2013 Fiscal Year Research-status Report
サイトカインLECT2の糖尿病性血管障害における役割解析
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24790938
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Research Institution | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
Principal Investigator |
奥村 彰規 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (90392357)
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Keywords | LECT2 / 糖尿病 |
Research Abstract |
糖尿病および糖尿病性細小血管障害の発症・進展において、血中のLECT2濃度がどのように変化するかについて検討するために、昨年度に引き続き、ヒト血清を用いたLECT2のELISA解析を行った。LECT2については、これまで健常人の血中濃度が把握できておらず、そのため、臨床的因子との関連についてすら明らかにされていない。そこで、健常人血清の解析から関連する臨床的因子を探索し、どのような疾患に関連するかを検討した。健診受診者のうち、年齢、感染、服薬、罹病歴を参考に231名(男113名、女118名)を選抜し、血清中のLECT2濃度を改変ELISA法により測定した。得られた血清LECT2濃度は、正規分布に従い、性別や年齢による差は認められなかった。一方で、BMIやウエスト身長比などの肥満指標と正の相関関係を見出した。次に、生化学検査結果のうちで肥満・脂質代謝に関連する因子について、LECT2を従属変数として多重回帰分析を行った結果、男性ではγ-GTP、中性脂肪、年齢と、女性ではHOMA-R、尿素窒素、HDLコレステロール、γ-GTPが有意に関連する因子として抽出された。以上の結果より、非糖尿病被験者群において、LECT2は新規の肥満関連因子であることが判明した。肥満は2型糖尿病と深く関連しており、次年度以降で糖尿病および糖尿病性細小血管障害とLECT2との関連をより詳細に検討する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度にLECT2遺伝子欠損マウスおよびLECT2遺伝子過剰発現マウスを導入するための委員会の承認と、提供元のマウスの確保に大幅な遅れが生じたため、遺伝子改変マウスの繁殖・維持系統の確立に費やす時間が大幅にかかった経緯がある。特に初年度は実験に供することができなかったため、昨年度の報告通り、本年度の夏より遺伝子改変マウスの検討が開始出来た状態である。そのため、当初予定していたマウスを使用した研究内容については大きく遅延し、予定を変更せざるを得ない事態となっている。一方で、当初の予定に加えてヒト血清を使用した検討が可能となったため、マウスのみの研究に比べて大きく発展している点である。このヒト血清解析の結果で予想を覆す結果が生じ、現在は予備的結果であるものの、当初予定していた糖尿病性腎症よりも別の糖尿病性細小血管障害に大きくウェイトを置いた研究へシフトしてLECT2の役割解析を行うことになっている。また初年度にはLECT2タンパク質の安定化に、亜鉛イオンの結合が必要であることを明らかにした点、2年度目にはヒト血清でELISA測定を可能にし、肥満との相関を見出したという点で、それぞれ学会発表を行い、査読つき学術論文に掲載されたことでLECT2の生理活性解明に大きく貢献していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病の細小血管障害についてLECT2がどのように関与するかについては、糖尿病患者血清を用いた解析により現在見出されつつある。最終年度として、その解析を進めて取りまとめることを第一目標とする。次に、LECT2遺伝子改変マウスについては、糖尿病モデルの実験に着手しており、糖尿病および糖尿病性細小血管症について順次解析していく予定である。さらに、リコンビナントLECT2と培養細胞を使用した機能解析も進行中であるため、継続して行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスの解析に遅れが生じており、細胞・組織の網羅的解析用に計上していた予算について執行できなかったため。 細胞・組織の網羅的解析用として執行予定であるが、当初の予定であった解析ソフトウエアについては予算減額もあり、予算を大幅に超える価格であるために細胞購入および試料調製の試薬代として使用する計画である。
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Research Products
(5 results)