2012 Fiscal Year Research-status Report
早産児小脳障害と女性ホルモンの関与及び治療応用について
Project/Area Number |
24791125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
山岡 繁夫 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90434779)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 早産児 / 小脳障害 / 女性ホルモン |
Research Abstract |
当該年度、我々は「子宮内感染/炎症により新生児小脳における女性ホルモン産生及びそのレセプター発現は低下、それにより小脳の発達が遅延する」という仮説のもと、妊娠ラットへのLPS投与により子宮内炎症モデルを作成し、小脳内での女性ホルモン産生及びレセプター発現の変化、炎症性サイトカイン産生、小脳神経細胞傷害等を検証することを目標に本研究を開始した。 母体へのLPS投与により、新生児ラット小脳細胞のアポトーシスが増加することはpreliminary studyと同様、今回の実験でも再確認できた。また、LPS母体投与により既報どおり出産仔数及び産仔出生体重は有意に減少することも確認した。 小脳中progesterone receptorの蛋白及びmRNA発現はLPS投与群とcontrol群では有意差はみられなかった。progesterone産生の律速酵素である3β-HSD (hydroxysteroid dehydogenase)に関してはcontrol群に比してLPS群において低下する傾向がみられ(p=0.07)、脳組織におけるprogesterone産生はLPS群において低下している可能性が考えられた。また、小脳の髄鞘化への影響をみるため、成熟Oligodendrocyteにのみ発現するMBP (myelin basic protein)及びCNP(2’, 3’-cyclic nucleotide phosphodiesterase)mRNA発現を測定した。MBP、CNPともにcontrol群に比しLPS投与群において低下する傾向がみられ、子宮内炎症により新生児小脳の髄鞘化が傷害される可能性が示唆された。また、小脳内での炎症反応の変化の検証のため、炎症性サイトカインであるIL-1βを測定したが、既報と異なり両群間で有意差は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
妊娠ラットへのLPS母体投与により子宮内炎症モデルを作成したが、LPSに対する反応性の個体間格差が想定以上に大きく、また、既報よりも母体死亡率が高くなる傾向があり、モデルの再現性の確保が困難であった。 小脳ホモジネート抽出物よりestradiol及びprogesteroneをLC/MSを用いて測定する予定であったが、LC/MSの条件設定が困難であること、酢酸エチルを用いてホモジネートより抽出を行った場合、他項目のタンパク成分の測定が難しくなることより、女性ホルモン産生の律速酵素蛋白及びmRNAを定量することにより代用することとした。しかし、この場合は経胎盤的に移行するホルモンの影響を検証することができないため今後はELISA kit等での測定を行う必要があると考えられる。 Estrogen receptorの蛋白定量も行っているが、western blotにおいてバンドの検出信号が非常に弱く、既報とは異なる結果であるため小脳のホモジネートの方法やバッファーの配合成分等に改善の余地があると考えられる。 小脳傷害の指標として、髄鞘化の遅延や細胞死、及び炎症性サイトカインの産生に関して測定を行った。髄鞘化に関しては、有意差は得られなかったものの傾向に関しては既報どおりであり対象数を増やすことで改善できると考えられる。小脳内炎症性サイトカインに関しては生後7日時点で両群間に差はみられなかった。同様のモデルで生後7日に新生児脳内での増加が確認されたという報告は1報のみであったため、異なる時点での測定や他の炎症マーカーの測定も考慮すべきと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、子宮内炎症モデル産仔へのprogesterone及びestradiolの治療的投与の短期的効果を検証する予定。効果の検証方法としては、昨年度行った①小脳中女性ホルモン含量、レセプター発現、②小脳神経細胞数、apoptosis細胞数、小脳髄鞘化、③小脳中炎症性サイトカイン発現を評価する。本来、平成24年度中にこれら評価法を確立すべきであったが、【現在までの達成度】において述べたような問題により遅延を余儀なくされている。これらに関する改善方法も【現在までの達成度】において述べている。 投与方法としては、脳局所投与により近い脳脊髄液中への投与法は望ましいが、手技的に困難であることが予想されるため、場合によっては腹腔内投与等の簡便な方法による全身投与も考慮していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究費に関しては概ね計画通りに使用した。 女性ホルモン投与以外に検討する項目は基本的に本年度と同様のため、本年度同様、実験動物・試薬等の消耗品購入に充てる予定。未使用額についても上記の費用に充当する。
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