2013 Fiscal Year Annual Research Report
学童期自閉症スペクトラムにおけるオキシトシン関与の解明
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24791047
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
八ツ賀 千穂 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (80368919)
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / オキシトシン / MRI |
Research Abstract |
自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状として、社会性やコミュニケーションの問題が挙げられる。オキシトシン(OXT)ホルモンが社会性に関わることは言われていたが、近年OXT投与によるASD症状の改善が報告され始めた。また、情動に関わる扁桃体とOXT受容体の関連性も指摘されている、しかし、ASDと診断された学童においてMRIとOXTを統合して探究した研究は未だ少ない。そのため、今回の研究ではASDと診断された学童14名(ASD群)及び定型発達学童13名(TD群)の①認知検査及び質問紙によるASD重症度質問紙、②末梢血におけるOXT血中濃度及びOXT受容体遺伝子多型測定、③頭部MRIにおける脳容量測定を行い、関連性の解明を試みた。 その結果、ASD群で有意に脳右楔前部の小ささが見られ、なおかつその程度はASD重症度と相関を認めた。一方、OXT濃度やOXT受容体遺伝子多型では、2群比較において有意差は見られず重症度とも相関性はなかった。しかし、OXT濃度と右扁桃体容量に相関はみられ、濃度が高いほど容量が大きいという結果がみられた。 遺伝子多型に群間差がなく遺伝子多型と濃度に関係性が見られなかったことから、測定の失敗や被験者数の少なさの可能性も否定できない。しかしOXT濃度と扁桃体容量に相関性がみられたことより、測定は正当と考える。また、右楔前部は過去にASDとの関連が既に報告されていることより、被験者数の少なさが解析に強く影響しているとは考えにくい。よって今回の結果からはOXTとASDには直接の因果関係はないと推測された。 末梢OXT濃度は必ずしも中枢の状態を反映しているとは言えず、直接の指標としては適切とは言い難い。しかし、TD群とASD群で比較した際OXT濃度と扁桃体容量の相関値が大きく異なっていたことは、OXT投与が二次的にASD症状を改善させることとの関連性を示唆する。
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