2012 Fiscal Year Research-status Report
黄色ブドウ球菌感染症をコントロールする緊縮制御ネットワークの総括的解明
Project/Area Number |
24791029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
片山 由紀 順天堂大学, 医学部, 助教 (60365591)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 緊縮応答 / ppGpp / 薬剤耐性 / 病原性 |
Research Abstract |
研究目的: 黄色ブドウ球菌感染症の「薬剤耐性と病原性をコントロールする緊縮制御ネットワークの全貌」を分子レベルで解明する。細菌には潜在的に機能を発現するシステム“緊縮応答”があるが、その機能は未だ分からない。しかし今年、申請者らは、この緊縮応答が黄色ブドウ球菌の薬剤耐性化に関与している可能性を見出した。また、この緊縮応答は病原性にも重要な役割を担っていると報告されたが、まだその経路がはっきりしていない。そこで、この緊縮応答を含む緊縮制御ネットワーク機構を明らかにすれば、黄色ブドウ球菌の化学療法と感染制御に新しい概念が生まれ、将来必ず感染治療学に貢献できるので申請した。 研究実施計画: 1)緊縮応答(図2)を担う3遺伝子(rshA, rshB, rshQ)とrpoB 遺伝子の緊縮応答への影響を明らかにする。(rshA, rshB欠損変異株を作成済み)2)ppGpp合成による、代謝経路、薬剤耐性化と病原性発現の変化(図2)を明らかにする。3)マイクロアレイ解析による遺伝子発現プロファイリング、全ゲノム塩基配列決定とSNP解析。4)緊縮応答レベル/薬剤耐性/病原性のデータを集積してそれらの相関性を解析し、ネットワーク全貌を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA ポリメラーゼβサブユニットをコードするrpoB遺伝子は、緊縮制御ネットワークの関連遺伝子である。細菌は栄養飢餓でアミノ酸が欠乏すると、タンパク合成が停止し、ppGpp を合成する。そしてこの合成されたppGpp がRNA ポリメラーゼβサブユニットやそのプロモーター領域に結合すると、遺伝子における転写活性が質と量の両面で変化し、その結果、病原性、薬剤耐性化および代謝経路の変化が生じることがわかりつつある。 申請者らは、黄色ブドウ球菌のさまざまなrpoB 遺伝子の変異株を用いてppGpp を検出したところ、変異株においてppGpp の産生量が増加していることがわかった。さらにこのrpoB 遺伝子の変異により、菌の表現型が変わり、増殖速度の低下、自己融解酵素の活性化、薬剤耐性化が認められた。増殖速度の低下からsmall colony varoant (SCV) 形成能に関与する可能性があり、今後検討する。また、抗生物質βラクタム剤、バンコマイシン、リネゾリド、ダプトマイシンの耐性化も見られ、それと相関して細胞壁の肥厚、自己融解酵素の活性化が見られたので、これらの代謝に関わるメカニズムに関与している事が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)黄色ブドウ球菌の緊縮応答を担う3つの遺伝子(rshABQ)の機能を明らかにする。 (1)これら遺伝子の欠損株、過剰発現株を構築し(既に一部作成した)、緊縮応答の活性レベルを測定し検討する。緊縮応答の活性測定方法はすでに確立しており、制御分子のppGpp, GTP, ATP等の核酸修飾体の定量・定性分析により検討する。(2)各々の変異株をアレイ解析による転写(発現)プロファイリングを行い、緊縮応答による代謝経路の変化を検討する。薬剤耐性化、病原性、グローバル調節遺伝子のどの経路に関与しているか解明することができる。マイクロアレイ、SNP解析を使用して検討する。 2)ppGpp合成による、代謝経路、薬剤耐性化と病原性発現の変化を明らかにする。申請者らは、既に黄色ブドウ球菌の耐性化と病原性発現レベルに関わる様々な同質遺伝的変異株(isogenic mutant)を構築してきた。(変異株の種類:多剤耐性に関与する遺伝子やグローバル調節遺伝子群、薬剤耐性獲得に関与する遺伝子、免疫系を攪乱する免疫攪乱遺伝子群、病原性遺伝子群、薬剤選択株。(1)これら膨大な変異株を使用して、緊縮応答活性レベルを検討する。(2)各々の変異株をアレイ解析による転写(発現)プロファイリングは既に行った。(1)で得られた緊縮応答活性レベルと比較し代謝経路の変化を検討する。特に病原性/薬剤耐性に関与する調節遺伝子にフォーカスする。(3)薬剤耐性/病原性の表現型の検討方法(既に確立されている)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
作成した変異構築株の表現型を解析する。ppGpp 合成変化の認められた薬剤選択変異株について、変異個所を検出する。 1)薬剤耐性:MIC測定による薬剤感受性プロファイリング、薬剤耐性化に伴う細胞壁肥厚の電子顕微鏡観察、自己融解酵素活性の測定。 2)病原性:バイオフィルム形成能、Small Colony Variant (SCV)形成能、宿主感染細胞への影響(殺菌力)、宿主への定着性の検討。 3)アレイ解析、全ゲノム塩基配列の決定とSNP 解析。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Genomic Basis for ß-lactam Resistance in Staphylococcus aureus2013
Author(s)
Keiichi Hiramatsu, Teruyo Ito, Sae Tsubakishita, Takashi Sasaki, Fumihiko Takeuchi, Yuh Morimoto, Yuki Katayama, Miki Matsuo, Kyoko Kuwahara, Tomomi Hishinuma, and Tadashi Baba
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Journal Title
Infection and Chemotherapy (Korea)
Volume: submitted
Pages: 未確定
DOI
Peer Reviewed
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