2012 Fiscal Year Research-status Report
アンジオテンシン受容体結合因子による高血圧治療の開発
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24790950
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
涌井 広道 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (10587330)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高血圧 / レニンーアンジオテンシン系 / 受容体 / 腎尿細管 |
Research Abstract |
平成24年度は,病的刺激による血圧調節における腎尿細管ATRAPの機能的意義に着目し,gain-of-function in vivo strategyにより,腎尿細管ATRAP高発現による高血圧抑制効果について検討した。 申請者は,腎尿細管ATRAP高発現トランスジェニックマウス(ATRAP-TGマウス)を作製し,野生型C57BL/6マウス(WTマウス)およびATRAP-TGマウスにosmotic pumpを用いてアンジオテンシンII(Ang II)を持続皮下投与し, 負荷前とAng II負荷期間における血圧および脈拍をradiotelemetry法で測定した.AngII投与期間中,metabolic cageを用いて, 体重, 食餌摂取量, 飲水量,尿量およびナトリウム排泄量を計測し, また各々の腎臓における電解質トランスポーターの発現をRT-PCR法およびwestern blot法で評価した. その結果,ATRAP-TGマウスでは,負荷前ではWTマウスと比較して血圧,脈拍に有意差を認めなかったが,Ang II負荷開始後には, WTマウスと比較して,ナトリウムバランスの低下とともに血圧上昇の抑制がみられた. さらに,腎での電解質トランスポーター発現は, WTマウスと比較して,ATRAP-TGマウスではAng II負荷によるNCCのリン酸化とENaC発現増加が抑制された. 以上より,腎尿細管におけるATRAP高発現は,生理的なAT1受容体情報伝達系活性には影響を与えずに,病的刺激下に生じるAT1受容体系の過剰活性化を抑制し,腎尿細管電解質トランスポーター/尿中ナトリウム排泄系の制御を通じて高血圧の発症を抑制している可能性が明らかにされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
『組織局所におけるATRAPの発現あるいは活性が,高血圧および高血圧関連臓器障害の発症・進展に関与し,ATRAPの発現制御により高血圧および高血圧関連臓器障害を制御できる』という仮説において,平成24年度に着目した腎尿細管でのATRAPが,生理的なAT1受容体情報伝達系活性には影響を与えずに,病的刺激による血圧上昇を劇的に抑制することを明らかにした.これは世界初めての報告であり,その研究成果はHypertension誌(米国心臓協会)6月号に掲載予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
『組織局所におけるATRAPの発現あるいは活性が,高血圧および高血圧関連臓器障害の発症・進展に関与し,ATRAPの発現制御により高血圧および高血圧関連臓器障害を制御できる』という仮説において,血管平滑筋および中枢神経のATRAPにも着目し,各組織におけるATRAPの高血圧抑制効果を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請者はSM22α/taglinプロモーターをもちいて血管平滑筋特異的ATRAP過剰発現マウスの作製に成功している.この血管平滑筋特異的ATRAP過剰発現マウスをもちいて,食塩負荷,AngII負荷による血圧変動とともに,血管肥大,血管での酸化ストレスや動脈硬化を検討する.さらに大動脈を単離してフェニレフリン,AngII,アセチルコリンなどの血管作動薬に対する収縮・弛緩反応を検討する.これらの検討によって,血管平滑筋におけるATRAPの高血圧抑制効果を生体レベルで明らかにする.物品を安価に購入できたため繰越金が生じた.なお,次年度繰越分は血管作動薬購入に充てる予定である.
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