2012 Fiscal Year Research-status Report
鉄が誘導するアポトーシスに着目した肉眼的血尿を伴う急性腎傷害の病態解明
Project/Area Number |
24791061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
貝藤 裕史 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (60457067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 急性腎不全 |
Research Abstract |
小児IgA腎症に高頻度に合併する「肉眼的血尿を伴う急性腎障害(MH-AKI)」は、IgA腎症の腎予後に直結する重大な病態である。にもかかわらずその病因や治療法は未だ何ら明らかになっていない。まず申請者はこれまでに当施設で経験したMH-AKIの腎生検組織標本をすべて再評価し、その組織学的特徴につき検討を行った。その結果、組織傷害の主座は尿細管上皮細胞で、IgA腎症の本態をなす糸球体病変とは相関しないことを明らかにした。これを受けて申請者は、尿細管間質障害の病因として、ヘモグロビン中に含まれる「鉄」に着目し、当施設で経験したMH-AKIの腎生検組織を用いて鉄染色を行った。その結果、対照例および正常尿細管細胞では全く染色されないのに対し、MH-AKI例では傷害を受けた尿細管細胞内で強く染色されることを明らかにした。すなわち、(1)MH-AKIの臨床的、および病理学的特徴(原疾患との関連)、(2)MH-AKIと鉄との関連(鉄染色を用いた病理学的評価)、(3)MH-AKIとアポトーシスとの関連、(4)尿細管細胞における過剰鉄とアポトーシスとの関連、(5)尿細管細胞における血液暴露とアポトーシスとの関連、(6)培養細胞を用いた、MH-AKIに対するアポトーシス阻害薬や鉄キレート薬の効果、に関する研究である。本年度は主に、(1)および(2)に関する検討を行った。まず、MH-AKIを呈したヒトの腎生検残余検体を用い、ヘモグロビンスカベンジャーであるM2型マクロファージのマーカーであるCD163の免疫染色を行った。CD163は鉄陽性細胞の周辺に集簇がみとめられた。現在、鉄とアポトーシスの関与(上述3)に関する研究を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、MH-AKIとアポトーシスとの関連について検討を行っている。これは申請書に記した計画とほぼ同等の進行である。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点ではほぼ予定通りに研究が進行している。またその結果も、研究計画の変更を要するものではない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、既存の研究用備品、あるいは試薬その他の消耗品を用いた研究、また臨床用検体を用いた研究が中心となり、かつ研究成果を学会等で発表する機会がなかったことから、研究計画時に予定した予算より少額での研究遂行が可能であった。ただし次年度は、アポトーシス関連遺伝子に関する網羅的遺伝子解析や、培養細胞を用いたin vitro再現実験を予定している。また、得られた成果を国内および国外の学会で発表する予定である。そのため、研究計画時に予定した予算より多額の資金を要すると考えている。
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