2012 Fiscal Year Research-status Report
急性転化慢性骨髄性白血病に対する新規分子標的療法の構築
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24790962
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 智彦 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (90553694)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 白血病幹細胞 |
Research Abstract |
CML-BCモデルを作製する予備実験として、造血幹細胞マーキングマウスであるEvi1-GFPノックインマウスにBCR-ABLを導入したEvi1レポーターCML-CPマウス、及びCML-CPモデルマウスであるp210 BCR-ABLトランスジェニックマウスとEvi1-GFPノックインマウスを交配したEvi1レポーターCML-CPトランスジェニックマウスの解析を行い、Evi1陽性細胞は未分化なLSK分画にあり、幹細胞活性が高いことを明らかにした。Evi1レポーターCML-BCマウス(BCR-ABL遺伝子とNUP98-HOXA9遺伝子の共強制発現による)の解析により、CPモデルと異なり、より分化したLK分画にEvi1陽性細胞が多く存在し、Evi1陽性細胞が高い白血病原性を持つことを明らかにした(投稿中)。CML-BCにおけるEvi1経路の重要性を示すために、当初Evi1コンディショナルノックアウトマウスによるCML-BCモデルの作製を試みたが、CreERシステムとタモキシフェンによるEvi1欠失効率が悪く、その代わりにEvi1ヘテロノックアウトマウスによるCML-BCモデルを作製した。CML-BCはドナー細胞としてEvi1野生型及びヘテロ型双方の骨髄細胞から発症を認めた。Evi1野生型もしくはヘテロ型CML-BC白血病細胞を連続骨髄移植したところ、野生型CML-BCが全例移植可能であったのに対し、ヘテロ型CML-BCではCML-BCを発症することができなかった。これより、Evi1発現を50%に低下させることでCML-BCの病勢を弱めることがマウスモデルで明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記BCR-ABL+NUP98-HOXA9によるCML-BCモデルの白血病幹細胞(Evi1高発現LK細胞)は、CML-CPモデルの白血病幹細胞(Evi1高発現LSK細胞)に対して約2倍のEvi1発現量を示した。Evi1ヘテロノックアウトマウスを用いたCML-BCモデルの解析からEvi1経路の重要性が示されたので、Evi1高発現細胞での高い白血病原性のメカニズムを探るために、各モデルにおけるEvi1高発現細胞と低発現細胞で有意に発現が異なる遺伝子を定量PCRで調べたところ、RNA結合タンパクをコードするMsi2遺伝子がEvi1高発現細胞で約2倍の発現量を示した。Msi2はAML幹細胞において重要であるという知見からも、CML-BC幹細胞においても重要である可能性が非常に高いと考えられる。新規分子標的となりうる他因子についても現在解析を進めている。現在までは、明らかな分子標的を絞るところまでは到達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
急性転化慢性骨髄性白血病(CML-BC)において白血病幹細胞性を持つEvi1高発現細胞のメカニズムを明らかにするために、Evi1高発現細胞特異的なシグナルの抽出およびCML-BC幹細胞特異的な治療の検証を行う。Evi1高発現CML-BC細胞と低発現細胞の遺伝子発現パターンを解析し、CML-BCにおけるEvi1高発現に寄与するシグナルを抽出する。そのシグナルを抑制することでin vitro、in vivoでのCML-BCへの治療効果を検証する。CMLへの分子標的薬であるイマチニブとの併用効果についても検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費は以下の目的に使用する。上記推進方策のように候補遺伝子の絞り込みを行い、それぞれに対するsiRNAを作製し、阻害剤とあわせて治療効果を検証する。Evi1高発現CML-BC細胞株であるK562、MOLM1、KU812に上記分子もしくは薬剤を導入・添加することでin vitroにおけるアポトーシス誘導能を検証する。同時にイマチニブとの併用による効果も同様の系で検証する。その後、in vivoでの効果を検証するためにCML-BC細胞にsiRNAを導入して骨髄移植を行う。細胞株での結果と併せて、必要に応じてイマチニブとの併用効果もin vivoで検証する。候補遺伝子を抑制するために新規抗体もしくは低分子化合物の合成が必要であれば東京大学薬学部の協力で合成する。
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