomiya A, Jacobson S, Yamano Y.
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Journal Title
J Clin Invest
Volume: 124(8)
Pages: 3431-3442
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] HTLV-1によるHTLV-1関連脊髄症(HAM)病原性T細胞の発生機構の解析.2014
Author(s)
新谷奈津美, 佐藤知雄, 安藤仁, 外丸詩野, Ariella Coler-Reilly, 八木下尚子, 山内淳司, 長谷川温彦, 神奈木真理, 田中勇悦, 宇都宮與, 山野嘉久.
Organizer
第1回日本HTLV-1学会学術集会
Place of Presentation
東京都(港区)〔東京大学医科学研究所〕
Year and Date
2014-08-22 – 2014-08-24
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[Presentation] HTLV-1関連脊髄症(HAM)患者登録システム「HAMねっと」の患者満足度調査.2014
Author(s)
八木下尚子, 有福厚孝, 菊池崇之, 木村未祐奈, 佐藤健太郎, 石川美穂, 鈴木弘子, 小池美佳子, 齊藤祐美, 新谷奈津美, 佐藤知雄, 木村美也子, 高田礼子, 山野嘉久.
Organizer
第1回日本HTLV-1学会学術集会
Place of Presentation
東京都(港区)〔東京大学医科学研究所〕
Year and Date
2014-08-22 – 2014-08-24
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