2013 Fiscal Year Research-status Report
HCN2遺伝子異常により発症する熱性けいれんのiPS細胞を用いた病態解明
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24791096
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
中村 友紀 福岡大学, 医学部, 助手 (90535072)
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Keywords | イオンチャネル / 熱性けいれん / 電気生理 / パッチクランプ / 変異 / 小児科学 / 遺伝子 |
Research Abstract |
当初の計画では、平成25年度にHCN2変異体遺伝子を導入した培養細胞、ラット海馬細胞を使用し、パッチクランプ法を用いてHCN2 チャネル活性の評価を行い、変異型HCN2遺伝子と野生型の比較を行う予定であった。また「熱性けいれん」と同様の環境による実験を行う予定であった。さらにPC-12やCA1細胞を使用しマーカー遺伝子を用いて変異型HCN2チャネルの組織内分布も観察する予定であった。しかし、HCN2変異体遺伝子を導入したラット海馬細胞の状態が悪く、活性評価の実験期間が長引いている。 上記の実験と平行する形で、以前から進めていたHCN2変異遺伝子についての実験結果をまとめ平成25年度、論文発表した。 この実験では、患児と母親に発症が認められた家族性熱性けいれんにおいて、HCN2の遺伝子変異が発見されたことから、この変異が熱性けいれん発症に重要な役割を果たしていると考え活性評価を行った。HCN2変異蛋白を発現させた培養細胞を使って電気生理実験を行った結果、ホモ変異型ではコンダクタンスが上昇していた。また熱性けいれん時の体温変化の状態に似せるため細胞外液の温度を変化させ活性化電位の移動度を検証したところ、ホモ変異型では野生型と比べ著明に脱分極側に移動していた。またactivation kineticsについてはホモ変異型、ヘテロ変異型共に野生型と比べ有意に減少していた。 以上の結果からこの変異体は温度感受性が野生型と異なることが示され、今回発見されたHCN2変異は熱性けいれん発症の引き金になる可能性が示唆された。 これらの結果は平成25年度、PLOS ONEに掲載された(2013年, Volume 8, e80376)。今回の発表は熱性けいれんの病態解明の一助になることが大いに期待されるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、平成25年度中に(1)培養細胞、ラット海馬CA1細胞への遺伝子導入(2)発現チャネルの評価、(3)iPS 細胞の樹立・神経細胞分化、を行う予定であった。 しかし、変異遺伝子を導入した海馬細胞の状態が悪く、状態を良くするために条件検討を何度も行い多くの時間を費やした。 以上の理由から現在(2)の途中であるので「やや遅れている」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では平成25年度中に遺伝子導入と発現チャネルの評価、iPS 細胞の樹立を行う予定であったが、現時点では発現チャネルの評価の段階である。 このため引き続き発現チャネルの評価を行い、この実験の終了後iPS 細胞の樹立を引き続き行う。使用するiPS 細胞については、申請者が以前所属していたてんかん分子病態研究所において既にiPS 細胞の樹立~神経幹細胞球のストックまで完了しているのでこれを使用する。FGF-2などの神経成長因子・誘導因子を投与し神経分化・誘導を進める。 また、上記実験が予定通りに進展しない場合も考えられるので、並行して研究代表者の所属する研究室にて発見されたCaチャネル遺伝子変異の機能評価も併せて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画が当初よりやや遅れており、平成25年度に使用する予定であった予算をすべて使用することが出来なかったため。 遅れている上記実験に必要な試薬、消耗品を未購入なので、平成26年度使用する予定である。また、並行して行うCaチャネル遺伝子変異の機能評価実験に必要な試薬購入に充てる計画である。
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Research Products
(5 results)