2012 Fiscal Year Research-status Report
RYR1遺伝子変異により多様な病理像を示すミオパチーの新たな疾患概念確立の研究
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24791100
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
石山 昭彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 病院小児神経診療部, 医師 (90377284)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 先天性ミオパチー |
Research Abstract |
先天性ミオパチーは、生直後あるいは乳児期早期より全身の筋力・筋緊張低下、発達遅滞、呼吸・哺乳障害などを示す遺伝性筋疾患で、筋病理所見の特徴から病型分類がされる。複数の原因遺伝子が明らかになっているが、約半数の例で遺伝子の同定がなされていない。今回は既病型のいずれにも分類できない『多様な筋病理所見を示すミオパチー』を対象とし、RYR1遺伝子の変異解析を行った。 対象は当センター筋レポジトリーに登録されている症例から抽出し、RYR1ヘテロ接合型変異12例(診断年齢 4.9歳)、複合へテロ接合型変異7例(平均1.6歳)を同定した。ヘテロ接合型変異例では、筋力・筋緊張低下のほか、軽度発達遅滞(6例)、呼吸不全(3例)、経管栄養(3例)、側彎(3例)、多関節拘縮(2例)、眼球運動制限(1例)などを伴っており、類似性に乏しく不均一な疾患群を呈していた。病理学的には、軽度の筋線維大小不同およびtype 1線維萎縮、特異的な形態構造異常所見を疎らに認めた。一方、複合へテロ接合型変異例では、重度の筋力・筋緊張低下、呼吸障害のため新生児期からの呼吸管理が行われており(6例)、運動発達でも頚定が平均8ヵ月(正常3-4ヵ月)と粗大運動の遅れを認めた。しかし以後の筋力改善や発達獲得が著しく、3例で歩行獲得例があった。眼球運動制限、外眼筋麻痺を認める例も3例あった。病理学的には、ネマリン、内在核、コア構造等の特異的な所見が複数混在して認められた。複合へテロ接合型変異例では、臨床、病理像ともに類似性を有していた。遺伝子変異の特徴として、片方のアリルにナンセンス、欠失、スプライシング異常を有する例を多く認めた。 『多様な筋病理所見を示すミオパチー』例の中のRYR1複合ヘテロ接合型では、臨床的、病理学的、遺伝学的に類似性を示し、RYR1は考慮すべき候補遺伝子であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は『多様な筋病理所見を示すミオパチー』症例を、センター筋疾患研究資源レポジトリーから抽出し、これら症例のRYR1遺伝子解析を行う予定とた。この遺伝子解析結果に基づき、次年度、1)本病型の遺伝子変異-病理像-臨床像の全体像、2)遺伝子変異の種類や位置と臨床像の特徴について明らかにすることを目標としていた。 対象となる症例の抽出を行い、筋病理標本から、再度、顕微鏡下でa)2 峰性の筋線維大小不均等、b)内在/中心核の存在、c)コア・ロッド構造、d)ネマリン小体様沈着物、といった病理所見を確認し、対象症例としての妥当性を評価した。そのうえで、対象症例に対してRYR1遺伝子全106エクソンのシークエンスを実施し、ヘテロ接合型変異12例、複合へテロ接合型変異7例を同定しえた。これらの遺伝子変異の特徴、病理学的所見の特徴、臨床像を確認し、当該年度の成果としてまとめた。ほぼ目標通りの進行状況であったといえる。次年度は、これらRYR1変異群の結果に基づき、蛋白等の分子生物学的な解析や、臨床的な血液、画像検査等についても言及し、他の病型との関連・相違や、悪性高熱との関連、さらには既報告の典型像との相違についても考察を行う予定である。。 また本研究にてRYR1変異例が同定されなかった場合、対象症例である『多様な筋病理所見を示すミオパチー』から、次世代シークエンスを用い新たな候補遺伝子検索を予定していた。RYR1変異例が存在したため、その解析までには至っていないが、RYR1変異が認められなかった例では、追加候補遺伝子が考慮されればその解析を行い、また次世代シークエンスによる新たな候補遺伝子の検索をも検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の解析結果に基づき、臨床的な検査、画像検査等を含めた臨床情報との連結を行い、本病型を一つの疾患群として分類可能か否か検討する。臨床的にどのような特徴があるかをまとめるなかで、本疾患の同定にあたり特異性が高い臨床所見、検査所見の有無について検討する。これらの成果をまとめあげ、その結果を国内外の学会にて発表を行い、さらに論文投稿へとつなげ、広く情報発信を行う。 また種々の情報収集のなかで、RYR1遺伝子以外の原因遺伝子の可能性があれば、それらについての解析をも行い、本疾患との相違についての検討をすすめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
追加解析候補例に対して、RYR1遺伝子解析を行う予定であり、その解析にかかる試薬等に次年度の研究費用をあてる。また新たな候補遺伝子が挙げられた場合、その解析をも行う予定である。これらの試薬代等に研究費を使用する。 また国内外の学会発表にかかる旅費や学会参加費、論文投稿での諸費用などにも研究費を使用する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Unusual exocrine complication of pancreatitis in mitochondrial disease.2013
Author(s)
Ishiyama Akihiko, Komaki Hirofumi, Saito Takashi, Saito Yoshiaki, Nakagawa Eiji, Sugai Kenji, Itagaki Yusuke, Matsuzaki Koji, Nakura Michiaki, Nishino Ichizo, Goto Yu-ichi, Sasaki Masayuki
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Journal Title
Brain Dev.
Volume: 35
Pages: 654-659
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] A congenital myopathy with fiber type disproportion, core-like structure and internal nuclei is caused by recessive RYR1 mutationnuclei is caused by RYR1 mutation.2012
Author(s)
Ishiyama Akihiko, Hayashi Yukiko, Kajino Sachiko, Komaki Hirofumi, Saito Takashi, Saito Yoshiaki, Nakagawa Eiji, Sugai Kenji, Sasaki Masayuki, Noguchi Satoru, Nonaka Ikuya, Nishino Ichizo
Organizer
17th international world muscular society congress
Place of Presentation
Perth Convention Exhibition Centre, Perth, Western Autralia
Year and Date
20121009-20121013
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[Presentation] Congenital fiber type disproportion with myofibrillar disorganization and altered internal nuclei is caused by RYR1 mutation2012
Author(s)
Ishiyama Akihiko, Hayashi Yukiko, Kajino Sachiko, Komaki Hirofumi, Saito Takashi, Saito Yoshiaki, Nakagawa Eiji, Sugai Kenji, Sasaki Masayuki, Noguchi Satoru, Nonaka Ikuya, Nishino Ichizo
Organizer
The 11th annual scientific meeting of the Asian Oceanian mycology Center
Place of Presentation
Shirankaikan, Kyoto, Japan
Year and Date
20120606-20120608
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