2012 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチにおける病的滑膜線維芽細胞の起源の同定と治療応用の検討
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24790994
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
溝口 史高 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60510360)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 滑膜線維芽細胞 / 幹細胞 |
Research Abstract |
関節炎において滑膜組織に存在する活性化した病的な滑膜線維芽細胞の起源が(1)骨髄などに由来する血球系前駆細胞、(2)間葉系前駆細胞、のいずれかであるかについて明らかにするため以下の実験を開始した。まず(1)の血球系前駆細胞に由来する可能性について明らかにするため、野生型マウスにGFPトランスジェニックマウスより採取した骨髄細胞を移植し関節炎の誘導を行った。関節組織にGFP陽性の非血球系細胞を認めた場合は、関節炎において骨髄の血球系細胞に由来する間葉系細胞が滑膜組織に形成されたことを示すものであり、現在組織学的評価を進めている。 また、血球系由来の線維芽細胞前駆細胞である線維細胞に注目し、その関節炎の病態への関与についても検討を行った。これまでマウスを用いた線維細胞の同定や培養は難しいとされていたが、培養条件の検討を行うことにより効率よく線維細胞を誘導する方法を確立した。また関節炎モデルマウスの脾細胞より誘導した線維細胞は正常マウスに比べて誘導効率が高いことを確認した。 また(2)の間葉系前駆細胞に由来する可能性について検討するため以下の検討を行った。まず、間葉系幹細胞株を様々なサイトカインの存在下で培養し、関節リウマチにおいて滑膜線維芽細胞に発現し病態に関与することが知られている複数の分子の発現の変化について検討を行った。更に、このような炎症性サイトカイン存在下で培養した間葉系幹細胞の生体内での働きを明らかにするため、これらの細胞を関節炎モデルマウスに経静脈的に投与したところ、特定の条件において関節炎が悪化することを観察した。投与した細胞がどのように関節炎の悪化に関与しているのかにつき明らかにするため、GFPを恒常的に発現する間葉系幹細胞株を樹立した。 上記の様に、平成24年度は必要な実験系の確立を行うとともに、病的滑膜線維芽細胞が形成される機序を示唆する結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
GFPトランスジェニックマウスを用いた、骨髄移植による血球系前駆細胞由来の線維芽細胞を同定するための実験においては、平成24年度中にGFP陽性細胞を組織学的に検討し、さらに単離・培養することによりその細胞の特徴を明らかにする予定としていたが、遺伝子改変マウスの準備と骨髄移植の条件検討に時間を要し、組織学的観察までの遂行にとどまった。更に、関節局所において観察されたGFP陽性細胞が血球系細胞であるか、もしくは間葉系細胞であるかを厳密に区別するとは本実験において重要であるが、既存の方法ではその区別がしばしば困難であった。この対策として、新たにI型コラーゲンのプロモーターの下流でGFPを発現するColI-GFPマウスを用いて同様の実験を行うこととした。これにより骨髄由来の間葉系細胞を同定することは可能になると考えられるが、さらにマウスの準備に時間を要することとなった。実験自体は当初の予定よりは遅れることとなったが、本実験遂行の上で必要な実験系を確立することができ、平成25年度に当初の目的を達成する予定にて研究を進めることは可能と考えている。 また、間葉系前駆細胞に由来する可能性を検討する実験においては、当初は遺伝子改変マウスを用いたLineage tracingの実験を予定しており、共同研究にてマウスの作成・繁殖を進めたが、マウスの系統を樹立するには至らなかった。したがって、バックアッププランとして考えていた、間葉系幹細胞株を用いた細胞培養系での検討と、関節炎モデルマウスに対する移入実験を開始し、その準備に時間を要することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
病的滑膜線維芽細胞の起源が血球系前駆細胞である可能性について検討するため、GFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞を移植したマウスに関節炎を誘導するモデルの解析を継続する。更にColI-GFPトランスジェニックマウスを用いて同様の実験を進め、骨髄由来間葉系細胞の有無を明らかにする。その存在が明らかであった場合には、GFP陽性細胞を関節より単離・培養し、その細胞の機能と、発現する分子の特徴を明らかにする。 線維細胞の実験では、正常マウスと関節炎マウスより線維細胞を誘導し、培養条件化にて刺激に対する応答性や発現分子の違いについて明らかにする。更に、線維細胞の関節炎の病態における関与や生体内での働きを明らかにするため、ColI陽性細胞にジフテリアトキシン受容体を発現させ、ジフテリアトキシンを投与することにより線維細胞を欠損したマウスを作製し、関節炎を誘導することにより、その働きを明らかにする。 (2)間葉系前駆細胞の関与については、平成24年度に作成したGFPを恒常的に発現する間葉系幹細胞株を用い、様々な炎症条件下で培養した細胞を関節炎モデルマウスに投与することにより、炎症下での間葉系幹細胞の挙動と病態への関与を明らかにする。 これらの検討により病的な滑膜線維芽細胞の前駆細胞を同定するとともに、前駆細胞から病的滑膜線維芽細胞への分化や、関節局所への遊走を担う分子を同定し、それらを標的とした治療の可能性につき検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記研究計画に示すように、本研究では関節炎のモデルマウスを用い、血球系細胞や間葉系細胞をそれぞれ標識し、さらに特定の細胞種の移入や生体内で欠損させるモデルにより病的な滑膜線維芽細胞の前駆細胞の同定・局在・病態への関与や機能の解析を行うことが中心となる。従って平成25年度は実験動物に関連する費用に多くの予算を計上した。 更に、組織学的に前駆細胞を同定し、その細胞に発現する分子を解析するため、抗体の購入のための費用も計上した。 更に、同定した細胞の機能は細胞培養にて解析を行う予定としており、培養関連試薬の費用を計上した。細胞培養においては、様々な炎症による応答性を明らかにするため、サイトカインをはじめとする組み換えタンパクを購入する費用も計上した。
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