2013 Fiscal Year Annual Research Report
顕微質量分析による新生児低酸素性脳症の代謝システムの制御解明と低体温療法の最適化
Project/Area Number |
24791121
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
武内 俊樹 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60383741)
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Keywords | 新生児 / 低体温療法 / 低酸素虚血 |
Research Abstract |
本研究では、当初の計画通り、新生児低酸素性虚血性脳症の疾患モデル動物を構築した。概要は、Rice-Vannucciモデルに準じた。生後7日のオスのSDラットの左総頸動脈を、全身麻酔下で外科的に結紮し、2-4時間の回復期をおいた後に、38度の恒温槽の上で8%酸素に暴露した。その後、空気に暴露する際に、30度の恒温槽に移し、低体温による治療を行った。文献上は、90分程度の8%酸素への暴露で十分な脳障害が形成されるとするものが多かったが、動物の系統の違いからか、本研究では、150分程度の低酸素暴露が必要であった。本研究のテーマである低体温の効果を調べるため、床を熱伝導性効率の高い金属で置き換えた特殊なプラスチック製のチャンバーを作成し使用した。これにより、低酸素暴露後の低体温療法により、神経学的症状が劇的に改善する疾患モデル動物実験系を安定して構築することができた。本実験系で得られた脳障害ラットから摘出した脳代謝物を抽出し、メタボローム解析を行った。約200種類の代謝物をCE/MSを用いて網羅的かつ定量的に測定し、クラスター解析プログラムを行いて系統的に分類した。その結果、低体温虚血障害の直後から低体温療法を行うことにより、一様に脳内代謝が抑えられるのではなく、予想に反して一部の脳内代謝物が低体温療法により増加することが明らかとなった。また、独創的な脳内イメージング技術である定量的質量イメージング法を駆使して、脳内のいくつかの代謝物の変化の解析を試みた。これにより、従来の染色法では捉えることのできなかった健常側大脳半球での代謝物の変化が示され、低体温療法が、脳内の代謝物を局在を持って変化させることが明らかとなった。今後、標的分子候補のノックアウトマウスの作出とその表現型の解析を視野に入れ、研究を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)