2012 Fiscal Year Research-status Report
たんぱく質不安定性を呈する新規TSH受容体変異V711fsの機能解析
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24791087
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鳴海 覚志 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40365317)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小児科学 / 遺伝学 / 内分泌学 / 分子生物学 / ホルモン / 受容体 |
Research Abstract |
本研究はたんぱく質不安定化により特徴付けられる新規TSHR変異V711fsのたんぱく質不安定化機構を分子側の要因、細胞側の要因 の両面から解析することを目的としている。3年計画の1年目にあたる平成24年度には、下記の知見を得た。 【分子側要因の解析】cytomegalovirusプロモーター下流にルシフェラーゼとそれに付加する形でV711fsの異常配列(17残基)を組み込んだレポーターコンストラクトを作成した。この17残基は7残基の疎水性残基を有するが、今回、非疎水性の残り10残基に対しアミノ酸置換実験を行った。通常置換実験で用いられるアラニン(中性)への置換に加え、フェニルアラニン(F、脂溶性)、セリン(S、中性)、アルギニン(R、塩基性)への置換も行った。その結果、AおよびSへの置換はいずれの残基においても有意なたんぱく質安定性の変化をもたらさなかったの対し、Fへと置換した場合、10残基中6残基においてルシフェラーゼ活性が本来の異常配列と比較して70%未満に低下した。特に10番目のアルギニンをFに置換した場合、ルシフェラーゼ活性は10%程度であり、著明なたんぱく質不安定性が惹起されることが明らかとなった。 【細胞側要因の解析】予備実験ではプロテアソーム阻害剤MG132がV711fs-TSHRの分解を阻害したことから、ユビキチン-プロテアソーム系がたんぱく質分解に関与したと考えられていた。同様の検討を、赤色蛍光たんぱく質に異常たんぱく質を組み込んだキメラコンストラクト、およびルシフェラーゼに異常たんぱく質を組み込んだキメラコンストラクトを用いて行ったところ、双方ともMG132によりたんぱく質発現量の回復が認められたが、その程度は1.5倍程度であり、TSHRにおける回復と比べて弱かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には当初計画した予定での研究を遂行することができた。ただし、TSH受容体で認められた、プロテアーゼ阻害剤MG132によるたんぱく質発現量低下のほぼ完全な回復は、赤色蛍光たんぱく質およびルシフェラーゼでは再現できなかった。このため、今後の実験計画は、TSH受容体における個別の現象と、他分子も含めた普遍的な現象とに分けてデザインしてゆく必要があると思われた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究を通じて、C末端側の疎水性残基の割合がたんぱく質安定性のひとつの要因である可能性が示唆された。平成25年度には、この可能性をさらに検討するため、以下の実験を計画する。 まず、ルシフェラーゼレポーターの下流にフェニルアラニンをタンデムにN個連結するコンストラクトを作製し(N=1,2,3,4...)、それぞれのルシフェラーゼ活性を評価する。これにより、たんぱく質不安定性と、C末端の疎水性との関連性、例えば閾値の存在など、を検証できる。次に、任意のアミノ酸をタンデムにN個(この個数は上記検討をもとに決定する)連結したコンストラクト(例えば、AAAA、FFFF、SSSSなど)を作製し、それぞれのルシフェラーゼ活性を評価する。これにより、たんぱく質不安定性を規定する全般的なルールを検証する。 また、上記のようなレポーターシステムを用いた実験と平行して、TSH受容体のフレームシフト変異による影響の検証も行ってゆく。具体的には、複数の変異体作製とたんぱく質安定性の比較(ウェスタンブロット)などを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究計画を遂行するため、研究費はプラスミド作成試薬、遺伝子クローニング試薬、変異導入試薬、シーケンシング試薬、細胞培養培地(血清を含む)、遺伝子導入試薬、ルシフェラーゼアッセイ試薬、一次抗体・二次抗体、化学発光・検出消耗品 などの購入費用に充てる。機器・設備は購入予定なし。 未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度年度の消耗品購入に充てる予定である。
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