2012 Fiscal Year Research-status Report
Ph陽性急性リンパ性白血病に対するCD19抗原特異的遺伝子改変T細胞療法の開発
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24791050
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
齋藤 章治 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (10623762)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 免疫細胞療法 / 急性リンパ性白血病 / 遺伝子改変T細胞療法 / キメラ抗原受容体 / CD19抗原 |
Research Abstract |
トランスポゾン遺伝子導入法によってCD19CAR遺伝子は30%程度のT細胞に導入されていることが明らかとなった。また、低濃度血清下で腫瘍細胞株を一切使用しない培養系において、10ml由来の末梢血から平均で7.5x10e7個のT細胞を得ることに成功した。 上記の培養系において作製したCD19CAR-T細胞はPh+ALL細胞に対し、特異的かつ強い細胞障害活性を有することが明らかとなった。また、このCD19CAR-T細胞はPh+ALL細胞の刺激により1週間で約7倍に増殖するとともに、CD19CARの発現強度も一過性に増幅し、刺激前と比較して最大で3倍程度までその発現が強まることが明らかとなった。 さらにこのCD19CAR-T細胞とチロシンキナーゼ(TKI)高度耐性株3株を含む7つのPh+ALL細胞株を1週間混合培養し、CD19CAR-T細胞の長期的な抗腫瘍効果について、フローサイトメトリーを用いて評価を行った。共培養1週間後、CD19CAR-T細胞は非常に低いeffector/target比(E/T比=1:5, 1:10)において、TKI高度耐性株3株を含む7株すべてをフローサイトメトリーで検出できないレベルまで減少させることが明らかとなった。また、一部の細胞株に対しては、極めて低いE/T比(=1:50, 1:100)でも、Ph+ALL細胞を著明に減少させることが可能であることが明らかとなった。 CD19CAR-T細胞が上記のようにPh+ALLに対し強い抗腫瘍効果を持つ背景を探るため、Ph+ALL細胞表面の副刺激分子に着目しフローサイトメトリーで解析を行った。その結果、Ph+ALLではTKI耐性株3株を含む7株すべてにおいて副刺激分子が高いレベルで発現している事が明らかとなった。この結果は、Ph+ALLのT細胞療法に対する感受性の高さを示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
piggyBacトランスポゾン法を用いてCD19CARをT細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入されたT細胞は低濃度血清下で、腫瘍細胞株フリーの培養系を用いて培養した。この実験系において健常のドナー3人から安定したCD19CAR-T細胞の培養に成功した。また、作製したCD19CAR-T細胞はPh+ALL細胞に対し、特異的かつ強力な細胞障害活性を持つことを明らかにした。また、In vitroの実験系において、このCD19CAR-T細胞は非常に低いEffector/Target比(1:5,1:10)においても、1週間の混合培養の後にほぼ完全にPh+ALL細胞を除去できることを明らかにした。従って、「研究の目的」であるpiggyBac導入法によるCD19CAR-T細胞の開発と、CD19CAR-T細胞のPh+ALL細胞に対する有効性を明らかにすることについては、ほぼ達成されたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ヒトPh+ALLマウスモデルを用いた抗腫瘍効果の評価 CD19CAR-T細胞のin vivoにおける抗白血病効果を、TKI耐性株を含む7つのPh+ALL細胞株を移植した免疫不全マウスにより解析する。具体的には、免疫不全(NOG)マウスにヒトT315I変異陽性TKI耐性株3株を含む7つのPh+ALL細胞を移植し、ヒトPh+ALLマウスモデルを作製する。移植後3日目のPh+ALLマウスにCD19CAR-T細胞を輸注し、移植後14日目の残存腫瘍量をin vivoイメージング法およびbcr-ablキメラ遺伝子に対する定量的PCR法を用いて解析する。さらに、CD19CAR治療を受けたPh+ALLマウスの生存期間を解析する。 2)安全性の評価 4週間以上in vitroで培養したCD19CAR-T細胞、およびCD19CAR-T細胞の移植後3か月経過したNOGマウスの末梢血を用いて、安全性の確認実験を行う。(a) 研究支援者の中沢らが先に報告したゲノム網羅的解析法を用いてCD19CAR遺伝子の挿入部位を同定し、癌原遺伝子内あるいはその近傍への遺伝子挿入頻度を明らかにする(b)Biomed-2 multiplex PCR法を用いたT細胞受容体のクロナリティー解析を行う。 3)自殺遺伝子を利用した遺伝子改変T細胞療法の安全性の向上 申請者が所有するHSV-TK自殺遺伝子(抗ウイルス剤ガンシクロビル存在下でヒト血球にアポトーシスを誘導できる)を、internal ribosome entry site(IRES)配列を利用してCD19CARと共発現できるトランスポゾンベクターを構築する(pIRII-CD19CAR-HSVtk)。完成したCD19CAR/HSV-TKベクターをT細胞に導入し、CD19CARの機能の維持とガンシクロビル添加時の遺伝子改変T細胞のアポトーシス誘導を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.前年度未使用額が生じた状況 当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額(43,897円)が生じた。 2.次年度の研究費使用計画 次年度の研究費は前年度未使用額を含め、in vivoの実験のためのNOGマウス購入、CAR-T細胞の作成および解析のための遺伝子導入試薬、リンパ球培養培地、抗体の購入に使用する。また、本研究で得られた成果を発表するため日本血液学会等の学会参加旅費に使用する。
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[Presentation] CD19-specific T-cell therapy for refractory Philadelphia-chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia using PiggyBac transposon-based gene modification and low autoserum-containing, but xeno-free and tumor cell line-free culture system2012
Author(s)
Shoji Saito, Yozo Nakazawa, Miyuki Tanaka, Ryu Yanagisawa, Kazuyuki Matsuda, Yasuhiro Maeda, Takeshi Inukai, Kanji Sugita, Kenichi Koike
Organizer
Annual Meetings of American Society of Gene Therapy
Place of Presentation
Philadelphia, PA
Year and Date
20120516-20120519
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