2012 Fiscal Year Research-status Report
ループス腎炎に対する抗Kim-1抗体の治療効果について
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24791012
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
野崎 祐史 近畿大学, 医学部, 講師 (90411595)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Kim-1 |
Research Abstract |
①ヒト腎組織検体、尿検体を使用した実験として 当科における腎生検検体を使用しループス腎炎(LN)、その他の慢性腎臓病、健常人群に分けて尿中Kim-1測定や生検組織においてKim-1発現を免疫染色にて定量化した。それらの発現と臨床的疾患活動性(SLEDAI)やループス腎炎組織における活動性(Activity,chonicity index; Austin HA III,et al. Am J Med 75: 382-391, 1983)を評価しKim-1発現との相関性を検討することでSLEにおいてKim-1発現を抑制することは疾患活動性を低下させうるのではないかと考えた。LN32例(男性7名、女性25名、平均年齢 41.4歳)で腎生検所見にてISN/RPS分類で評価し、activity/chronicity indexを評価した。免疫染色にて尿細管(t)-Kim-1発現、ELISA法にて尿中(u)-Kim-1を測定した。またt-Kim1+と腎組織にて糸球体、尿細管障害程度との相関や血清学的疾患活動性パラメーターとの相関も検討した。 ②マウス実験として 今回我々は新しい生物学的製剤の可能性を持つ抗Kim-1抗体(順天堂医学部 免疫学教室 八木田先生から供与)をLNモデルマウスとして確立しているMRL-Faslprマウスに3ヶ月齢から6ヶ月齢まで週2回腹腔内投与した。毎月24時間蓄尿にて蛋白尿を測定し、さらに6ヶ月齢で処分し、脾臓・腎臓・リンパ節を抽出し、検体として保存した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結果 ①ISN/RPN分類IV型では、他型に比べt-Kim-1+細胞数やu-Kim-1量は増加しておりSLEDAI, chronicity indexやメサンギウム細胞増殖、糸球体硬化、半月体形成、間質繊維化の程度と相関を示していた。血清補体価、抗ds-DNA抗体価, activity indexとは相関を示さなかった。t-Kim-1+細胞数とu-Kim-1量は相関を示していた。以上からKim-1発現は糸球体・尿細管障害と相関しており、Kim-1 moleculeを抑制することはLNの進展を抑制する可能性が示唆された。 ②抗KIM-1抗体投与群ではマウス6ヶ月齢にて生存率はコントロール群(ratIgG投与)に比べ有意に改善し、蛋白尿も改善を認めた。腎組織にて糸球体・尿細管障害程度の改善 CD4, 8, 68, B220の炎症細胞浸潤数の減少及び脾細胞のサイトカイン産生低下(IFN-γ, IL-2, IL-17A)を認めた。糸球体免疫グロブリン沈着も低下を認めた。 ヒト腎生検・尿検体を用いた実験結果は仮説を裏付ける結果を得られた。この結果はインパクトファクターを保有する海外雑誌に投稿中である。また、ループスモデルマウスにおいて抗Kim-1抗体を投与することで仮説を裏付ける結果として生存率の改善、蛋白尿、腎炎の改善を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
抗Kim-1抗体を投与することでどのようにして腎炎を改善するのかというテーマを検証することが課題であり、今後の推進方策である。現在までで判明している結果として腎組織にて糸球体・尿細管障害程度の改善、CD4, 8, 68, B220の炎症細胞浸潤数の減少及び脾細胞のサイトカイン産生低下(IFN-γ, IL-2, IL-17A)を認めた。糸球体免疫グロブリン沈着も低下を認めた。さらにリンパ節から抽出した細胞を刺激することでIL-10陽性細胞が抗Kim-1抗体添加群にて増加することが判明している。以上のことから抗Kim-1抗体は以前から報告のあるregulatory T-cellに影響があるだけでなく、regulatory B-cellにも影響を与え腎炎の改善に寄与している可能性が示唆された。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
再度、抗Kim-1抗体を投与するためにMRL-Fas(lpr)マウスを購入する予定である。 特殊免疫染色(foxp-3, NF-kappaB, Cleaved caspase-3など)施行し、腎組織における細胞への影響を検討するために各種抗体を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)