2012 Fiscal Year Research-status Report
移植片対宿主病の早期診断を可能とするバイオマーカーの探索
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24790960
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
栗田 尚樹 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30555561)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | GVHD / Notch / 同種造血幹細胞移植 |
Research Abstract |
移植片対宿主病(GVHD)は早期診断に苦慮することが多い。申請者は、GVHDの早期診断に最適なバイオマーカーを見出す過程で、特にNotch分子に着目した。また移植後にGVHD標的臓器上のNotchリガンドを介してエフェクターT細胞が活性化され、GVHD発症に関与するという仮説を立て、これを証明するための研究を遂行した。 申請者は(株)三菱化学メディエンスとの共同研究として、筑波大学附属病院における同種造血幹細胞移植患者血球上のNotch分子の発現を、大規模かつ網羅的にフローサイトメトリーで解析できるシステムを構築した。このシステムは、日常診療として行われるフローサイトメトリー解析の際に、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、NK細胞に分けてNotch分子各サブタイプの発現をルーチンに解析できる。これにより、移植後のNotch分子の発現パターンが明らかとなり、またGVHDの発症前後、およびGVHDを発症した患者と発症しなかった患者間で比較することが可能となる。 その結果、CD4陽性T細胞,CD8陽性T細胞にはNotch分子の発現を認めなかったが,CD56陽性NK細胞上にNotch1分子の弱い発現を認めた.移植1ヶ月後では,骨髄移植症例にて有意にNK細胞上のNotch1分子の相対蛍光強度が強かった.これに対し,移植2ヶ月後,3ヶ月後では,臍帯血移植症例のNK細胞で有意にNotch1分子の相対蛍光強度が強く,それ後経時的に減弱した.また全検体でNotch2,Notch3分子の蛍光強度の増強を認めなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の計画通りに進展しており、順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
GVHDを再現できる同種異系マウス造血幹細胞移植モデルを作製し、GVHDの重症度を定量的に検出する方法を確立する。異なるMHC分子を有するマウスどうしを用いた造血幹細胞移植では、移植後早期(移植後5日から10日)に運動能力の低下、体重減少、下痢を認めるようになり、移植後10日から20日にGVHDで死亡する。申請者は、MHC classIとしてH-2dを持つBALB/c マウスをレシピエントとして致死量の放射線を照射し、MHC classIとしてH-2bを持つC57BL/6マウスをドナーとして造血幹細胞移植モデルを構築する。ドナーの大腿骨から骨髄液を採取し、そのうち骨髄細胞1×107個をレシピエントマウスの尾静脈より移植する。その結果生じるGVHD(脱毛、姿勢異常、体重減少、下痢)を数値化することで、GVHDの重症度を定量的に比較する。 また、このGVHDマウスモデルを用いて、Notch受容体・リガンドに対する中和抗体を投与し、出現した急性GVHDの程度を定量的に解析する。T細胞の活性化に最も関与するNotch受容体・リガンドのサブタイプに関して、それらを阻害する中和抗体を、GVHDマウスモデルに対して1回につき100mg、1週間毎に計10回を尾静脈より投与する。コントロールIgを投与したマウスを陰性コントロールとし、また全てのNotchシグナルを抑制するγセクレターゼ阻害薬を投与したマウスを陽性コントロールとする。これらのGVHDマウスモデルにおける急性GVHDを定量的に比較することで、各サブタイプに対する中和抗体による急性GVHDの抑制効果を実験的に証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究試薬(500千円)、マウス購入(600千円)、培養ガラス・プラスチック製品(500千円) 計1600千円
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