2012 Fiscal Year Research-status Report
滑膜細胞増殖関連因子SPACIA1複合体による遺伝子発現制御機構の解明
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24791009
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
小松 梨恵 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (80517475)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 滑膜炎 |
Research Abstract |
SPACIA1は、関節リウマチの主徴の一つである滑膜細胞の異常増殖に着目した先行研究で同定された滑膜細胞増殖関連因子である。これまでに私たちは、SPACIA1の過剰発現マウスを用いたコラーゲン誘導関節炎モデルにおいて、SPACIA1は少なくとも関節炎の増悪因子であることを明らかにしてきたが、その詳細は明らかになっていない。 1. SPACIA1複合体の生化学的精製 私たちは、SPACIA1の分子機序を明らかにするため、SPACIA1複合体を分離同定する精製条件の検討を行った。その結果、DEAEカラムによるイオン交換クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーを組み合わせることによってSPACIA1複合体を含むタンパク質精製画分を得た。各精製画分中のSPACIA1は、作成済みのSPACIA1抗体によるウエスタンブロッティングにて検出した。タグを用いたアフィニティー精製については順調に進んでおらず、改良法を検討中である。 2. SPACIA1が関与する滑膜細胞増殖機構の解析 培養滑膜細胞中のSPACIA1遺伝子を発現抑制した際のマイクロアレイ解析の結果をリアルタイムPCR法で確認した。G1期細胞増殖関連因子のmRNAの発現レベルを定量的に解析した結果、SPACIA1の発現抑制により、CDK6の発現のみが有意に半減することを確認した。SPACIA1によるCDK6の転写調節、転写後調節について検討したが、プロモーター活性の変化は認められなかった。一方、SPACIA1発現抑制によりCDK6 mRNAの分解が促進し、SPACIA1はCDK6 mRNAの安定性を制御していることが明らかとなった。またCDK6自体の滑膜細胞増殖における重要性について、既報のCDK6 siRNAを用いて検討したが他因子への副作用が大きく評価が困難であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. SPACIA1複合体の生化学的精製 当初、効率よく多量にタンパク質を得る精製源として、タグ付きのSPACIA1タンパク質を恒常的かつ大量に発現するヒトがん細胞株を用いる予定であった。しかし、SPACIA1タンパク質の安定条件が細胞株によって異なる可能性が生じたため、精製源として滑膜細胞を用い、SPACIA1タンパク質複合体を含む精製画分を得た。 2. SPACIA1が関与する滑膜細胞増殖機構の解析 SPACIA1の発現抑制によるCDK6の遺伝子発現およびタンパク質発現の低下を細胞レベルにおいて明らかにし、SPACIA1がCDK6のmRNA安定性を制御していることを特定した。CDK6分子そのものが滑膜細胞増殖に与える影響評価に用いた既報のCDK6 siRNAでは、同時に他のG1期細胞増殖関連因子の発現も抑制することが判明したため、新たなsiRNAを用いて検討する必要があるが、細胞増殖のアッセイ系は確立することができた。なお、in situ ハイブリダイゼーションは次年度に実施予定である。 以上の理由から、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. SPACIA1複合体の生化学的精製 タグを用いたアフィニティー精製については改良法を検討し、効率よく多量に安定したSPACIA1タンパク質複合体を得ることを目指す。具体的には、SPACIA1がCDK6 mRNAの安定性を制御する因子であることを明らかにしたので、mRNAの安定化剤としてDTTなどの還元剤やタンパク合成阻害剤のシクロヘキシミド、既知の滑膜細胞増殖因子による刺激などを検討する。当該年度までに確立した条件下にてSPACIA1複合体を精製し、ショットガン質量分析法により結合因子の同定を目指す。同定した因子については、細胞レベルで結合因子の確認を行い、SPACIA1との相互作用を明らかにする。 2. SPACIA1が関与する滑膜細胞増殖機構の解析 当該年度に特定したSPACIA1の制御するCDK6の遺伝子発現ステップ(mRNA安定性の制御)における機能について、「1. SPACIA1複合体の生化学的精製」で特定するSPACIA1結合因子とともに複合体としての解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでにSPACIA1の発現抑制によるCDK6の遺伝子発現およびタンパク質発現の低下とその制御機構について細胞レベルでその重要性を示してきたが、マウス個体レベルにおいても実証する予定であった。当該年度はSPACIA1複合体の精製条件の検討に想定以上の時間を要したため、次年度にCDK6のin situ ハイブリダイゼーションを行い、組織化学的な解析を行う。個体レベルでもCDK6の発現に変化が認められれば、SPACIA1による滑膜細胞増殖機構において重要な遺伝子であることが強く示唆することができる。SPACIA1タンパク質複合体の精製法についても、更なる検討を進めていく予定である。
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