2012 Fiscal Year Research-status Report
TLR3リガンドによる分泌型IgA抗体誘導メカニズムの解明
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24791035
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
相内 章 国立感染症研究所, インフルエンザウイルス研究センター, 研究員 (10572133)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 感染症 / 経鼻インフルエンザワクチン / 合成二本鎖RNA / アジュバント |
Research Abstract |
本研究課題において、平成24年度は主に「合成二本鎖RNA Poly(I:C)とviral dsRNA によるCD8陽性樹状細胞のTLR3 を介したIFN λ 産生の比較検討」を行うことを計画した。 マウスの骨髄細胞をFlt3-ligand 存在下で培養すると、試験管内においてCD8陽性ならびに陰性の樹状細胞および形質細胞様樹状細胞(pDC)を誘導することが可能であるとの文献をもとに、CD8陽性樹状細胞の誘導を試みた。Flt3-ligandによる誘導ではCD8陽性樹状細胞の誘導効率が低いことが明らかとなり、当初計画した実験は諦めざるを得ない結果となった。そこで、マウスの臓器からCD8陽性樹状細胞を精製し、試験管内で合成二本鎖RNA刺激による応答を検討することに予定を変更した。本研究で標的とするのは、上気道領域に存在するCD8陽性樹状細胞ではあるが、鼻腔粘膜領域、鼻咽頭粘膜関連リンパ組織(NALT)、頸部リンパ節あるいは脾臓におけるCD8陽性樹状細胞の存在比率を、文献等をもとに単離・精製法と共に検討した。この結果、ナイーブなマウスでは脾臓においてCD8陽性の樹状細胞が少ないながらも存在することが明らかになった。現在、脾臓から単離・精製したCD8陽性樹状細胞に関して、試験管内においてTLR3のリガンドである合成二本鎖RNA、TLR7やTLR9のリガンド、インフルエンザウイルスによる1型IFN(IFN-α、β、λ)の発現・産生を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、参考文献をもとに骨髄細胞から樹状細胞の誘導を行うことで、試験管内でのCD8陽性樹状細胞を用いた解析が可能なものと考えていた。しかしながら、CD8陽性樹状細胞の誘導効率は実際には低いことが判明した。これに伴い、マウス骨髄細胞に対するFlt3-ligandの添加量あるいは誘導時間等の検討、もう一つの樹状細胞誘導サイトカインであるGM-CSFの添加によるCD8陽性樹状細胞の誘導効率の検討を行った。また、ナイーブマウスの各組織からCD8陽性樹状細胞を直接単離・精製する手段を検討した。上述の理由により、当初計画した計画から大きく遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ナイーブマウスの脾臓から単離・精製したCD8陽性樹状細胞を用いて、試験管内でTLR3のリガンドである合成二本鎖RNA刺激、あるいはインフルエンザウイルス添加によるIFN-λをはじめとする1型IFN応答を解析する(現在進行中)。 さらに、BALB/cマウスおよびBALB/cバックグラウンドTLR3 KOマウスを用いて、Poly(I:C)を粘膜アジュバントとした経鼻インフルエンザワクチン接種ならびにインフルエンザウイルス上気道感染実験を行う。この実験において、平成24年度の検討により確立・習得した各組織における樹状細胞の解析法を用いて、経鼻ワクチン接種あるいは感染による各樹状細胞サブセットの割合の変動を解析すると同時に、in vivoでのIFN-λをはじめとする1型IFN応答を検討する。 また、上気道粘膜上皮自体がIFN-λの産生源となることを示唆する論文が発表されたため、マウス上気道粘膜上皮細胞の初代培養系を導入することで、粘膜上皮細胞による合成二本鎖RNA刺激(経鼻ワクチン接種)あるいはインフルエンザウイルス添加によるIFN-λ等サイトカインの産生能を解析する。 上述の実験から得られる結果は、合成二本鎖RNAを粘膜アジュバントとする経鼻インフルエンザワクチン接種による分泌型IgA抗体の誘導機構を明らかにする知見となり得ると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の実験において必要となる、マウスの購入(KOマウスに関しては、繁殖・維持費用を含む)、CD8陽性樹状細胞を精製するための試薬、フローサイトメーターに用いる抗体各種、1型IFNを含む各種サイトカイン定量用のELISAキット等を購入のために使用する予定である。さらに、平成25年度に新たに導入する予定であるマウス上気道粘膜上皮細胞の初代培養に必要な培地ならびに試薬等を購入する予定である。
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