2012 Fiscal Year Research-status Report
mTOR複合体1による白血病幹細胞自己複製維持メカニズムの解明
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24790967
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
星居 孝之 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (20464042)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 白血病幹細胞 / mTOR |
Research Abstract |
本年度はmTORC1欠損AML細胞のリン酸化プロテオーム解析から得られたデータを基に、急性骨髄性白血病(AML)細胞においてmTORC1依存的にリン酸化変動するmTORC1下流候補分子の機能スクリーニングを行った。リン酸化変動の認められた分子について、shRNAを用いたノックダウン実験を行い、in vitroとin vivoの両者でAML細胞の増殖に必須な分子にリン酸化変動が生じていることを見出した。また、mTORC1欠損によって幹細胞維持に関わるFOXOが活性化しているかどうかを検討するため、mTORC1欠損AML細胞におけるFOXOの細胞内局在を解析し、mTORC1欠損細胞においてFOXOが活性化していることを示すデータを得た。この細胞内局在変化は幹細胞様の表現型を示す生体内の細胞で顕著であったことから、mTORC1の抑制に伴い、生体内の微小環境によってFOXOが活性化されることが細胞の生存に重要であることが示唆された。また、shRNAを用いたFOXO3aの発現抑制はAML細胞の分化を誘導し、mTORC1欠損と組み合わせることで相乗的にAML細胞の増殖を抑制した。以上の結果から、mTORC1欠損時のAML細胞の生存に、FOXO3aの活性化が関与することが強く示唆された。またこれに伴い、In vivoでのmTORC1欠損時におけるFOXOの機能を評価するモデルの樹立を試みており、今後このモデルを用いてin vivoでの機能を明らかにすることにより、白血病幹細胞の生存メカニズムの解明が進展することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた、①mTORC1欠損AML細胞を用いたリン酸化プロテオーム解析の結果を基に、リン酸化変動分子の機能スクリーニング、②mTORC1欠損時における転写因子FOXOの役割とmTORC1を介した制御機構の解明、③mTORC1欠損時のmTORC2の役割の解明のそれぞれの課題において、研究を進展させることが出来た。 ①リン酸化プロテオームにおいて変動の認められた分子を候補分子とし、shRNAを用いた機能スクリーニングを行い、in vitroのAML細胞の増殖に影響する分子の絞り込みを行った。一部ではin vivoでのAML発症に対する役割も評価し、AMLの増殖・生存に機能する分子を見出した。 ②mTORC1欠損時にFOXO3aの核局在を解析すると共に、shRNAによるFOXO3aのノックダウンから、mTORC1欠損時のFOXO3aの機能について解析を行った。In vitroでの評価では、既に報告されているようにFOXO3aのノックダウンによるAML細胞の分化誘導効果が認められ、mTORC1欠損と組み合わせることで、有意にAML細胞の増殖を抑制することが出来た。一方で、in vivoではこのshRNAを用いて、長期的に効率よくFOXO3aの発現抑制を行うことが出来なかったため、今後は別のモデルを用いてFOXO3aの機能解析を行う予定である。 ③FOXO3aと同様にshRNAを用いたin vivoでの評価が困難であったため、Rictorノックアウトマウスを供与して頂き、Rictorの欠損可能なAMLモデルの樹立を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
リン酸化プロテオームの解析結果から、既に候補分子のリン酸化変動部位は同定されている。mTORC1下流候補分子のリン酸化部位変異蛋白を作製し、リン酸化による細胞内局在、細胞内機能、白血病細胞自己複製に対する役割を明らかにする。 FOXOに関しては、mTORC1欠損細胞におけるin vivoでの機能解析を中心に研究を進める。まず、in vivoでのFOXOの機能を解析するために必要な遺伝子改変マウスは導入済であることから、Raptot欠損マウスと交配を進め、mTORC1欠損下でFOXOの機能を解析するためのマウスモデルの樹立を行う。また既に樹立してあるmTORC1欠損AML細胞にdominant-negative formのFOXO3aを導入し、mTORC1抑制下におけるFOXO3aの役割を明らかにする。 mTORC2の機能解析については、コンディショナルにRictorを欠損できるAML細胞をレシピエントマウスに移植し、in vivoにてRictorを欠損させることにより、mTORC2の機能解析を行う。またmTORC1とmTORC2を共に欠損できるAMLモデルを樹立し、各単独欠損モデルと比較して、AMLの治療において、両者を同時に抑制することの意義を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究期間を通じて、実験動物維持に関わる消耗品費用が必要となる。造血幹細胞・白血病幹細胞の取得には、抗体、試薬、プラスチック類の消耗品費用が必要であり、その費用を申請する。またシグナル伝達経路の解析にも、抗体や試薬、消耗品の費用が必要となるため、申請する。 本研究分野は日進月歩の分野であり、国内外の研究の動向を把握することが必須である。そこで、初年度と二年目に国内旅費を申請する。二年目には情報収集と成果発表を兼ねて、外国旅費を申請する。また研究成果の論文発表に必要な外国語論文の校正並びに投稿料を申請する。
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Research Products
(9 results)