2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞周期調節因子p21の未知の糖代謝制御機能の解明
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24790912
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 みどり 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (20383804)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | p21 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
p21は細胞周期を調節する主要な因子であるが、肥満モデルマウスの脂肪細胞および肝細胞では細胞周期はG0期であるにも関わらず、p21の発現が亢進している。これまでの研究から、培養脂肪細胞におけるp21の過剰発現はインスリンによる糖取り込み能を低下させ、またp21欠損マウスは高脂肪食負荷時にインスリン抵抗性を呈しにくいことが判明している。さらに、培養脂肪細胞において、p21の既知のターゲット分子として知られているCDKs(cyclin-dependent kinases)阻害作用を持つ複数の化合物によってもインスリン刺激による糖取り込みが減少することを確認している。そこで平成24年度においては、p21とインスリン抵抗性の関係を明らかにする初めのステップとしてCDKsに注目し、CDKsのノックダウンベクターの作成を行った。p21がターゲットとするCDKsにはcdk1、cdk2、cdk4が知られているが、その中でも脂肪細胞においてはcdk2とcdk4の発現が比較的高い。そこでマウスのcdk2とcdk4のmRNAを標的としたsiRNA(cdk2i、cdk4i)の候補配列をsiDirect2アルゴリズムにて各4種類ずつ設計し、U6プロモーター下にそれぞれのsiRNA配列を持ったshRNAを発現させるノックダウンベクターを作成した。またHAタグ付きマウスcdk2、cdk4発現ベクターも作成し、それら発現ベクターと各ノックダウンベクターを共トランスフェクトした293細胞のタンパク質を用いてHA抗体にてイムノブロットを行いノックダウン効率の確認を行った。その結果、効果的にマウスcdk2、cdk4をノックダウンできるsiRNA配列を各2種類ずつ得ることができた。現在、それらの配列を用いてノックダウンアデノウィルスベクターを作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画としては、脂肪細胞でのCDKsとインスリン抵抗性の関連を調べるために必要なマウスのcdk2、cdk4をノックダウンさせることのできるsiRNA配列候補の選定と、それらの配列を用いたノックダウンアデノウィルスベクターの作成であった。siRNA配列候補の選定にはsiDirect2アルゴリズムを用い、U6プロモーター下にそれぞれのcdkに対して各4種類ずつのsiRNA配列を持ったshRNAを発現させるノックダウンベクターを作成した。それらと同時に作成したHAタグ付きマウスcdk2、cdk4発現ベクターを共トランスフェクトした293細胞のタンパク質を用いてHA抗体にてイムノブロットを行いノックダウン効率の確認を行った結果、高効率にマウスcdk2、cdk4をノックダウンできるsiRNA配列を各2種類ずつ得ることができた。この結果から、脂肪細胞でのCDKsとインスリン抵抗性の関連を調べるために必要なマウスのcdk2、cdk4をノックダウンさせることのできるsiRNA配列候補の選定という目標は十分に達成できたと言える。また、脂肪細胞でのノックダウンの方法としてU6プロモーター下でshRNAを発現させるアデノウィルスベクターを感染させる方法が適しているため、クロナーゼ反応を介したゲートウェイ法を用いて上記で選定されたshRNAを組み込んだノックダウンアデノウィルスベクターの作成も進めており、現在マウスcdk2、cdk4に対する各2種類のノックダウンアデノウィルスベクターの大量増殖とその精製を行なっている。このことからノックダウンアデノウィルスベクターの作成という計画目標に関しても十分に達成できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降の研究実施計画としては、平成24年度の研究にて得られたマウスcdk2i、cdk4iアデノウィルスベクターを用いてCDKsノックダウン培養脂肪細胞でのインスリン抵抗性の検討を行っていく。具体的には、まず初めに平成24年度に得られたマウスcdk2i、cdk4iアデノウィルスベクターの力価の厳密な測定をTCID50 (50% Tissue Culture Infectious. Dose) 法を用いて行う。次に、力価の定まったアデノウィルスベクターを3T3-L1脂肪細胞に感染させ、細胞内のcdk2、cdk4のmRNAとタンパク質をリアルタイム定量的PCRならびにイムノブロットにて確認し、高効率にノックダウンさせることのできる各アデノウィルスベクターの力価を決定する。そして、cdk2、cdk4がノックダウンした3T3-L1脂肪細胞を用いて、インスリン刺激による糖取り込みの測定を3Hラベルされた2-Deoxy-D-glucoseを用いて行う。その際、インスリンによる糖取り込みに変化が見られた場合、インスリンシグナルに関わるAktやErkのリン酸化についてもウェスタンブロッティング法により検討を行う。さらに脂肪細胞におけるグルコーストランスポーターであるGlut4やGlut1、その他の糖取り込みに関わる分子の発現量なども併せて調べる予定である。また、cdk2、cdk4がノックダウンされた3T3-L1脂肪細胞においてインスリンによる糖取り込みに変化が見られなかった場合、p21がインスリン抵抗性に関与するメカニズムとして、cdk2、cdk4以外のCDKsの関与について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用用途としては、平成24年度に引き続いて、アデノウィルスベクターの大量増殖と精製の為の消耗品の購入、さらに平成25年度より新たに行う研究として、脂肪細胞培養と糖取り込みの測定、細胞内のmRNAとタンパク質を解析する為のリアルタイム定量的PCRならびにイムノブロットなどがあり、それらに用いる試料の購入などを計画している。具体的には、アデノウィルスベクターを増殖させるためには293細胞にアデノウィルスベクターを感染させる必要があるのだが、本研究に用いるためのマウスcdk2i、cdk4iそれぞれ2種類ずつのノックダウンアデノウィルスベクターを大量に得るには、1つのアデノウィルスベクターにつき293細胞を15cmディッシュ20枚とかなりのスケールで培養する必要があり、そのための培地や培養ディッシュが大量に必要となる。さらに、293細胞内で増殖したアデノウィルスベクターを回収し純度高く精製するためにゲルろ過カラムを用いなければならない。また、培養脂肪細胞での糖取り込みの測定のためには3Hラベルされた2-Deoxy-D-glucoseを用いる必要がある。糖取り込みの測定と同時に、細胞内のmRNAの発現量を解析することを計画しており、その検出系としてはリアルタイム定量的PCRを行う予定であるが、各遺伝子に対応するプライマーやリアルタイム定量的PCR用の試薬が必要となる。また、mRNAと併せて細胞内のタンパク量を解析することを計画しており、その検出系としてはイムノブロットを考えているが、解析するタンパク質に応じて抗体を入手することが必要である。
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Research Products
(1 results)