2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791062
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大坪 裕美 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (60568806)
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Keywords | フィブロネクチン腎症 / 遺伝性腎症 / 慢性腎臓病 / 腎不全 / フィブロネクチン |
Research Abstract |
フィブロネクチン(FN)腎症は常染色体優性の遺伝性腎疾患として1995年に初めて報告された。症状は蛋白尿、顕微鏡的血尿、高血圧を特徴とし、その後、慢性腎炎様の経過をたどり、発症から約15年の経過で末期腎不全に至る。しかし、現在、有効な治療法は存在しない。診断は臨床像と病理学的所見にてなされ、遺伝子検査はほとんど行われていないのが現状である。その為、本疾患の遺伝子変異と表現型の相関について報告はなく、発症機序もいまだ明らかになっていない。2007年に本症の責任遺伝子としてFN1遺伝子が同定され、3種類の変異が同定されている。また変異株より作成された蛋白を用いた機能解析では、変異株はいずれもポドサイトへの接着能が低下することが確認された。FN1遺伝子変異が存在すると、FN assemblyが障害され、糸球体基底膜の構成に利用されるべき可溶性FNの利用障害が起こり、不溶性FNと可溶性FNのバランスが崩れ、糸球体に可溶性FNが沈着するのではないかという仮説が立てられている。今回、我々は、FN腎症患者におけるFN1遺伝子変異について明らかにすることを目的とし、FN腎症の遺伝学的検討を行った。対象は、病理学的にFN腎症と診断されている家系の患者およびその家族で方法は、末梢血リンパ球からゲノムDNAを抽出し、PCRおよび直接シークエンス法を用いてFN1遺伝子の解析を行った。また、蛋白尿出現時期について、Kaplan-Meier法を用いて、解析した。結果、FN腎症患者において新規の変異を4種類発見したとともに、そのうち1つは従来変異がみられていたヘパリン結合部位ではなく隣のインテグリン結合部位であった。次に、FN腎症の疾患発症機序を解明することを目的とし、同定し得た変異遺伝子の蛋白発現を行い、ELISA法や免疫染色法を用いて変異蛋白の機能解析を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内のFN腎症症例の遺伝子解析は終了している。患者の遺伝子解析データから、FN1遺伝子内部のヘパリン結合部位とインテグリン結合部位について各々独立に機能解析を行う必要が生じたため、当初の予定よりも若干の遅れが生じたものの、その点についても現在解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、変異蛋白を用いた機能解析実験を進め、フィブロネクチン腎症の病態を解明する。 FN腎症の患者で同定した変異遺伝子蛋白を用いて、ELISA法にてへパリン結合能を測定し、免疫染色にてポドサイトとの接着能を測定する。 また、国内のFN腎症患者の臨床経過調査書に記載されているデータをもとに、遺伝子異常と表現型の関連を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験途中であり、学会報告の機会がなかったことより次年度使用額が生じた。 フィブロネクチン患者に対する遺伝子解析を行うにあたり、PCR用試薬や酵素、MLPAキットに加え、これらの試薬・検体を混合するためのチップ・ピペットおよびガラス器具、同定した変異蛋白を作成するための大腸菌、各種細胞、およびその培地、機能解析を行うための各種抗体を購入する予定である。また本研究による成果報告のための国内および外国学会に参加するための旅費が必要である。平成26年度中には本研究の途中成果を国内雑誌に、また27年度にはその総括を海外雑誌に投稿する予定をしているため、それぞれ投稿料、外国論文の校閲料が必要となる。
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Research Products
(2 results)