2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791091
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
大熊 加奈子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (00399487)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 乳幼児 / テレビ / 長時間視聴 / 言語発達 / 脳活動 |
Research Abstract |
臨床現場から指摘された乳幼児のテレビ・ビデオ(以下、TV)長時間視聴と言語発達の遅れとの関連性を検証するため、本研究では月齢8ヶ月時および1歳6ヶ月時における家庭での視聴行動の縦断的把握を目的として、8ヶ月の健常児20名の親に、いつも見せているテレビ番組・ビデオソフト(まだ見せていない場合は児の近くで付いている番組・ビデオソフト)をいつもTVを見る部屋で20分間再生して児の様子を撮影していただいた。これまでに15名につき、対象児と同室者の行動をビデオ記録から秒単位で書き起こした。 模倣や親への質問などのTV反応行動も含めた総注視時間は19.5%~98.2%、平均62.5%で、7割の子どもが観察時間の50%以上を視聴していた。いつもTVを見せている11名では18.3%~98.2%、まだ特に見せていない児4名では10.6%~84.9%で、視聴習慣に関わらず、TVがついていると8ヶ月児の多くが視聴するものと思われる。1回の平均注視時間は6.3秒~36.9秒、最長注視時間は24秒~213秒で、8ヶ月時点で既にじっと見続ける子どもが少なくないことが示された。低年齢乳幼児向け番組を視聴した子どもやベビーチェアに腰掛けていて近くに玩具が無かった子どもが特に長く視聴しており、視聴対象や視聴環境によって長時間見続ける可能性が考えられる。 長時間視聴と言語発達の遅れとの関連の理由として、もともと言語・社会性の発達が遅れ易い子どもがTV長時間視聴し易い特性を有する率が高い可能性があるという説があるが、本研究結果はTVがついていると多くの子どもが生後8ヶ月でもTVを見続けることを示している。TV視聴中はコミュニケーションが質・量とも低下するので、本研究結果は長時間視聴と言語発達の遅れとの因果関係を支持する重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記のように、交付申請時と計画を先行研究の結果により少し変更したが、研究の目的はほぼ達成できた。 交付申請時には、長時間視聴習慣児10名と短時間視聴習慣児10名について1歳0ヶ月時と2歳0ヶ月時の視聴時の様子を撮影し発達との関係の縦断的解析を計画していた。しかし、その後、1歳6ヶ月児8名の2時間の視聴時の撮影記録の解析から、長時間視聴習慣の有無に関わらず、1歳6ヶ月でじっと見続ける子どもが少なくないこと、注視時間は視聴時の姿勢や手元の玩具の有無、視聴内容と関係していること、長時間視聴習慣があり且つ注視時間が長い子どもは発達が遅れ傾向にあることが示唆された。そこで、本研究では、観察年齢を早めて、自らの意思で移動し始める8ヶ月時に20分間と自由に移動できコミュニケーションをとる1歳6ヶ月時に2時間の視聴状況を撮影することに変更した。これまでに、20名に協力を依頼し、15名について秒単位の記録起こしを終了し、順調に進んでいる。 その結果、8ヶ月児の多くが見続けることが明らかとなり、やはり視聴時の移動の可否、手元の玩具の有無、視聴内容などと関連している可能性がみられ、視聴環境によって長時間見続けること、習慣化すると生活がTV視聴に偏り易く、発達に影響し易いことが確認されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査対象児について、1歳6ヶ月時の家庭でのTV視聴時の行動と発達との関係を、初年度(8ヶ月時)と同様に、ビデオ記録と質問紙により把握する。ビデオ記録は呈示ビデオと対象児が普段好んで視聴しているものとで計2時間を家庭で再生して撮影していただく。質問紙では初回調査以降1歳6ヶ月までのメディア歴と1歳6ヶ月時点の発達について質問する。初回調査時に1歳6ヶ月時の研究協力の承諾を得ているので、資料の収集は可能と考えられる。 呈示ビデオ(1歳6ヶ月児が好む代表的ビデオソフトに風景の静止画像を挟んで繋いだ12分間のビデオ)については成人の視聴時の脳活動を計測してあるので、1歳6ヶ月児の注視や反応行動の生起場面と成人の脳活動計測結果とを照合し、1歳6ヶ月児の視聴時の行動と脳活動との関連性を推察する。 1歳6ヶ月時のTV視聴時の行動・発達と8ヶ月時の視聴行動・発達および出生から1歳6ヶ月までのメディア歴との関係を解析し、1歳6ヶ月までのTV長時間視聴の発達への影響を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度と同様に家庭での撮影を依頼するため、保存用や作業用のDVD、謝礼、機器の貸し出しのための宅急便、解析のための撮影ビデオの記録起こしの謝金、視聴ビデオの内容解析の謝金、解析等のためのPC関連消耗品への使用を計画している。
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